三宗
吉秀先生…食事をお持ちしました
吉秀
‼︎やめろ、開けるな!!
三宗
うっ
吉秀
この野郎…!!!!!お前は、一体何を考えているんだ!
吉秀
作品に取り組んでいる間は、邪魔をするなと言っただろう!
三宗
申し訳ありません…
三宗
ですが、、
吉秀
うるさい!出て行け!!
三宗
はい…
三宗
すみません…
慶時
先生どうだった?
三宗
だめだよ、相変わらずだ
慶時
正気かよ
慶時
もう三日間も飯食ってないぜ
慶時
便所の時しか部屋出ねぇし
三宗
ああ…
三宗
おまけに、変な鳥を飼ってた
慶時
はっ?どんな?
三宗
なんか、見たこともない…
三宗
大きさは猫くらいで
三宗
でっかい羽が突き出てて…
三宗
眼は琥珀色…
慶時
うぇ
慶時
聞くだけで寒気がするぜ
慶時
なあ三宗、もう先生の弟子やめないか
慶時
あの人は異常だ
三宗
そうだけど…
慶時
はあ…
慶時
確かにあの人の腕は極上だけどよ、
慶時
お前も、考えたほうがいいぜ
三宗
ああ…
吉秀
だめだ…描けん‼︎
三宗
なんか先生、悩んでるみたいだな
慶時
ああ、あの人、見たものしか描けないからな
慶時
どうせまた変な依頼でも引き受けたんだろ
三宗
ふぅん、
慶時
手伝うなんて言うなよ、
慶時
何されるか分っかんねえぞ
三宗
言わないよ!!
慶時
話に聞きゃあ、ロウソク灯して変な鳥に餌やって大事に育ててるそうじゃないか
慶時
うぅっ…ブルブルっ!!
慶時
ま、触らぬ吉秀にタタリなしだな
三宗
ああ…
慶時
おい三宗、聞いたか?
三宗
ん?
慶時
先生、大殿様からの依頼受けてんだっとよ
三宗
え、あの堀川の?
慶時
ああ、すげえよな
慶時
やっぱ腕は確かなんだよなあ…
三宗
すごいね
三宗
で、どんな?
慶時
それが分からねえんだ
慶時
ただ、育ててる模写物からしても、幸せな絵じゃないことは分かるよな
三宗
確かにね…
慶時
ま、様子みようぜ
慶時
あーあ、俺も弟子として注目されねーかなあー
慶時
大殿様っつたら大出世だぜ?
三宗
はあ。。
三宗
そんなこと言ってないで模写の練習するよ
慶時
ちぇっ、真面目なやつ
慶時
いいさーおれが出世したら見てろよ
三宗
はいはい
慶時
おい、三宗、
三宗
何?
慶時
吉秀先生知らねえか
三宗
いや、
三宗
きっと部屋だろう?
慶時
それがいないんだよ
三宗
えっ
三宗
じゃあ、お出掛けじゃないか?
三宗
先生いつも知らぬ間にいないから
慶時
けどよ…
三宗
なんだよ
慶時
いや、なんか
慶時
悪い予感…?がして
三宗
いやだなあ
慶時
わりぃ
慶時
ただ、なんとなく。
三宗
!!
慶時
おい三宗!
三宗
ああ
慶時
先生だきっと
三宗
帰ってきたんだな
慶時
こんな夜中に…
三宗
行ってみるか?
慶時
はあ?!
慶時
馬鹿じゃねえかお前
慶時
何あるか分かんねえんだぞ
三宗
いや、そうだけど…
三宗
なんか心配じゃない?
慶時
はあ…どこまでお人好しなんだよ
慶時
まあでも、気になるのは確かだな…
三宗
ちょっと覗くだけ、覗いてみない?
慶時
どこから?
三宗
階段から
慶時
バレねえかな…
慶時
…ま、仕方ねえ
慶時
他に策はない
三宗
行こう
三宗
…
慶時
…
三宗
…
慶時
…来たっ
吉秀
っ…ははっ…
吉秀
ははははははは
慶時
三宗…
三宗
…
慶時
見ろよあの目
慶時
だめだ…もうおれここにはいられねえ
三宗
ああ
慶時
とても普通じゃない
慶時
何があったか分からねえが、
慶時
おれはここを出る。
慶時
お前も来るだろ?
三宗
ああ…
三宗
留まる自信がないよ…
慶時
決まりだな。
慶時
隙を見計らってここを出るぞ。
三宗
ああ…
噂に聞くと、先生はあのあと亡くなったらしい。事情を知る人は、皆顔を青くするばかりで何も言わないそうだ。
ただ、あのとき慶時と一緒にあそこを逃げ出して本当に良かったと思っている。
ここまで読んでくださりありがとうございます…♡1000で別視点から書こうと思います。
ちなみにお気づきの方もいらっしゃると思いますが、この話は芥川龍之介「時獄変」を元ネタにしました。沢山の方に読んでもらいたい作品です。