翔
…あ?
翔
……なんだよ
こんな時間に。
翔
……起きねぇようにそっと出るか
翔
…はい。
雪
あ、覚えてる?
翔
…雪?
雪
うん!私今度さ
翔の学校に転入することになったの!
翔
へぇ。
雪
へへっ楽しみにしててね!
翔
…うん
雪
あー、久しぶりだなぁ
翔の事、今でも好きだよ?
翔
…ごめん。
それには応えられない
雪
…なんで?
翔
俺、彼女いるから
雪
…ねぇ、いい加減私の
気持ちにいつ気付いてくれるの?
翔
…。俺は。
翔
俺は中学の頃、お前の事は好きだった
翔
けど、今は違う
翔
俺は今の彼女がいる
翔
裏切れないから
雪
…いいよ。
雪
私が、翔の事振り向かせるから
翔
……。
雪
大丈夫!彼女さんには
迷惑かけないよ?
雪
あ、そうそう!
私、男バスのマネやるからさ
雪
応援してね?
翔
………。
翔
話はそれだけ?
雪
そうだよ?
雪
何よ、全然welcomeな
雰囲気じゃないじゃん。
翔
当たり前だろ。
いきなり好きって言われて
翔
…俺は今の彼女が大切なんだよ
雪
…ねぇ、翔?明日さ
一緒にお昼食べない?
翔
食べない。
翔
いい加減、俺には関わるな
雪
嫌。振り向かせるって決めたもん
翔
…はぁ。
雪
てことで!明日はよろしく!
翔
……なんだよ。この気持ち。
翔
…なんでこんな、ドキッてしてんだよ。
翔
俺には、由梨がいるじゃねぇか。
翔
…部屋、戻るか
翔
…寝てる…よな
由梨
…かけ、る?
翔
…ん?
由梨
どうしたの?
翔
…ちょっとトイレに行ってた
由梨
…そっか…。
由梨
…おやすみ
翔
…おやすみ。
翔
…
翔
(なんでだよ)
翔
(俺の気持ちはこんなに軽いものだったのか?)
翔
(…由梨…俺…裏切りたくないよ。)
由梨
んー。(ギュッ
翔
っ!
翔
(…くそ。)
翔
(……今までこんな事にも心臓バクバク言ってたのに)
翔
(今じゃ何も…言えやしない)
翔
(…なぁ。)
翔
(俺、どうなってんだよ。)
由梨
…ふぁ。
翔
…おはよ
由梨
おはよう
翔
…っ。
由梨
どうしたの?
翔
何でもない
翔
…なぁ。
由梨
…ん?
翔
…いや、何でもない
由梨
そっか。
由梨
朝ごはん、食べる?
翔
おう。
…由梨が朝飯作ってるってのに
…俺は何も思えなくなった
…なんで、あの電話一本だけで
俺の気持ちはこうも簡単に
崩れるのか。
由梨
出来たよ
翔
…ありがと
由梨
…ねぇ。ホントに、どうしたの?
翔
…なぁ
翔
今日だけさ
翔
昼飯、別々でもいい?
由梨
…いいよ
翔
…ありがとな
翔
(もう一度確かめたい)
翔
(この気持ちがアイツなのか)
雪
じゃ、行こっか!
翔
…おう
雪
えへへ、今日のお弁当
気合い入れて作ってきたの!
雪
今日のオススメは
野菜炒めだよ?
雪
良かったら食べて?
翔
…。
雪
ねぇ。
翔
……。
翔
(…なんで。こんなに欲しがってんだ)
翔
(いらないって言えよ)
翔
(言ってくれよ。)
翔
…おう。
翔
ありがと
雪
えへへっ!
翔
…(パクッ
翔
…。
翔
(おい、なんで食ってんだよ)
翔
(俺の身体、言うこと聞けって。)
翔
美味いよ
雪
ホント!?良かったぁ!
雪
不味いって言われたら
どうしようかと思った
翔
……うん
雪
ねぇ、さっきから相槌しか
打ってないよ?
雪
大丈夫?何かあった?
翔
…何でもない
雪
よぉーし!
雪
こうなったら私のチャームポイントで癒してあげる!
翔
なっ!
翔
おいっ!(ボフッ
雪
ほれほれぇ~
気持ちいいか?
翔
…。
翔
(……あぁ。やっぱコイツなのか)
翔
(今までの気持ちはなんだったんだ)
翔
(俺、情けねぇな。)
翔
(好きな奴がコロコロ変わるのか)
翔
…柔らかいよ
雪
そうだろうそうだろう!
雪
私唯一の自慢出来る
所だからな!
翔
…。
雪
ねぇ、早く私に惚れてね?
雪
私、中学の頃からずっと
大好きだったんだから!
翔
……。まだ
翔
考えさして。
雪
いいよ!
翔
…そろそろ、昼終わるな
雪
そうだね、そろそろ戻ろっか?
由梨
…え。
由梨
翔?
由梨
……そっか。
由梨
私はもう、いいんだね。
由梨
…ありがとう。
由梨
今まで、ありがとう。
由梨
…泣きたくないよ。
それから、俺はいつの日か
雪の事を考えるようになった
翔
ふぅ。やっと部活終わった。
雪
お疲れ様。
翔
…ありがと
由梨
…翔、ちょっといい?
翔
…ん?
由梨
二人で少し話したいな
翔
いいよ
雪
じゃ、待ってるね!
翔
……。
由梨
あのさ、私
どうしても言わなきゃいけないことがあるの。
翔
なに?
由梨
…別れよっか。
翔
…は?
由梨
…私なんかより、雪さんの方が
よっぽどいいよ。
翔
…。
由梨
私もさ、気づいたんだ
由梨
雪さんが翔に電話してて、
それから
色々悩んでた事。
由梨
けど、翔はきっと
由梨
今は雪さんのモノなんでしょ?
翔
……っ。
由梨
そんな顔しないで?
由梨
私だって楽しかったよ。
今まで。
由梨
…ありがとう。
由梨
雪さんと、お幸せにね。
翔
由梨…
由梨
もう、原でいいよ
翔
っ!
翔
違う。俺は…
由梨
言い訳なんか…
由梨
聞きたくない。
由梨
私は大丈夫だからっ。
由梨
…じゃあね。
翔
…由梨…
翔
由梨っ。
翔
…そんな。
翔
俺は…。
翔
…くそっ!
翔
…由梨。
翔
……。
雪
…どうしたの?
翔
…彼女と、別れた
雪
…そっか。
雪
なら、今じゃなくていいから
雪
私と付き合って?
翔
……。
翔
雪。
雪
…ん?
翔
……お前から電話がかかってきて
翔
……電話が終わったあと、なんか
虚しかった
翔
…その後一緒に居た彼女には…
何も…感じられなかった…。
雪
じゃあ、もう好きじゃなかったんだよ
翔
っ!?
翔
違う!俺は…
雪
もう、私の事が好きなんでしょ?
翔
…。
雪
付き合お?
雪
ね?
雪
その方が、翔の身も楽だと思うよ
翔
……。
雪
ねぇ。
雪
もう、自分の気持ちに気付いて。
翔
……俺は…。
翔
……くっ。
翔
……雪が…好き…
雪
へへっ。ありがとう
雪
これからもよろしくね!
翔
……っ。
俊哉
…お前、ふざけんなよ。
翔
…え?
俊哉
あんただよ。荒谷翔。
雪
ど、どうしたの!?
俊哉
お前は黙って見てろ。
俊哉
アンタ、まさかこんなにも簡単に
他の女に落ちるとはな。
俊哉
あんだけ由梨は渡さねぇ
とか言っといたクセに
俊哉
…俺、見てたんだ
俊哉
由梨の行動とか、顔色とか
悪くて
俊哉
アンタと話し終わった時
俊哉
すげぇ泣いてた
俊哉
まぁアンタがその女に変えるって
言うなら
俊哉
由梨は俺が貰う。
俊哉
いや、俺はアンタみたいに
簡単に他の女に落ちたりしない
翔
……。
俊哉
なんとか言えよっ!
翔
……由梨。
俊哉
軽々しく名前で呼ぶなよ
俊哉
今はその、雪って人が本命なんだろ?
俊哉
なら、もう軽々しく
由梨を名前で呼ぶな。
雪
ね、ねぇ。なに、この子。
翔
…俺の後輩。
俊哉
テメェは黙ってろって言ったろ?
雪
ひっ!
翔
…もう、いい。
俊哉
…は?
翔
俺は…もう。
翔
由梨に別れを告げられて
翔
もう、終わってるから
翔
お前の好きにしろよ
俊哉
…そーかよ。
俊哉
ならしょうがねぇな
俊哉
俺の好き勝手にさせてもらう
俊哉
今までアンタのお陰で愛せなかった分も
俊哉
しっかり感じさせてやる
翔
……。
翔
好きに、しろよ。
俊哉
じゃ、そういう事で。
俊哉
さようなら!雪先輩、翔さん!
雪
…っ。翔…あの子…怖い。
翔
……っ。
雪
翔…?どうして、泣いてるの?
翔
……悪ぃ。
翔
今日は一人で帰ってくんね?
翔
……一人にさせて
雪
……わ、分かった。
雪
…じゃあね。
翔
……。
翔
……なんだよ。この気持ち。
翔
俺は一体なんなんだよ。
翔
由梨。
翔
今まであんなにベッタリ
くっ付いてたのに
翔
こんな簡単に
剥がれんのかよ
翔
……。
翔
………………。
翔
俺は、とんだ裏切りモンだな
翔
大嘘つきだ。
翔
……許される事じゃねぇかもしれない
翔
……ごめん。
翔
……本当にごめんな
翔
…由梨。