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雉岡
おーい
犬山
雉岡
もしもーし起きて－
犬山
ん？なに…？
雉岡
大丈夫？目、覚めた？
犬山
う、ここ、は？
雉岡
わからない
雉岡
私も突然ここに連れてこられてね
犬山
…拉致ってことか？
雉岡
そうなるね
雉岡
みんな、不安だよね
桃井
なんで私たち、連れてこられたのかな…
猿飼
僕に聞かれても…
犬山
え、一体なんなんだ、これ
雉岡
分からない
雉岡
でも下手に動かない方がいい
雉岡
こんなこと
雉岡
普通の人がすることじゃない
犬山
そう、だな
犬山
俺たち、どうなるんだ
雉岡
犯人の目的なんかわからないけど
雉岡
少なくともしばらくは殺されないよ
雉岡
殺す気なら君も私ももう死んでる
犬山
…とりあえず今は様子見、か
雉岡
そういうことだね
その時、部屋の扉が重い音を立てて開いた
鬼男
雉岡
だれか来た…
犬山
え？鬼の、お面？
桃井
もしかして節分のイベントか何か！？
猿飼
それだけのために拉致なんてしませんよ
犬山
なめた格好しやがって
犬山
あいつが俺たちを拉致してきた犯人か？
鬼男
皆さん、こんにちは
鬼男
突然ですが…お聞きしたいことがあります
鬼男
「桃太郎」って、知ってますか？
突然の質問に沈黙が部屋を包んだ
犬山
も、桃太郎？
犬山
なにわけわかんないこと言ってんだよ！
犬山
そんなことよりお前何者なんだ！
鬼男
…聞いているのは私です
鬼男
それともこれで退場しますか？
雉岡
な、銃！？
鬼男
質問に答えてくれれば今は殺しません
鬼男
もう一度聞きます
鬼男
「桃太郎」って知っていますか？
犬山
…！くそ！
犬山
…知ってるよ、昔話だろ
犬山に続くように皆口々に桃太郎の話をする
鬼男
桃太郎とその従者3匹で
鬼男
強大な鬼ヶ島を制圧する話です
犬山
（制圧って、なんか桃太郎側が悪みたいな言い方だな）
雉岡
その桃太郎がどうかしたのですか？
鬼男
私、ずっと思ってたんですよ
鬼男
なんで鬼が滅ぼされなきゃいけないのかって
犬山
そ、それは悪事を働いてたからで…
鬼男
だからっていきなり滅ぼしますか！？
鬼男
人間だって悪事を働いたらまずは裁判でしょう！
鬼男
何で鬼だけいきなり断罪されるんですか！
雉岡
うわっ、落ち着いて！
雉岡
みんな伏せて！
いきなり激怒した男は銃を数発撃ちながら地団駄を踏む
しばらく喚いた鬼男はようやく落ち着きを取り戻す
鬼男
はぁ、はぁ
鬼男
失礼しました
鬼男
とにかく私は納得がいかないのです
鬼男
ですのでもう一度、桃太郎の話をやることにしました
鬼男
私の故郷、鬼ヶ島で
犬山
…意味がわからない
鬼男の話が終わると、その場にいた者は皆絶句していた
犬山
そ、そんなのお前だけでやればいいだろ
犬山
俺達を巻き込むな！
鬼男
そうはいきません
鬼男
桃太郎には必要でしょう
鬼男
「犬」「猿」「雉」「桃太郎」が
鬼男
なのであなた方が必要なのです
鬼男
犬山さん、猿飼さん、雉岡さん、そして桃井さん
そこで犬山たちはハッと気づく
猿飼
も、もしかして
桃井
私たちが拉致されたのって
雉岡
桃太郎に出てくるキャラが名前に入ってるから…？
犬山
おいおい待てよ
犬山
名前に犬が入ってるだけでこんな目にあってんのか！？
犬山
ふざけるのもいいかげんに──
鬼男
ふざけてるのはあなたです！
鬼男
たまたま犬に生まれたからって！
鬼男
桃太郎の従者になって！
鬼男
私たち鬼をいいように噛み殺して…！
鬼男
許せない許せない許せない！
犬山
いやそれ昔ばなしの話だろ！
犬山
俺は何にもしてないって！
しかし犬山の言葉は届かなかった
鬼男
許せない許せない犬猿雉桃太郎許せない…
しばらく鬼男は頭を抱えながら独り言を繰り返す
鬼男
鬼男
失礼しました。少々取り乱してしまい
鬼男
とにもかくにもこれから始まります
鬼男
現代版、桃太郎が
鬼男
みなさんには4人で協力し、鬼ヶ島に行ってもらいます
鬼男
そこで鬼を退治し、財宝を持ち帰ってください
犬山
鬼が退治されるのが納得いかないんだろ？
犬山
なのに鬼退治をさせるのか？
鬼男
言ったでしょう、私はもう一度桃太郎をやり直したいんです
鬼男
リアルな桃太郎をね
犬山
（狂ってる奴の理屈はよく分からないな…）
犬山
…財宝って、金か？
鬼男
いいえ、解毒剤です
犬山
は？それのどこが宝なんだよ
鬼男
みなさんが寝ている間、毒を注入しました
鬼男
特に苦しんだり痛みとかはありませんが…
鬼男
1週間以内に解毒剤を打たないと死ぬ毒です
犬山
…は？
鬼男
とにかくこれでわかったでしょう
鬼男
みなさんは鬼退治に向かうしかないのです
鬼男
昔話の桃太郎のように
犬山
わけがわからねぇよ
犬山
何だよ鬼退治って
犬山
鬼って実在すんの？
雉岡
まさか、いるわけないよ
犬山
それを倒して来いって…
犬山
不可能じゃねえか！
猿飼
もし倒せなかったら毒で死ぬのかな…
桃井
そ、そんなぁ
桃井
全部悪ふざけでしょこれ
雉岡
鬼男さんの物言い…
雉岡
あれは本気ですよ
犬山
狂ってるだろ…
犬山
…まぁ、確かに本気なんだろうな
犬山
こうして島の地図までくれたわけだし
犬山は島に上陸する前に渡されたバッグをあさる
猿飼
地図と水、それとナイフ…
桃井
わ、私たち、なにと戦えばいいのかな？
雉岡
鬼と呼ばれるなにか、ですよね
犬山
それもそのうちわかる
犬山
それよりもう村に着くぞ
一行の目の前には言葉通り小さな村があった
桃井
え、裸！？
犬山
大人も子供も、みんな服を着ていない
猿飼
原住民ってやつかな？
犬山
鬼ヶ島にも普通に人が住んでるんだな
雉岡
あ、もしかして彼らが鬼の居場所を知ってるとか？
雉岡
ちょっと聞いてきますね
雉岡
すみません、少しお話をよろしいですか？
そう言って村の人間に近付いていく雉岡
村人
犬山
（なんだ、あいつら）
犬山
（雉岡のことじっと見つめるだけで）
犬山
（何にも答えない…）
雉岡を見つめていた村人は鉢巻を巻き、そこに2本の骨を指す
犬山
雉岡、ちょっと待て──
犬山が声を発するのと同時に原住民が槍を握る
桃井
危ない！？
雉岡
ぎゃっ！
雉岡
あ、足がぁ…！
雉岡の足には槍が突き刺さっていた
犬山
は！？
桃井
雉岡さん！
猿飼
待って！あの人たち、こっち見てるよ！
村人
桃井
に、逃げなきゃ…
犬山
待て、雉岡を助けなきゃ！
雉岡
ぐっ、いや逃げてくれ！
雉岡
こっちに来る間に囲まれる
雉岡
…奥からもっと来てるからね
その言葉通り、村の家中から原住民が出てくる
犬山
…くそ！
雉岡
私なら大丈夫
雉岡
まだギリギリ走るくらいはできる
犬山
雉岡、なんとか生き延びろ！
雉岡
落ち着いたら何か合図を出す
雉岡
…そしたら合流しよう
犬山
わかった！
桃井
は、はやく逃げようよ！
犬山
わかってる！
走りながら犬山はつぶやく
犬山
…そういうことかよ
犬山
こいつらが鬼ってことかよ…！
犬山
こんなたくさんの鬼と…
犬山
俺たちだけで戦えってのかよ…！
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