TellerNovel

テラーノベル

アプリでサクサク楽しめる

タイトル、作家名、タグで検索

テラーノベル(Teller Novel)

少し外を散歩しようと言われ、 俺、瀬様、彼女を支える真瀬さんの 3人で、家の外の道に出る

では、先程の話の続きとしましょうか

どこかへ向かって歩き出しながら、 話をし始める彼女

まず、闇属性の魔法使いが“コントロール”の能力を持っていることは、ご存知のことと思います

百瀬

あー、はい、実際に何回か使ったこともあります

光属性の“テレポート”と、 闇属性の“コントロール”

これらは魔法とは別の“能力”だって、 前にノアさんとみんなから聞いた

はい。このコントロールという能力は、基本的には人の感情を操作するものです。

しかし、一部の強力な闇属性使いの血筋は、その能力を応用した使い方ができるんです

百瀬

応用……?

固有武器を持つことができない闇属性の……言わば、“固有能力”とでも言いましょうか。

この鳴海家……遥か昔の魔法界で名乗っていた元の名は、“サージェンツ家”と言います。

サージェンツ出身の使いは、この能力を応用し、“予知”という固有能力へと転換しました

予知、能力……?

百瀬

え、それってまさか……!

その通りです。例の予言書は、この能力を用いて執筆されました

そうか……だから鳴海は、予言書なんて ものを作ることができたんだ

恐らくあの本を書いたのは、追放前、魔法界に居た最後の世代の1人、“ライ・サージェンツ”。

現世の時間で言うと、もう千年近くは前のことですね

百瀬

千っ……!?

あまりの数字の大きさに驚いて、 つい声が出てしまう

そりゃ確かに、追放されたのは 相当昔のことだけど……まさかあの本、 そんな昔からあったのか……!

百瀬

(……って、ん? その時の人の名前も“らい”……?)

“ライ”は、史上最も強力な予知能力を持っていました。

約千年も先の未来まで、はっきりと見据えることができてしまう力です。

それで何を視たのか、この島からも出たことのない私には、到底分かりかねますが……。

しかし彼の思惑通り、百瀬さんとそのお仲間方が、予言されていた“何か良くない未来”を阻止した。

さらに、予言書に辿り着くまでに必要だった魔法具の鍵を、当事者の“百瀬さん”が受け継ぎ、持っていました

そうだ、俺のこの鍵は、じいちゃんから 父さんに、そして俺に回ってきたもの

……その鍵もきっと、偶然貴方の元へ辿り着いたわけではありませんよ

百瀬

え……?

偶然じゃないって、どういう……

そもそも、そんな大事な代物が、この本部から離れていたことが不可解です。

しかしそれは、未来の出来事を止めることになる百瀬さんが、この本部から離れた人として生まれるから。

それに、鍵の受け継がれ方も、少々違和感がありませんでしたか?

百瀬

……あ、確かに……

じいちゃんから鍵を受け継いだのは、 あの家を継いだ伯父さんではなく、 なぜかその次男の父さんだった

それに、本部から離れたあの家にいる じいちゃんの元に鍵があったってのも、 少しおかしく感じる

百瀬

……もしかして、これもその“ライ・サージェンツ”って人が……?

俺のところに鍵が辿り着くように、 その人が経路を予め操作してた……?

彼のことでしょう、貴方の存在が視えていても、何もおかしくはありません。

そして彼は、当分先の未来だけでなく、この家の未来も見据え、様々な手を施しました。

そんな彼への敬意を表して、この家の総代は代々彼の名を襲名し、そうでない者も皆、当て字の“瀬”を冠する名を持ちます

百瀬

あ……

やっぱり、ライと瀬様が同じ音の名前 なのは、気のせいじゃなかったらしい

でもそれだけじゃなくて、 俺の百瀬も、姉さんの七瀬も、 じいちゃんの和瀬も……

さらに父さんと伯父さんの名前も、 今日出会った真瀬さんだって、みんな 例外なく名前に同じ字が入ってる

百瀬

(みんな似た名前だなと思ってたけど、それもちゃんと理由があったのか……)

ちなみに、名字に“瀬”とつく家は、鳴海の遠い分家の一つであることもあるんですよ

百瀬

へぇ……

……あれ? そういやそらるの兄貴の 本名、名字が一ノ瀬じゃなかった?

百瀬

え゙っ!?

あ……あの人、まさか遠い親戚!?

そうでない全く無関係の家ということも、十分ありますよ。

しかし……ふふっ、まるでお知り合いにいて驚いているようなお顔ですね

百瀬

あ、あはは〜……

百瀬

(いや……その情報は流石に誰でもビビるって……)

真瀬

お嬢……あぁ、失礼しました。総代様、あまりお客人を揶揄ってはいけませんよ

ふふ、今までみたいにお嬢と呼んでくださいな。それより、話の続きといきましょうか

百瀬

あ、はい

話すべき事が多くて、随分と話が逸れてしまいましたが、変わらず私の目隠しについての話です。

先程も言った通り、鳴海家は能力を応用し、予知能力として転換させました。

そしてその“視る”という影響で、人の心を読むようなことも、多少可能になったのです

百瀬

読む……ような?

はい。厳密には、人とその内面を予知し、相手の心の内を知るというものになります。

将棋やオセロなどでは、相手の次の手を予測するでしょう。それに正確性が伴ったものだと思ってください

直接人の心を読むんじゃなくて、人の 内面を予知した結果、自ずとその人が 何を思うのか分かる……そんな感じか

この力は、現在の鳴海家の人間も使っています。

……しかし、そのほとんどの人が魔力を覚醒させていません

百瀬

え……?

かく言う私も真瀬も、この予知能力のみを使うことができます。

これは、本部やその近しい人間に対する教育が理由ですね

真瀬

私達は物心ついた頃から、この能力を覚醒させ、さらに力を強める訓練を受けます。

真瀬

その時に魔力も覚醒させる人が現れますが、それは極めて少ない上に、大体が予知能力を持たない者です

百瀬

使えるのは基本のコントロールだけ……ってことすか?

真瀬

そうです。長い時が経ち、闇属性使いとしての血が薄れた我々が予知能力を開花させるには、それなりの労力が必要となりました

闇属性使いの子孫である私達に、潜在的に眠っている魔力と能力。

そのどちらもを持つことは可能ですが、能力を開花させるならば、話は変わります。

今の私達には、魔力を能力へ転換させなければ、予知能力という境地へ辿り着くことができません。

もしくは、魔法自体が強力な使いは、自ずと予知能力を開花させるという話も聞きますけどね

2人とも、普通にやってるように 見えたけど……実は、相当な努力の上で 成り立ってたのか

真瀬

しかし鳴海の人間の中でも、瀬様は少々特殊なお方でして

百瀬

特殊?

はい。……私は、人に対してだけ、どこまでも視えてしまうんです。

その人の1秒後の未来から、最期の瞬間まで……鮮明に

百瀬

え……

未来を予知することができない分、そのような点に特化してしまったようです。

視え過ぎると、脳の情報処理の許容量を超えてしまい……それで倒れてしまうことが、今までにも何度かありました。

そんなわけで、少しでも視界を遮る為に、こうして目隠しを当てています。

完全に視えなくなることはありませんが、適度な情報量になりますから。

それに、百瀬さんのような魔力を持つ方であれば、何となくぼんやりと姿形を認識することも可能です

あ……だから最初に会った時、俺の方を しっかり見てるように視えたんだ

百瀬

(予知能力……)

俺にも、何か未来を視る力が あったりするんだろうか

……と、話している内に着きましたね

百瀬

えっ?

ハッと気づいて、周囲の景色を見る

すると目の前には、 とある小さな神社が建っていた

月讀(つきよみ)神社。ライ・サージェンツの功績の一つです。

話の続きは、こちらの境内でしましょうか

魔法使いは何を唱う? -紫苑の叛逆者-

作品ページ作品ページ
次の話を読む

この作品はいかがでしたか?

51

loading
チャット小説はテラーノベルアプリをインストール
テラーノベルのスクリーンショット
テラーノベル

電車の中でも寝る前のベッドの中でもサクサク快適に。
もっと読みたい!がどんどんみつかる。
「読んで」「書いて」毎日が楽しくなる小説アプリをダウンロードしよう。

Apple StoreGoogle Play Store
;