カナタ
サヤ
カナタ
モグモグ
サヤ
サヤ
カナタ
サヤ
食べてんのよ
カナタ
食べるのに集中しすぎちゃった
サヤ
サヤ
カナタ
なさい…
サヤ
学校でのケンシくんって
どんな感じ?
カナタ
サヤさんがさっき言った通りで…
サヤ
想像がつくレベルじゃない
カナタ
カナタ
クガサンと真逆というか
サヤ
でも何かそれっぽいっちゃ〜
それっぽいかぁ
カナタ
人の意見まとめるのも
上手いし
カナタ
みんなよりやるし
サヤ
カナタ
サヤ
カナタ
上手いかも
付け込まれたおれがいうから 間違いない
サヤ
何か意外〜
カナタ
わからないくらい聡明だよね
たぶん
サヤ
サヤ
ケンシくんは汎用型
そんな感じかな
カナタ
サヤ
カナタ
会長のこと追いかけないの?
サヤ
追いかけるわけないじゃん
カナタ
サヤ
カナタ
何が???
サヤ
気にしてるの
サヤ
カナタ
カナタ
何を言って………
サヤ
サヤさんの勘の鋭さが エグい
カナタ
ないっすよ!
サヤ
カナタ
冗談を
認めるわけには いかなーーーーーい!
サヤ
サヤ
そういうことにしておいて
あげるわよ
カナタ
カナタ
サヤさんて
好きな人いないの?
サヤ
カナタ
まずいこと 聞いたのかな…
サヤ
ないような…
カナタ
中途半端な…
サヤ
いいじゃない
おればっかり 聞かれるのは フェアじゃないだろ……
カナタ
はい…
そういうことにしておきます
サヤさんとの夕食は 本当に他愛もない話を 延々として
でも時間が過ぎるのは 早く感じた
カナタ
片付けてくるね
サヤ
カナタ
持ってくから
カナタ
乗せて
サヤ
はい
サヤ
なぜかお礼を言うのが 恥ずかしそうだった
そしておれは返却場所に 戻しに行った
もう少しで消灯時間
今日がおわる
何だかんだで 入院してるのに
バタバタしてた気がする
カナタ
いつもなら眠くないけど
眠くなってきちゃった
明日は退院
…
サヤさんが また一人の生活になるのかと 思うと
少し気持ちが ザラザラした
カナタ
寝てしまおう
この微妙な感情を 抑えるように おれは眠りについた
もう 朝がきた
カナタ
早く目が覚めてしまった
時間はまだ朝の5時くらい
でも午前中に退院だから ある程度のものは まとめておかないと…
カナタ
そんなに荷物ないしな…
この白い部屋と 強がってる女の子と
今日でお別れ
カナタ
目が覚めてしまって
眠くないし
カナタ
おれはなんとなく 病室から談話室に向かった
今日は天気がいい 晴れ渡る空をみて 頭の中は 空っぽになった
カナタ
なんとも おれらしくない
小中学校で 卒業の日
また友達とは会えるのに 何かひどく寂しくなる感覚に 似てた
そうこうしているうちに 時間はどんどん過ぎていき
サヤさんとあまり話ができないまま 母上の迎えが来る時間が 迫っていた
カナタ
あの…
サヤ
カナタ
俺の退院に
なっちゃう
サヤ
おめでとう
なんだか 素直な感じの言葉で ビックリした
カナタ
カナタ
サヤ
カナタ
なっ…なんでしょう?
サヤ
だめだからね
カナタ
彼女はヒカルのことを言っていた
でも何でそんなこと 言うんだろう?
サヤ
繊細で不器用な分
サヤ
カナタ
なんだか見透かされすぎて…
サヤ
カナタ
サヤ
カナタ
サヤ
いい別れ方しなよ
カナタ
今そんなこと言われても 何も考えられない
別れることなんて
サヤ
カナタ
サヤ
彼は凄く傷つく
サヤ
目の奥が…
カナタ
サヤ
ううん
何でもないわ
カナタ
寸止めとか!
サヤ
そりゃ気になるところで 止められたらよ!
サヤ
カナタ
サヤ
サヤ
カナタ
母上
邪魔しちゃいけないと思って
母上…今の会話… どこから聞いてたんすか…
サヤ
カナタ
俺
お見舞いくるからね
サヤ
いいわよ
カナタ
俺が来たくなったら
来るんだから!
サヤ
軽くあしらわれてるけど サヤサンの顔は笑っていた
前の影がある感じと 違った
母上
行きましょうかね
カナタ
カナタ
握手しよ
サヤ
おれは彼女の手を半ば無理やり 握った
サヤ
セクハラ!
カナタ
またね!
また来るね!
サヤ
力の弱い彼女の握手に おれは強めに握って 気持ちを込めた
カナタ
サヤ
こうしておれは 病室を後に 退院した
サヤ
不器用な奴
サヤ
サヤ
大人たちと違って
看護師
看護師
退院しちゃったね
サヤ
看護師
広坂くんのおかげで
戻って
看護師
サヤ
何言ってんの?
看護師
血圧と体温測るよ
サヤ
幸せになればいいなって
サヤ
看護師
僕は幸せになって欲しいよ?
サヤ
こうやってあなたの優しさに 触れていられれば それでいい
看護師
サヤ
看護師
笑えば可愛いのになぁ
年の離れた人と上手く行く そんな甘っちょろい夢なんて 抱かない
小さな幸せを 自分の中だけに しまっておく
それで じゅうぶん
サヤ
早く終わらせて
次に行けばいいわよ
看護師
サヤ
カナタ
我が家〜〜〜
母上
カナタ
カナタ
ただいまですぞ〜
カナタ
母上
学校行く準備
しときなさいね〜
カナタ
懐かしい おれのうち! 部屋!
母上
カナタ
何でもいい!
母上
激辛料理にでも
しょうかなぁ?
カナタ
鬼畜ですね
母上
おれが帰ったせいか 母上もこの上なく 機嫌がいい
母上
午後帰ってくる
らしいから
母上
食べましょ
カナタ
父上が?
母上
もうね
無口なくせに
母上
こんなんで帰ってくるなんて
母上
カナタ
母上
おれはきっと 父上の人生に 革命を起こした!
母上
準備準備〜
母上おれの部屋から出ていった
カナタ
おれの学校生活が再開する
次の日
朝
母上
母上
いつもの 久しぶりの この声
カナタ
母上
いい癖がついたのかしら
カナタ
母上
カナタ
朝食をとり 余裕の時間で 家を出た
なんか新しい気持ちだ
学校が見えてきた
でも何か みんながおれに珍しそうな 視線を送ってくる
あー副委員長だっけ? 刺されたってやつ
そうそう! 退院したんだね〜
カナタ
気まずくね?
ヒカル
カナタ
おはよう!
ヒカル
会えて嬉しい!
ヒカル
寂しかったよ
直球過ぎて クソ照れる
カナタ
心配かけちゃって
カナタ
来てくれてありがとう
ヒカル
ヒカルの顔が太陽より 眩しい
でもヒカルが明るくおれに接してくれて おれを見てくる視線は いつもの日常と 変わらないくらいになった
ヒカル ありがとう
ヒカル
カナタ
ヒカル
いーーーーーっぱい残ってるから
カナタ
ヒカル
大変なんだからね
カナタ
ヒカル
カナタ
いつもより
強気…
ヒカル
ちょっとやってみたかった
かわいいかよ!
カナタ
言ってくれれば
やるし頑張るし
ヒカル
お願いね!
ケンシ
広坂くん
おはよう
カナタ
カナタ
ケンシ
カナタ
入院中の会長の態度が おれの頭を駆け巡り まくった
ケンシ
大変だったから
ケンシ
するように頼むぞ
カナタ
何だか 余所余所しくて怖っ
ヒカル
会議室取ってあるから
ヒカル
カナタ
いつもの日常が 戻った気がする