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運命

運命

「運命」のメインビジュアル

2

運命 その弍

♥

110

2022年02月08日

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数分後

婚約者…!?

そんなの聞いてません!

神宮寺 雅秀

そりゃそうでしょうね。

神宮寺 雅秀

貴方の執事が僕の手紙を破り捨てているのですから。

!?

執事

…申し訳ございません。

執事

まさか警視庁の者がお嬢様に結婚を申し込んでくるとは思わず、

執事

字も汚かったのでいたずらだと思って捨ててしまいました。

神宮寺 雅秀

その日は気分が優れなくてね、代理のものに書かせたんです。

神宮寺 雅秀

国を守る僕を差し置いて金持ちの商屋の息子と結婚すると聞いた時は驚きましたよ。

…。

(神宮寺雅秀…)

(警視庁の警官で、歳は18歳…私の一つ上ね)

神宮寺 雅秀

茜さん。

神宮寺 雅秀

貴方が結婚に前向きじゃないのは分かる。

神宮寺 雅秀

でも、

神宮寺 雅秀

この時代に女性1人でこの豪邸と資産を守るのは難しいです。

神宮寺 雅秀

おまけに、この国は変わったばかり

神宮寺 雅秀

江戸の町には貴方のような外国風の人々をよく思わない人達が少なからずいます。

!…。

執事

だから何だと言うんですか?

神宮寺 雅秀

茜さん。

神宮寺 雅秀

貴方みたいな方がここで暮らすには。

神宮寺 雅秀

僕みたいな国の犬がそばにいた方が安全なんです。

神宮寺 雅秀

武士の時代はもう終わりが見えています。

神宮寺 雅秀

僕みたいな刀が持てて、なおかつ金のある男はなかなか好物件だと思いませんか?

執事

ふざけるな!

執事

そんな理由でのお嬢様がお前と結婚したいと思うか!

執事

そもそも、外国風の人々をよく思わないのはお前ら新政府のせいだろう!

執事

お前にお嬢様を守られるくらいなら、僕がお嬢様を守る!

執事

とっとと帰れ!

ガシッ(執事が雅秀の腕を掴む)

神宮寺 雅秀

神宮寺 雅秀

ま、待ってください。

神宮寺 雅秀

茜さん!

執事

喋るな!

ドコッ!バサッ! (執事が雅秀を外へ押し出す)

執事

この薄汚い警官が!

執事

二度とここにくるな!分かったか!

ガチャッ!

執事

はぁ、はぁ…

執事

執事

お嬢様、無事追い払いました。

…ありがとう。

執事

大丈夫ですからね。

執事

…私がそばにいますから。

その夜

…。

誠一さん…。

誠一さん、ここが私のお庭よ。

すごい!見たことのない花が 沢山ある。どれも綺麗だ…。 これは何だい?

それはアネモネよ。

あねもね?…初めて聞いたな。 真っ赤でとっても綺麗だ。

でしょ?花言葉も素敵なの。

?、花言葉?

花につけられた言葉のことよ。 アネモネはね、

貴方を愛しているって言葉なの。

そうか…。

それは確かに素敵だな。

アネモネの種をもらってもいいかな?茜さんに渡す用として育てたい。

!、誠一さん…。

…花になるまで、待っててくれる?

ええ、もちろんよ!

…。

もう赤いアネモネは終わりね、今度はブーゲンビリアにしようかしら…。

 

ブーゲンビリア。

神宮寺 雅秀

花言葉は“貴方しか見えない”。

神宮寺 雅秀

…でしたっけ?

貴方は…

神宮寺 雅秀

夜分遅くにすみません。

神宮寺 雅秀

ここに小さな子供が通れるくらいの穴が空いておりましたので、

神宮寺 雅秀

屋敷に置いてきた鞄を取りに来ました。

神宮寺 雅秀

神宮寺 雅秀

素敵なお庭ですね。

…。

鞄を取ってきます。そこで待っていてください。

神宮寺 雅秀

分かりました。

鞄はこれであってますか?

神宮寺 雅秀

はい、これです。

神宮寺 雅秀

ありがとうございます。

そうですか。

では、今日はもう遅いのでおかえりくだ…

神宮寺 雅秀

これは何という花ですか?

その花は…

アネモネですけど…。

神宮寺 雅秀

あねもね、ですか。

神宮寺 雅秀

一瞬茜の花に見えました。

神宮寺 雅秀

神宮寺 雅秀

綺麗な花ですね。

茜、という花があるのですか?

神宮寺 雅秀

はい。

神宮寺 雅秀

棘のついた赤い花で、花言葉は「傷」。

神宮寺 雅秀

よく染料に使われています。

「傷」…。

私と同じ名前の花があったなんて知りませんでしたわ。

ましてや、そんな言葉を持っているなんて…

神宮寺 雅秀

ハッ

神宮寺 雅秀

すみません…傷つけるつもりは…。

私にぴったりの花言葉ですこと。

神宮寺 雅秀

えっ。

私は呪われているんです。

私に好かれた人はみんな、その呪いのせいで早くに死んでしまうんです。

私を育ててくれた父は火事で亡くなり、友人はみな病死しました。

母親はそれを見て私が怖くなったのでしょう。父方の祖父に私を預けてどこかへ行ってしまいました。

すると、その祖父も…ついこの前自殺しました。

しまいには許嫁の誠一さんや、お義父様まで…

…ふふっ…。

私が茜という名前をつけられた理由が、今分かりましたわ。

茜の花の棘のように、私の体には誰かを容赦なく傷つける“何か”が住んでいるのでしょう。

神宮寺 雅秀

…。

神宮寺 雅秀

茜さん。

神宮寺 雅秀

それは果たして、貴方の体にある呪いなのでしょうか?

えっ。

神宮寺 雅秀

僕は貴方に呪いがあるとは思えません。

神宮寺 雅秀

なぜなら、

神宮寺 雅秀

貴方は僕にとっての希望だからです。

(私が…希望?)

神宮寺 雅秀

今から5ヶ月前、

神宮寺 雅秀

僕は川に身を投げて死んでしまおうと考えていました。

神宮寺 雅秀

僕は新政府軍の一員として旧幕府の人々を沢山殺しました。

神宮寺 雅秀

殺した人の中には僕より小さい子供もいて、

神宮寺 雅秀

日に日に僕は罪悪感に苦しみました。

神宮寺 雅秀

そして、

神宮寺 雅秀

僕はそのうち、自殺を考えるようになりました。

神宮寺 雅秀

神宮寺 雅秀

でも、

神宮寺 雅秀

川に身を投げる寸前に茜さんを見て僕は一目惚れしました。

神宮寺 雅秀

儚くて、美しくて、

神宮寺 雅秀

僕はだんだん死にたくても死ななくなり、

神宮寺 雅秀

何度も貴方が頭の中によぎりました。

神宮寺 雅秀

あの時の茜さんが綺麗で、一度でいいから触れてみたくて

神宮寺 雅秀

婚約者がいると分かっていても気持ちを抑えられませんでした。

神宮寺 雅秀

そして、

神宮寺 雅秀

僕は今日まで生きることができました。

神宮寺 雅秀

なので茜さん。

神宮寺 雅秀

ずっと貴方を愛していた僕がこうして生きているのです。

神宮寺 雅秀

貴方は呪われていません。

神宮寺 雅秀

貴方は…

神宮寺 雅秀

神宮寺 雅秀

僕の希望の人です。

神宮寺さん…。

神宮寺 雅秀

執事の方の前では言えませんでしたが、

神宮寺 雅秀

僕は貴方をずっと前から誰よりも愛していました。

神宮寺 雅秀

…嘘偽りなく、貴方が欲しい。

神宮寺 雅秀

神宮寺 雅秀

茜さん、僕の気持ちを受け取ってくれませんか?

!…

…ごめんなさい。

貴方の気持ちはとっても嬉しいけれど、

今の私は亡くなった誠一さんを愛しているの…。

神宮寺 雅秀

神宮寺 雅秀

…そう、ですか。

神宮寺 雅秀

神宮寺 雅秀

フッ、

神宮寺 雅秀

神宮寺 雅秀

…やはりそう言うと思いました。

!…

神宮寺 雅秀

長居しちゃいましたね。

神宮寺 雅秀

それでは、僕はここで。

神宮寺 雅秀

さようなら、茜さん。

次の日の朝。

…。

(静かね…)

「…やはりそう言うと思いました。」

(あの時の神宮寺さん、とっても悲しそうだった…。)

(折角好きになってくださったのに、可哀想なことをしてしまったわ。)

(いや、でも)

(仕方ないわ。私には、誠一さんがいるもの…。)

執事

執事

お嬢様、紅茶を淹れました。

ありがとう。

!、とっても良い香り…。

あれ?

執事

?、どうされました?

貴方…その指、どうしたの?

執事

執事

ああ、これですか。

執事

朝に刺繍をしてた時にできた傷です。

朝の刺繍で…大丈夫なの?

痛くない?

執事

ふふっ、お嬢様は優しいですね。

執事

これくらい平気ですよ。

…そう。

「茜の花言葉は…傷」

…。

貴方だけは茜の棘に刺されないでほしいわ。

執事

執事

何か言いました?

…いいえ、何でもないわ。

つづく

この作品はいかがでしたか?

110

コメント

6

ユーザー
ユーザー

更新ありがとうございます!🙇‍♂️ 執事も神宮寺さんも、茜さんを大切に思っていることがよくわかりました…。本当にどう関係が進んでいくのか、はたまた進まないのかがとても気になります… (執事さん絶対茜さんのこと好きだって…!!!と思いながら読んでいたのは秘密)

ユーザー
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