【キヨside】
おれは幼い頃 ヴァンパイアに襲われた事がある
『夕方から明け方までは ヴァンパイアが血を求めて 彷徨う時間だから 決して外に出たり ドアや窓を開けてはいけないよ?』
そう、耳にタコが出来るくらい 言われていたのに
おれはその事を忘れて 窓を開けたまま 眠ってしまっていた
ぐぐっ…
キヨ(子供)
いきなり首を締められ目を覚ますキヨ
キヨ(子供)
目の前にヴァンパイアの顔がある
ヴァンパイア
いい目をしている… ニヤッ
首を締める手を緩めないヴァンパイア
キヨ(子供)
キヨ(子供)
ドンッ!ドンッ!!
思い切り壁を蹴るキヨ
キヨ(子供)
だれかたすけてっ…)
ヴァンパイア
ヂクッ…
キヨ(子供)
首筋にヴァンパイアの爪が喰い込む
ヴァンパイア
キヨ(子供)
ガチャ…
キヨのお兄ちゃん
部屋に入って来るお兄ちゃん
キヨのお兄ちゃん
ヴァンパイア
ガッ!
キヨのお兄ちゃん
キヨの首から手を離すと瞬時に移動し お兄ちゃんの首を締めるヴァンパイア
キヨ(子供)
兄、ちゃ…ん……
キヨのお兄ちゃん
ヴァンパイア
お兄ちゃんの首筋に噛み付く
キヨのお兄ちゃん
キヨ(子供)
近くにあった野球のバットを掴み 立ち上がるキヨ
キヨ(子供)
力いっぱいバットを振り下ろすが ヴァンパイアに止められてしまう
ヴァンパイア
敵うとでも思ったか?
キヨ(子供)
ドカッ!
ヴァンパイア
キヨに気を取られてる隙に ヴァンパイアのお腹を 思い切り蹴るお兄ちゃん
ヴァンパイアの手が お兄ちゃんの首と バットから離れる
キヨのお兄ちゃん
キヨ(子供)
ぎゅっ…
キヨを守るようにして 抱きしめるお兄ちゃん
キヨのお兄ちゃん
キヨ(子供)
目の前にあるクローゼットの鏡で 自分を抱きしめている お兄ちゃんを見る
キヨのお兄ちゃん
十字架と聖水がある
キヨのお兄ちゃん
キヨ(子供)
急いで取りに行こうと お兄ちゃんから離れるキヨ
キヨのお兄ちゃん
キヨ(子供)
振り返りお兄ちゃんを見る
キヨのお兄ちゃん
キヨ(子供)
キヨ(子供)
こんな時に笑って…?)
これが兄ちゃんと交わした 最後の会話だった
この後、兄ちゃんの部屋に行ったが どこにも十字架や聖水はなく
兄ちゃんのところへ戻ろうにも ドアが開かず入れなかった
朝になり 近所の人が通報してくれたのか 警察が家に来て 兄ちゃんの死体を発見
首は無く、体の損傷が 激しかったのにも関わらず ドアを塞ぐようにして死んでいたと 数年経った後に聞かされたのだった
キヨ(子供)
兄ちゃんは死んだ……)
誰もおれを責めたりはしなかった
責めてくれれば 少しは気が楽になったかもしれない
でも望み通りにはいかず…
キヨ(子供)
死ぬはずだったんだ)
キヨ(子供)
兄ちゃんの仇は
おれが必ずとる…)
おれはヴァンパイア討伐組織の中でも 一番勢力のある『紅蓮組』に入った
親元を離れ 兄ちゃんに言われた通り 強くなる為 沢山勉強し訓練を受けて…
ー数十年後・夜ー
紅蓮組員(副リーダー)
ただちに向かいます
ピッ
通話を切る副リーダー
紅蓮組員(副リーダー)
応援要請が出た
キヨ
紅蓮組員(副リーダー)
紅蓮組員
紅蓮組員(副リーダー)
紅蓮組員(副リーダー)
殺せ!
紅蓮組員一同
キヨ
根絶やしにしてやる…)
おれたちは 応援要請のあった廃墟へ到着した
敷地が広い為 それぞれ分かれて 生存者を保護しつつ ヴァンパイアを殺しては 先に進んでいく
キヨ
人間の死体が多い…)
どんなに見回りや討伐を頑張っても 一向に被害は無くならない
かえってヴァンパイアを刺激し 被害者を増やす事だってある
キヨ
誰かの為に
なってるんだろうか…)
キヨ
兄ちゃんを死なせたおれが
誰かを救おうなんて
思う事自体
間違ってるんじゃ……)
ぶわっ…
急にニンニクのニオイが漂ってくる
キヨ
キヨ
ニオイを辿るキヨ
ニンニクが散りばめられている 部屋の前で立ち止まる
子供
キヨ
そっと部屋の中を覗き込むキヨ
キヨ
あの日クローゼットの鏡で見た 自分を守るようにして抱きしめる お兄ちゃんの姿が見える
キヨ
牛沢
助けが来るはずだから
頑張れ…
子供
子供を守るようにして 抱きしめている 牛沢
キヨ
兄ちゃんじゃ、ない…
キヨ
何見間違ってんだ、おれ…
仕事中なんだから
ちゃんと集中しないとっ……)
キヨ
二人に駆け寄り 目線を合わせるようにしてしゃがむ
牛沢
キヨ
牛沢
牛沢
子供
ぎゅうぅ…
キヨに抱きつく子供
子供
キヨ
子供の頭を撫でつつ 牛沢を見る
キヨ
牛沢
牛沢
入って行くのが見えて
危ないから
連れ戻そうと入ったら
こんな事に…
キヨ
キヨ
助けようと…)
キヨ
この子を守ってくださり
ありがとうございます
牛沢
キヨ
ヴァンパイアに
見つからなかっただけで
いつ殺されても
おかしくない状況です
キヨ
危ないと感じたら
自分の命を
最優先に…
牛沢
キヨ
今、笑った…??)
牛沢
考えもしなかったです
キヨ
牛沢
ただその子を
助けたい一心で
ここに来たので
牛沢
その子だけは守りたいと
そればかりでした ニコッ
キヨ
キヨ
死んでたかもしれないのに
笑えんの…?
これじゃまるで
あの時の
兄ちゃんみたい……っ)
キヨ
キヨ
どうなるんですか…?
牛沢
キヨ
自分のせいで
犠牲になるなんて…
牛沢
その子のせいでは…
キヨ
良かったんだと…
キヨ
一生思い続ける気持ちが
あなたに
分かるんですかっ!?
牛沢
キヨ
子供を守ってくれた人に
何を言って……)
牛沢
キヨ
牛沢
例えその子が
苦しむ事になったとしても
死んでほしくはないから…
牛沢
強く生きてほしいと
思うので ニコッ
キヨ
『……強く、なれよ』
キヨ
キヨ
キヨの目から涙が零れる
牛沢
キヨ
キヨ
兄ちゃんが死ぬなんてっ…
キヨ
兄ちゃんが生きてくれた方が
おれはっ……
ぎゅっ…
キヨを抱きしめる牛沢
牛沢
キヨ
牛沢
あなたを優先させた
お兄さんなら
そう言うと思います
牛沢
命を奪ったヤツだと…
キヨ
牛沢
喜んでると思います
牛沢
沢山の人を救う為に
頑張ってる事を
牛沢
ないですからね
キヨ
キヨの顔を見る牛沢
牛沢
牛沢
あなたのお兄さんだったら
なでなで…
キヨの頭を撫でる
牛沢
キヨ
兄ちゃんに「お前のせいだ」と 恨まれこそすれ 誇りに思うなどとは 微塵も思わなかった
でもこの人にそう言われると 不思議とそうだと思えてくる
キヨ
兄ちゃんと
見間違えたから…?)
牛沢
牛沢
助けに来てくれて
ありがとうございます ニコッ
キヨ
なんていうか
ありがとうございます…
キヨ
牛沢
キヨ
覚えててくださいね?
危ないと感じたら
自分の命を最優先に…
牛沢
頭の片隅には…
キヨ
ぎゅっ…
左手で牛沢の服を掴むキヨ
キヨ
死んで欲しくないんですっ…
牛沢
キヨ
おれと約束してください
キヨ
牛沢
初めて言われた…]
ボソッと呟く牛沢
キヨ
今なんて…??
紅蓮組員
保護したんですね
数名の紅蓮組員が来る
キヨ
紅蓮組員
いたなんて…
キヨ
子供のこと忘れて……)
子供
キヨの右腕の中で眠っている
キヨ
牛沢
あるかもしれませんが…
牛沢
安心したんでしょうね ニコッ
優しい表情でキヨに微笑み掛ける牛沢
キヨ
キヨ
顔が…熱い……//)
これがうっしーとの 最初の出会いだった
穏やかで優しくて良い人で
一緒にいるだけで満たされて…
でも、所詮赤の他人
もう二度と 会う事もないだろうと思っていた…
ー数日後・朝ー
キヨ
気持ち悪い…)
フラフラしながら コンビニ内を歩くキヨ
キヨ
ふらっ…ドンッ
大きくふらつき誰かにぶつかる
キヨ
牛沢
キヨ
キヨ
牛沢
仕事帰りですか?
キヨ
牛沢
ふらついてるので…
キヨ
牛沢
キヨ
牛沢
キヨ
牛沢
放っておける訳
ないじゃないですか
キヨ
牛沢
気にしないでください ニコッ
キヨ
この日を境に うっしーと会うことが増え 沢山話すようになった
それと同時に うっしーに対する気持ちも 以前より大きくなっていって…
ー数日後ー
キヨ
久々の休みに コンビニで買い物をするキヨ
レトルト
て!うっしー!?
キヨ
声のする方を見ると レジ前に店員と牛沢が立っている
牛沢
また家に
スマホ忘れてるぞ?
レトルト
ありがとう
キヨ
二人を見つめたまま動けなくなるキヨ
キヨ
一緒に住んで…)
牛沢
キヨ
キヨに気付き近付いて来る
牛沢
牛沢
キヨ
レトルト
その人知り合いなの?
レトルトが近寄って来る
牛沢
牛沢
助けてもらったっていう…
レトルト
ぎゅっ…
牛沢の後ろに下がり 牛沢の袖口を掴むレトルト
キヨ
レトルト
キヨ
見つめ合うキヨとレトルト
キヨ
キヨ
袖を掴んで…)
牛沢
レトルト
レトルト
大丈夫だと思う!
牛沢
キヨ
牛沢
キヨ
牛沢
あ、今おれを掴んでる
この店員なんだけど
牛沢
キヨ
キヨ
一緒に住んでるんだ…)
キヨ
こんな
お似合いのカップル……)
牛沢
一緒に住んでる人がいて
キヨ
もう一人??
牛沢
牛沢
まあ、その人は
今度紹介するとして
キヨ
見えてこないんだけど…?)
牛沢
キヨ
牛沢
一緒に住まないか?
キヨ
牛沢
住んでるんだけど
あと一人分
部屋が空いてんだよ
牛沢
いつも仕事で無理してるし
会う度に体調悪そうだから
一緒に住めば
いつでも様子が見られるし
何かあれば対応出来るし
牛沢
おれが安心出来るから…
キヨ
キヨ
牛沢
キヨ
一度場所とか見てみないと///
牛沢
牛沢
キヨの都合が良い時に
一度見においで ニコッ
キヨ
分かった…///
これは単なる うっしーの優しさなのかもしれない
でも おれのことを気にかけてくれたり 一緒に住もうと言ってくれたり
おれ自身 うっしーの事になると 嬉しかったり モヤモヤしたりして…
キヨ
おれ、
初めて会った時から
うっしーの事……)
自覚してからは 自分でも笑っちゃうくらい うっしーにいっぱい甘えていた
そばにいるだけで たくさんの幸せを感じて
" うっしーがいれば どんなことでも 乗り越えられる! "
そう思っていた…
ー現在ー
キヨ
前を歩くガッチマンが背負う牛沢を 見つめるキヨ
キヨ
ヴァンパイア…)
今まで出会ったヴァンパイアは全て 自分の欲望を満たすためだけに 生きているようなやつらばかりで
思いやりと優しさなんて微塵もなく 人間を食糧 または、暇潰しの玩具としか 思っていない化け物
おれとは絶対 分かり合えることのない存在だった
なのに、いつもおれを気にかけ 優しく接してくれる うっしーがヴァンパイアだなんて…
キヨ
キヨ
うっしーの前で
「ヴァンパイアを
根絶やしにしたい」て…)
うっしー…
おれのこと どう思ってたの?
根絶やしにしたいって言うおれを…
毎日のように ヴァンパイアを始末しているおれに 何を思って 優しく接してくれてたの…?
キヨ
本当は顔も見たくないくらい
嫌いだったんじゃ……)
あんなにヴァンパイアを 根絶やしにと思っていたのに
うっしーが ヴァンパイアだった事より 嫌われているかもしれない事の方が 気になっている…
キヨ
うっしーは 憎むべきヴァンパイアの一人なのに…
始末しなきゃいけない ヴァンパイアなのに……
キヨ
もう、誰かに罵られ 罰せられたとしても構わない
キヨ
この命が尽きるまで あなたを想い続けてもいいかな…?
おれのこと嫌いでもいいから
おれを好きになってなんて 言わないから…
おれに あなたを想い続けることを許して…?