あかり
あのさ、紗良
ちょっと話があるんだけど。
紗良
うん?なになに?なんか大事な事?
紗良
(なんか、あかり、いつになく怖い顔。うちなんかしたっけ?)
あかり
うん、まあ。
・・・あのさ、紗良が話して回ってる妙な体験のことだけど、あれ本当の話?
紗良
(ああ、その話か。)
紗良
ヤバい、乗り遅れるー!
うちはその日、寝坊してしまって、いつも乗っている7:40分のバスに乗り遅れそうになっていた。
紗良
(家からバス停まで6分。走ると3分 。・・・間に合うかな?)
走りながら腕時計を確認する。7:39。まだ道のりの半分行っていないから、きっと間に合わないだろう。
そう考えた紗良は、急にペースを落とした。次のバスは7:56分。
紗良
(あーあ、遅刻決定。バス来るまでこっそりゲームしてよう。)
そう考えてのろのろ歩く紗良。しかし、予想を裏切ってバス停にバスが停まっている。行き先は裕頼学園前。紗良の通う学校だ。
紗良
(あれ?ちょっと遅れてるのかも。でも、発車時刻42分になってるなー。時刻表変わったのかも。)
紗良
(やった、ラッキー。しかも、ちょうど最後の一席を確保できた!)
そんな事に浮かれていた紗良も、しばらくすると様子がおかしい事に気づき始めた。
紗良
(何これ?誰も、身動ぎもしない。神妙な顔して俯いてる・・・
誰も顔が見えない。何で?何で?)
紗良
(それと、運転手とその横にいる研修中の新人みたいな人が気になる。どこかで見たことがあるような。)
紗良
怖い。でも、ちょっと面白い!
紗良は、この何も変化のない退屈な毎日に飽き飽きしていた。元々スリルが好きなのだ。
運転手
えー、次はぁ、国山ー国山ー
紗良
(後ひとつだ。降りる前に何とかして秘密を突き止め、みんなに話したい!)
運転手
えー、次はぁ、幽頼学園前ぇー幽頼学園前ぇー。御降車のかたはぁ、いらっしゃいますかぁ。
紗良
あ、はい、おります!
そう言おうとして、紗良は戸惑った。声が出ない。それどころか、金縛りにあったように体が動かないのだ。
戸惑っている紗良に、研修中の女がツカツカと寄ってきた。
研修中運転手
あら、あなた、ここで降りるの?あのね、ここで見たこと、誰にも言わないでね?約束できないなら、ここから出さないから。
紗良
言いません、絶対言いません。
研修中運転手
そうか?それなら行ってよろしい。
紗良
(ていうか、この駅終点じゃ?・・・まあいいや、みんなに話そう!)
紗良は、研修中運転手の言いつけを守らず、会う人みんなに今日の体験を話して回った。
紗良
うん、あの話がどうしたの?
あかり
あれって、誰にも言っちゃダメって言われたんじゃないの?
紗良
・・・うんそうだけど。
あかり
あんまり言わないほうがいいよ。私の昔の友達も、どんなのだったか忘れたけど不思議な体験したの。それを、みんなに行ってたら・・・
紗良
どうなったの?まさか・・・
あかり
その子、死んじゃった。
その時、授業開始5分前を知らせるチャイムが鳴った。
あかり
とにかく、誰にも言わないでね。
紗良
(どういうことだろう、あれって本当の話?でも呪いなんてあるわけない。きっとあかり嘘ついてるんだ。
紗良
(あれ、、、あれ結衣だ。)
結衣
おはよう、紗良。
紗良
(どうしよう、話すのやめようか。ちょっと怖いけど呪いなんて信じないし・・・)
紗良
おはよう、ねえねえこの前さぁ、バスの中でさ、・・・
その時も紗良はいつもと変わらない様子であの時のことを話して語った。
あかり
ねえ紗良、私の忠告無視して話してるって本当?
紗良
ああ、・・・うん、何人かには。
あかり
はぁ。ちょっと話があるから、放課後屋上これる?
紗良
うん、別にいいけど。
紗良
(何よ、わざとらしくため息とかついて。友達だと思ってたけど、めっちゃうざ。)
そして放課後。紗良がついた頃にはもうあかりは来ていた。
あかり
あのさぁ、私、あのバスで起こったこと知ってるんだよねー。
紗良
え?嘘?何が起こってたの?
あかり
まあ話してあげるよ、もうあなたは話して回る事もできない。
紗良
・・・え?どういう事?もしかして
あかり
あ、ううんこっちの話。気にしないで。
紗良
それで、何が起こってたの?
あかり
あのバスの乗客、様子が変だったでしょ?
紗良
うん、何かみんな死んでるみたいに俯いてた。
あかり
あれ、薬で眠らされてたんだ。
紗良
え、何でそんな事。
あかり
あの乗客はその後、人肉工場で加工されて肉になるか、外国に売り飛ばされて奴隷になるか。
あかり
たまたまちょっとした故障でバス停に停まっている時、あなたが乗り込んできたの。
紗良
まさか。だってそれなら私も。
あかり
最初はあなたも連れて行こうとしたみたいだけど、私の友達だって知ってたのね。軽く口止めだけでやめた。
あかり
でも、あなたが私の忠告を無視して話し続けるのであれば。
あかり
こうするしか、ないわね!
紗良
え?嘘・・・突き落とされた?
4階建ての屋上から突き落とされた紗良は、薄れゆく意識の中、思い出していた。
紗良
あの運転手たち・・・一度だけあったことがある、あかりの両親だ・・・。