それは突然

そこから"僕"の日常は崩れ始めた

僕は知ってる

魔界に帰ったら

僕の生きている時には帰って来れない

僕はコントローラーを置いて 葛葉の方を見て言う

そんなのわかってる

わかってるのに

ゲーム画面に向かって コントローラーを動かしながら

淡々と澄ました顔で話す

この質問を投げかけることは

自分が苦しくなると脳の隅っこでは

理解していた

すると少しして

小さく深呼吸して言う

この時

葛葉が居なくならないなら

僕は死んでもいいと思った

強く身構えた心もここで

ほぐれていくような気がした

そう、葛葉に言った

ここで葛葉と別れて生きていっても

耐えられる気がしないからだ

僕はすぐに言い返した

いつもは照れるのに

冷めたような

呆れたような

顔で

声色で言う

葛葉は正しいことを言ってる

なのに黒いクレヨンで

書きなぐったぐしゃぐしゃな絵のような

気持ちは収まらない

乱暴にコントローラーを置いて

表情1つ変えずに

優しい声で

【一話】

暗がりの扉