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現実に殺される前に

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現実に殺される前に 第2章 音和 鳴海④

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2019年08月24日

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あれからどのぐらいの時間が経っただろう?

気が付くと、お母さんが夕食の時間だと呼ぶ声が聞こえた。

私は重い足取りで部屋を出てリビングに向かうことにした。

リビング

母親

だ、大丈夫?暗い顔してるけど...

鳴海

あ...うん、大丈夫だよ...

鳴海

いただきます...

私は彼女に言われたことを思い出しながら食事をした。

母親

母親

あ、そういえば...さっき玄関の扉を開ける音が聞こえたんだけど、鳴海どこかに行った?

鳴海

ううん...どこも行ってないよ...

母親

そ、そう...じゃあ私の勘違いだったのかしら...

私とお母さんはそれから会話もせず、無言で食事を続けた。

鳴海

ごちそうさまでした...

母親

じゃあ、お皿片付けちゃうわね...

食事が終わり、お母さんが席を立とうとしたとき私はようやく声を発した。

鳴海

お母さん...っ‼︎

突然の大声に驚いたお母さんは私を見た。

母親

ど、どうしたの?何かあった?

お母さんは心配して声をかけてきてくれた。

鳴海

いや...少し話したいことがあって...

母親

話したいこと...?

鳴海

鳴海

芸能界のことなんだけど...

母親

...っ⁉︎

お母さんは気まずそうな顔をしたが私は続けた。

鳴海

私ね、暫く考えてみたんだけどさ...

鳴海

鳴海

事務所は一旦辞めるよ。

母親

母親

えっ...

私の言葉に驚いたのか、お母さんは戸惑いを見せた。

母親

ど、どうして?鳴海は女優になりたかったんじゃないの?

鳴海

勿論、私は女優になりたいよ。その夢は絶対に変わらない。

母親

それならどうして...

鳴海

私ね、幼稚園、小学校、中学校...すべて当たり前に通ってたんだ。

鳴海

そして高校に行って芸能界に入って、勉強より夢を優先するようになった。

鳴海

義務教育なんてとっくに終わってるから高校なんてどうでもいいって思ってた。

鳴海

でもね、お父さんがリストラされて家庭がこんなになって初めて気が付いたよ...

鳴海

鳴海

私は贅沢をし過ぎだって。

鳴海

普通の子は事務所になんか通ってない。

鳴海

普通の子は夢があっても、その為に勉強をしている。

鳴海

それなのに私はそのことに今まで気が付かなかった...

鳴海

だから私はまず学業を優先するよ。

鳴海

それで学校を卒業してから、また夢について考えるようにする。

鳴海

だって、芸能界なんていつでも入れるからね笑

母親

鳴海...

お母さんは泣いていた。

それは悲しみの涙なのか、感動の涙なのか分からない。

鳴海

ごめんね、お母さん。

鳴海

今まで迷惑かけてごめんね...

気付けば私も泣いており、お母さんの手を握っていた。

玄関

鳴海

ヤッバイ‼︎遅刻する‼︎

母親

忘れ物ないわね?

鳴海

うん‼︎大丈夫‼︎

鳴海

行ってきまーす‼︎

私は元気よく家を飛び出すと、学校に向かって全力疾走した。

教室

ガラガラッ‼︎

鳴海

ギリギリセーフ‼︎

私が教室に着いたと同時にチャイムが鳴った。

B太

アウトだろ。

鳴海

いやいや‼︎セーフだって‼︎

A美

もう、事務所辞めたんだから時間たっぷりあるでしょ...

鳴海

あれ?最初って何だっけ?

A美

英語でしょ?それも忘れたの?

鳴海

い、いやぁ⁉︎覚えてるよ‼︎

B太

てかそもそもテスト勉強したのか?

鳴海

勿論‼︎私の暗記能力を舐めたらダメだよ‼︎

A美

まあ、あんな長台詞覚えるくらいだからね笑

B太

じゃあ、俺と勝負するか?

鳴海

えっ⁉︎い、いやぁ...流石にクラス1位と勝負するのはチョット...

B太

学年1位じゃないだけマシだろ。

A美

私は楽しく見させてもらうわ笑

鳴海

ええっ⁉︎そんな〜...

あれから2ヶ月、事務所を辞めた私はきちんと高校に通っている。

お父さんも働き口が見つかったようで良かった。

芸能界は辞めたけど、私は学んだものを活かして学校生活を送っている。

それもすべて彼女のおかげだ。

その彼女は今でも屋上にいるのだろうか...?お礼を言いたいのに...

水鏡

最近、悩み相談ないな〜...

もう噂も廃れてきたんじゃないかな?

水鏡

ええー‼︎じゃあもう一回広めてきてよー‼︎

はいはい、気が向いたらね。

水鏡

うわー、絶対広める気ないヤツだー。

水鏡

ていうかさ、この前の鳴海ちゃんの件あったじゃん?

水鏡

初めて会ったあのとき、屋上封鎖してたのって“神さま”でしょ?

水鏡

あれ予定外だったんだけどさ、何であんなことしたの?

ああ、あれはちょっとしたイタズラだよ。

彼女は霊的なものが嫌いだって分かってたからつい...

水鏡

そのせいで私、めちゃくちゃ気味悪がられたんだよ‼︎

水鏡

もう、私は超優しい『透明人間』なのにまるで悪霊扱いだよ‼︎

...おや?久しぶりに相談者が来たみたいだよ。

水鏡

えっ‼︎本当⁉︎

それじゃあ、僕は消えるから頑張ってね。

『透明人間』さん。

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