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それでもまだ生きたい。

それでもまだ生きたい。

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それでもまだ生きたい。

♥

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2020年09月23日

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「あ!あれ食べようよ!」

紗良の声につられ俺は 車椅子を押す手を止める

晴翔

確かに美味しそうなカステラだな

紗良

でしょ!
食べようよ!

昼は暑く 夕方になると少し涼しくなるこの季節

俺たちは地元の小さな祭りに来ている

人にぶつからないように 丁寧に紗良の乗っている車椅子を押す

紗良

あ、ちょっと待って!

晴翔

うん?

紗良

こういうのってさ先にお賽銭した方がいいよ!

紗良

先にお賽銭しに行こ!

晴翔

えぇ
ベビーカステラの口になってたのに

紗良

だーめ

紗良

さ!
お賽銭しにレッツゴー!!

車椅子の向きを変え 賽銭箱を目指す。

紗良

まって、私五円玉ないかも

晴翔

なんで五円玉?

紗良

お賽銭する時は5円玉いいらしいよ!
五円とご縁、をかけているだって!

晴翔

あーそういう事ね

紗良

そ!

晴翔

俺さいつも思うんだけど

紗良

晴翔

賽銭の時に
五円を入れる人
10円を入れる人
100円を入れる人。
色んな人がいるじゃん?

紗良

まぁーねぇ

晴翔

100円入れるくらいならさ、
10円玉を10個入れた方が良くない?

晴翔

そっちの方が
願い事10個叶うかもよ笑

紗良

なにゆってんの。笑

紗良

願い事は一人一つ!

紗良

強欲だと帰ってバチが当たるよ笑

晴翔

ちぇっー
そっかー笑

そんな会話をしていると 気がつけば賽銭箱の前に居た

紗良

あ!
5円あった!!

晴翔

よかったじゃん笑

紗良

晴翔は?
5円じゃなくていいの?

晴翔

俺は10円でいいや!

紗良

そっかー!笑

パンパン!

賽銭箱にお金を投げ入れると 紗良と俺はそれぞれ目を瞑る。

晴翔

ね?
なんて願った?

紗良

えー笑
晴翔は?

晴翔

俺は去年と同じだな!
来年も来れますように。
だな

紗良は少し黙り込む。

晴翔

紗良

私は幸せになれますように。
って願った笑

晴翔

いいじゃん笑

紗良

でしょ!

「だからーー!! 買ってよぉ!!」

色んな音が混ざり合うなか とっても大きな声が響き渡る

男の子

ねぇねぇー!
ママ!
このお面買ってよ!!

お母さん

いらないよ!
どうせ直ぐに捨てるだけでしょ?

男の子

飽きないよぉー!
捨てないよぉー!

男の子

もし被ってくれたら、来年も再来年もずっとこの仮面被るからさー!

男の子

買ってよ!
オレンジレンジャーお面買ってよぉ

そんな親子の会話を横目に 俺は車椅子を押し鳥居をくぐり 神社を後にする。

晴翔

はぁ。

紗良

どうしたの?

晴翔

おれはさ、
ああいう子供が大っ嫌いなんだ

紗良

あのお面買って欲しそうにしていた子?

晴翔

そ。

晴翔

そもそも本当に来年が来るかも分からないのに。

晴翔

何が、来年も被るだ。

晴翔

はぁ。腹が立つ。

来年が来るかすら定かではない そんな場所で僕らは生活をしている。

俺は生まれつき 心臓の病にかかっていた。

中学3年まではみんなと同じように 生活出来ていたが、 高一の春、教室で倒れてからは ずっと病院で入院中だ。

助かるには 心臓のドナーが必要らしいが 小児の心臓ドナーはそう簡単には 回ってこず

恐怖と戦いながらの 毎日を過ごしている

唯一の楽しみは 一日だけ外出を許される 夏祭りの日だ。

紗良はALSと言う病気だ。 体の筋肉が固まっていき 最終的に心臓すら動かなくなる。

そんな俺たち出会いは当たり前だが 病院だった。

明日が来るかも分からない。 紗良と居ればそんな不安さえも 何だか大丈夫な気がした。

紗良

何言ってる笑

紗良

私は生まれ変わったらあの子になりたいくらい笑

晴翔

今現在生きてる子に生まれ変われるわけないだろ

紗良

いいじゃん。そんな細かいこと。
それより、ね?
笑ってよ笑

紗良

今ブサイクだ笑

晴翔

うっせーな。

俺は少し無理して口角を上げる。

紗良

あ、

晴翔

うん?

紗良

綺麗

晴翔

ほんとだ

花火が上がる。

晴翔

え?どうして?

夏祭りが終わり いつもの日常になった頃 紗良は突然言い出した。

紗良

私、延命治療は受けない。

晴翔

言ってる意味が分かるのか!?

晴翔

延命治療を受けないと正直
あと半年も持つかわかないんだぞ?

紗良

そんなの分かってる!

紗良

でも、嫌なの。

紗良

全身色んな管を付けられて

紗良

色んな人の迷惑になる!

紗良

お荷物になる!

紗良

そんなの。
いやだよ。

晴翔

何言ってんだよ

晴翔

荷物でもなんでもない!

晴翔

大切な人なんだよ。

晴翔

来年も再来年もずっと
紗良と祭りに行きたいんだ

紗良

悪いけど。
親にも言った。

紗良

主治医にも言った。

紗良

ごめんね。

晴翔

。。。

晴翔

勝手にしろよ。

日常は簡単に崩れる。

そう実感した日だった。

深夜2時 大人達の会話で目が覚める。

紗良が死んだらしい。

紗良が死んで1週間が経った。

この一週間は何もしていない。 ご飯を食べる。 寝る。 だけだ。

死因は階段からの転落死

自殺だったのか? ただの事故だったのか。

どちらにせよ 俺と紗良の別れは最悪だった。

晴翔

ごめん。
紗良。

毎晩毎晩、 天井を見ては瞳いっぱいになった 涙が頬伝う。

紗良のお母さん

あ!晴翔くん!

紗良のお母さん

ごめんね、急に。

突如部屋の扉が開き 紗良の母親が入ってくる。

晴翔

あ、

晴翔

いやいや。
まだ7時なんで大丈夫ですよ。

紗良のお母さん

そう、ありがとう

晴翔

それよりどうしたんですか?

紗良のお母さん

晴翔くんね、紗良が亡くなってから1回もスマホ見てないよね?

晴翔

あ、はい。

「先日紗良のスマホを見てたら見つかったんだけど、」 紗良の母親はそう言うと続けた

紗良のお母さん

時間がある時でいい。
紗良からのメッセージを読んで貰いたい

紗良のお母さん

見てほしいの。

紗良のお母さん

お願いね。

それだけ言うと 紗良の母親は一礼だけし 部屋から出ていった

晴翔

。、

ピコン スマホの起動音がなる。

通知の溜まったメッセージ欄の中から

紗良を見つける。

晴翔

。。、

震える手で タップする。

紗良

晴翔へ

紗良

さっきはごめんね?

紗良

延命治療受けたくないとか言っちゃって

紗良

嬉しかった。
晴翔に大切だ!って言われて

紗良

でもやっぱり耐えられない。

紗良

私は弱いの。
ごめんね。

紗良

あのね?
私夢があるの

紗良

何か気になるでしょ??笑

紗良

私は生まれ変わったら
晴翔になりたい!

紗良

こんなこと言うとね
君は、「俺はまだ生きてる!」

紗良

とか言うけど笑

紗良

離れたくない。

紗良

晴翔とずっと一緒にいたい

紗良

多重人格ってゆうのかな?笑

紗良

2人で1つになりたい。

紗良

神社でね
毎年、毎年、そう祈ってた。

紗良

ってことは神様も願い叶えてくれるよね!笑

紗良

これを読んでる時、私はこの世にいないと思う。

紗良

けど、
毎年5円をお賽銭していた私!笑

紗良

きっと願いはかなって

紗良

今あなたと一緒いる気がする笑

紗良

晴翔の中で、
私は生き続けられる。

紗良

本当にありがとう。

どれくらい泣いただろう。 気がつけば外は明るくなっていた。

晴翔

紗良!!!

俺は1度だけ叫ぶと 声を殺してまた泣いた。

夜店の人

ベビーカステラ!
ベビーカステラはいかが!?

いつもの鳥居を今年は1人でくぐる。

少しベビーカステラも食べたいが 先にお賽銭箱へと向かう。

財布からお金を取り出し 賽銭箱に投げ入れる。

晴翔

来年も、また来れますように。

やはり、いつも通りの願い事をする

賽銭箱に背を向け 立ち去ろうとした時

「願い事は1人1つ!」

ふと女の子の声が頭に響く。

晴翔

あ、そっか。

俺は再び賽銭箱へと向かい 財布の中から五円玉を探す。

晴翔

幸せになりますように。

今度こそ 賽銭箱に背を向け立ち去る。

ドン!

腰に衝撃が走る。

晴翔

あ!

男の子

ごめんなさい。

後ろから男の子に ぶつかられたらしい。

晴翔

あ、うん。
大丈夫。

男の子に背を向け歩き出す。

後ろでは男の子達の声が聞こえてくる

男の子達

おい!
お前なにやってんだよ笑

男の子達

どんくせーな!
そんな時代遅れなお面付けてるから
トロイんだよ!

男の子

ちがう!
これは大切なんだ!!

男の子

お母さんと約束したもん!

男の子達

はいはい笑
とにかく早く行こーぜ

男の子

おー!!

気がつけば 晴翔の口角は少し上がっている。

紗良

あ、

晴翔

うん?

紗良

綺麗

晴翔

ほんとだ。

花火が上がる。

この作品はいかがでしたか?

810

コメント

3

ユーザー

コンテストご参加ありがとうございます! 本当に、田中太郎さんは毎回素敵な話を書かれる…✨ 最後の場面の、「願いごとは1人ひとつ」と言って、主人公の中にいる紗良ちゃんの分までお願いごとをするシーンでは発想に驚かされました…! そしてあのお面の男の子が出てきたところではもう…😭! 結果発表までしばらくお待ち下さい✨

ユーザー

純粋な気持ちになれました、ありがとうございます✨

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