俺は、伊吹 遊馬 (いぶき あすま)
子供の頃から妖怪の類いに絡まれる日々を過ごしてきた。
周りの人には見えない、そいつらに苛まれ、大体は1人で過ごしていた。
これが自分の運命なんだと諦めて···
それでも、高校の時は好きな人もいたし、付き合ったりもした。
俺にだって、そのくらいの権利はあるはずだと信じて。
だが、やっぱり上手く行く訳もなく·····、気味悪いと言われてしまう。
そんな事は慣れっこだったけど、多少は傷付くよ俺だって。
そんなある日、それでも俺に合わせてくれる女の子がいた。
屋上に呼び出されて、告白された。その子の名前は···
沢村 ヒカリ
俺と同級生で、違うクラスの子だった。···とてもキレイな子で、 何故、俺なんかにって不思議だった。
そのうち自然とその子の魅力に引かれて行った。
暫くは、俺の奇妙な状況も優しく受け止めてくれていた。
だが、その子にも、勿論何も見えない。何が起きているのか分からないのは当然だ。
付き合って1年余り····、その辺りからヒカリの態度は変わって行った。
···それは仕方のない事ではある。 でも、俺の中でヒカリは特別なんだと思っていた部分があった。
それだけに俺のショックは大きく、心は折れそうになっていた。
高校を卒業したら、お互いが別々の道を歩み始める事になる····。
多分、もうダメなんだと分かっていた。
高校を卒業して、俺は専門学校に行くことを選び、春休みになった。
それ位には、殆んどヒカリと会う事は無くなっていた。
俺のこの体質を理解出来るやつなんてきっといない····
そう、諦めて又、1人で生きていこうと決めた。
その日、俺はヒカリに謝って、ちゃんと自分の気持ちを伝えた後···
別れる決意を固めていた。
だが、それすら許されない···。
駅の改札口でまたしても、奴らに邪魔をされてしまった。
それも、今回は流石に逃げ切れそうにない状況だ···
今まで逃げ切れていた事の方が奇跡だったのかもしれない。
俺の人生なんて··、特に良いもんでも無かったし···と、諦めかけたその時···
1人の女の子の声が俺の耳に入ってきた。
「どうしたんですか?」
その女の子は、俺以上に奇妙な力を持っているようだった。
俺は奇跡的に助けられ、ひょんなことから彼女と行動を共にする事になる。
そんな彼女の名前は···
櫻井 蓮 (さくらい れん)
見た目は、可愛らしい感じの普通の女の子だ。
奇妙な力を覗けば、少しオチャメで純粋な優しい子だ。
生きることを諦めかけてた俺からしたら、命の恩人以上の存在。
こんな俺の為に、自分よりも俺を優先してくれる本当に優しい子だった。
俺はその後、ヒカリとはちゃんと話をして別れる事が出来た。
勿論、それにはレンが居てくれた事が大きかった。
そうして、俺はレンと一緒に居ることが多くなり·····
いつしか、隣に居ない日があり得ない状態になっていた。
····俺は、案外惚れやすいのかもしれない···
だが、これが本心だ。
俺は最初の段階からレンに一目惚れしていた可能性が否めない···。
自分でも良く分からないけど、いつからか本気で好きになっていた。
だが··、そんな自分の気持ちを伝える事は出来なかった。
何故って?
俺は、ヒカリと別れた穴埋めにレンを好きになった訳じゃないからな。
誰にどう思われようが構わないけど、レンにだけは、そんな風に思われたくなかった。
それと···、もう1つの理由がある···
俺はこんな性格ではなかったのだが、レンに対してだけは、凄く臆病だ。
レンは、そもそも優しくて可愛いから、俺が勝手に好きになった訳で···
そうなった場合、気持ちを伝えたらどうなると思う?
そう、思うと···恐ろしくて気持ちなんて伝えられない···。
情けない···、と思ったそこのあなた。
俺は、レンが俺の隣からいなくなるくらいなら、俺の気持ちなんてどうでも良いくらいに好きなんだ。
···要するに、気持ちを伝える事よりも、レンが俺の側にいてくれる事の方が大事だ·····。
····それから暫くして、レンの方から少しづつ歩み寄って来てくれている事に気づいた···。
··だが、俺はレンの優しさを勘違いしているだけなんじゃないか···?
またしても臆病風が吹く。
俺は、歩み寄って来てくれているレンに対してまた····
「それは···、義務感?」
····なんて最低な発言をした。
それでもレンは、本当に優しい···。
俺の手を優しく包んで、こう言った···
「大切に思っています··」 「···誰よりも」 「アスマさんを····」
····正直、雷に撃たれたような衝撃だった···。
確信を持てなかったレンの想いに、モヤのかかった霧が晴れたような感覚
···ようやく、俺も人並みの幸せを掴んで良いのか?
本気でそう思った。
俺にとってレンは、何者にも変えがたい大切な存在だ。
今は、情けない事にレンに守られる一方の俺だけど····
いつか必ず、俺がレンを守れるようになりたい。
この幸せを···、手放す事はこれから先、何があっても····
絶対に無いと断言する。
···本人には恥ずかしくて言えないけど
レンを心から愛している。
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