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────視界の隅を、小さな黒い影が横切った。 ハッっとして、私はその影を感じた方に視線を向ける。
窓の向こう。焼け付くような夕陽が、目に映る景色を余すことなく赤く染めている。
伽々里 梨沙
声をかけてくれたのは、文芸部の部長・伽々里さんだ。
伽々里 美里
伽々里 梨沙
淡々と語る伽々里さんの言葉に、
吉沢さん
と小さな悲鳴を被せたのは、2年生の吉沢さん。
吉沢さん
伽々里 梨沙
伽々里 美里
2人の会話を聞きながら、2年の清水さんと3年の鈴木さんが、部室の隅にある古いパソコンでこっそり検索する。『7代目 市川團十郎』────7代目市川團十郎は江戸時代の文化文政から天保にかけて活躍した歌舞伎役者────うん、確かに、意味不明と言われても仕方ないほど大昔のエピソードだ。
部長の蘊蓄に苦笑しつつ、私達は帰り支度を始める。 パソコンの電源を落とし、机の上にちらばったお菓子や紙コップを片付け、乱雑になった椅子をきちんと並べる。
伽々里 梨沙
部長が部会終了のあいさつをした────その時。
青木 界
突然ドアが開き、若い男が顔をのぞかせた。 顧問の青木先生だ。 途端に、全員が怪訝な顔をする。
伽々里 梨沙
青木 界
名目上は顧問となっているが、顧問の先生が部活に顔を見せることはほとんどない。活動は週に1度、水曜日の放課後だけ、しかも読書内容を語らうことがメインの部活動において、顧問の必要性などないに等しいからだ。
とはいえ、界先生に来てほしくないと思っている部員は1人もいないだろう。だって、わが校唯一の若い男性教師だし。────ちょっとカッコいいよねって、みんな言ってるし。
界先生はコホン、と小さく咳払いをすると、真っすぐに私達5人を見た。
青木 界
その言葉に、即座に部長が反応した。
伽々里 梨沙
青木 界
伽々里 梨沙
青木 界
にっこりと笑って、界先生は言った。
青木 界
────旧校舎。 その言葉に、私の耳はピクンと反応する。
伽々里 美里
思わず声をあげると、界先生は
青木 界
と大きく頷いた。 やった!と私は小さくガッツポーズをする。 明治期に建てられたという白亜の古い校舎。現在は文化財保護の観点から立ち入り禁止となっているが、実は私、1度は入ってみたいと思っていたのだ。
伽々里 美里
パッと手を挙げた瞬間、部長が
伽々里 梨沙
と声を上げた。
伽々里 梨沙
伽々里 美里
途端に、部長は眉間に皺を寄せ、ムッとした顔を見せた。 あ、これはまずい事を言ったかな、と思っても後の祭り。後でお説教されるかも……と思った瞬間
青木 界
と、界先生が助け舟を出してくれた。
青木 界
伽々里 梨沙
なにか言おうとした部長を、界先生は
青木 界
と素早く制した。
青木 界