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魔法使いは何を唱う?

魔法使いは何を唱う?

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14

事件発生

♥

130

2023年03月02日

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翌日……

〜真冬 side〜

今日は休日で、夕方に個人での 雑談配信を予定してる日

もうすぐ始まるから、 色々と準備をしてるんだ

真冬

飲み物よし、マイクとパソコンもよし……

僕の体調もよし、喉の状態もよし

しっかり指差し確認をして、 最後に時計を見る

17時にスタートで、今は16時50分

だから、あと10分で始まる

……なんだけど……

真冬

……

一昨日から、あの2人が どうしても気がかりだった

そらるさんは魔法界に行ってから、 未だに帰ってきていない

僕らはいつも、魔法空間や魔法界に 行く時は、それぞれに何かしらの形で メッセージを残しておく

昔とあることがあってから、 お互いの所在を把握するためにと、 僕らの間で始めたこと

使いにとって現世は、どこに闇生物や 闇使いが現れるか分からないから、 1人でぼーっとしていると危険で、 いつ死んでもおかしくない場所

それに魔法界も、長く居座ってたら 現世の人達に行方不明だと思われ かねないし、お互い把握しておかない と、色んな人に心配をかけてしまう

今回は、あっちが直前に言伝を残して おいてくれたから、僕はどこにいる のか分かるし、まだいいんだけど……

真冬

(そらるさんは、何をする為に魔法界へ行ったんだろう……)

ノアさんとお茶か何かの約束をして いて、その時間だから行っただけ?

いや、もしそうなら、用事が あるのにうちに来るなんてことは なかったはずだし、行っても その日中に帰ってくるはず

ノアさんも世界間の時間のズレは特に 気にしてくれてるから、それは尚更だ

そして、“気がかり”の もう一つの原因の、天ちゃんのこと

あの時何を言いかけたのか、 何であんな発言をしたのか

何より気になるのは、あの表情の意味

あんなに辛そうな顔をしておいて、 “何でもない”は絶対にないはず

僕らは使いの仲間。 それ以前に、友達でもある

人に話せないようなことじゃない なら、話を聞いてあげたい

真冬

……って、そろそろ時間……

時計を見ると、配信開始の1分前

とりあえず今は、こっちに集中しよう

久しぶりの個人配信で、 楽しみにしてたんだから

まふまふ

……あーあー、みんな聞こえるー?

配信開始のボタンを押して、 待ってくれていたリスナーの みんなに話しかけた

まふまふ

“聞こえてるよー”、よしっ! じゃあ今日は〜……

彼方

現世──年……

今から、──年も前に該当する ページを見せられる

彼方

…………は……?

そこには、見慣れた 文字列が並んでいた

ノア

やっぱり、2人が言っていたのは、彼の……

ノア

……“天宮翔太”のことだったんだね

現世魔法使い名簿・光属性

──現世1871年 天宮翔太

配信開始から、40分くらい過ぎた頃

まふまふ

それでさ? その時天ちゃんが、豚骨ラーメンのことを……

最近あったことを話しながら、 僕も思い出してみる

前は少し恐怖すら感じたけど、 今では普通の笑い話だ

まふまふ

あれは本当にびっくりしたなぁ。一緒にいたそらるさんもさ、珍しく失笑してたレベル

笑い混じりにあの時のことを話すと、 コメント欄が、“www”や“草”なんて 文字で埋まっていった

そういえば、あの日の帰りは、 闇使いのアランと戦ったんだよね

結構ガッツリ食べちゃったのに 体重が増えてないのは、戦いで 体を動かしたおかげかな

まふまふ

(ほんのちょっとだけ、アランに感謝しておこう)

まふまふ

あとね、この前いろはとぽてとが……。

まふまふ

──っ!?

話を続けようとした途中、 脳内に直接、とある伝達が届いた

《現世使いに緊急伝達。 早急に魔法界へ、 上位使いは中心部へ集結願う》

まふまふ

っ……!!

これは、ノアさんの声

まふまふ

……っ、まさか……

この伝達は、2年前にも一度、 聞いたことがある

魔法界の危機……きっと、 “あの時”と同じだ

まふまふ

っ、大丈夫、大丈夫……

小さい声でボソボソと呟いて、 自分を落ち着かせる

魔法界に行く前にまず、 配信を止めなきゃ

突然話を止めた僕を心配した コメントが溢れかえっている中、 申し訳ないけど全部無視して、 早口で話を始める

まふまふ

みんなごめんね、ちょっと今急用が入っちゃって。アーカイブはこの後残すから、今日は配信終わりにするね

僕がそう言うと、“分かった”、 “頑張って”というコメントが 増えていった

しっかり配信を切ったのを確認して、 椅子に座ったまま目を瞑る

次に目を開けると、いつもの魔法空間

ここには、意識だけが飛ばされる

そこにある大きな両開きの扉から、 空間の外へ出た

真冬

っ……!!

ここは魔法界

ノアさん達オルコット家が 治めている、現実世界とは 別の時空にある小さな世界

あの扉を抜けて魔法界に来ると、 自分の身体が現世から転送されて、 世界を一望できる場所に出る

だけど今日は、いつもの 平和な魔法界じゃない

ここにいるはずのない闇生物や 闇使い達で溢れ返った、異常な 光景が広がっていた

こんなあり得ない光景を、 僕は一度、見たことがある

──2年前の、“闇使い侵入事件”

僕とそらるさんは、 昔もここで戦ったんだ

真冬

ぼーっとしてる場合じゃないっ……!

そらるさんはここに来てたから、 既に中心部にいるはず

僕も急がなきゃ……!!

真冬

“氷翼(アイスウィング)”!

そう唱えると、僕の背中に、 氷でできた翼が造られていく

行くなら、出来るだけ早く 着いたほうがいい

目的地は、さっきの伝達通り中心部

ノアさんのいる魔法界の心臓部分だ

そこは日本で例えるなら、三権分立 全てが揃ったような、一番大切な場所

そして上位使いは、その場所を 死守しないといけない

最高速度で飛んで、 すぐに建物の近くに降り立つ

入り口付近まで来ると、現世の 上位使いらしき人や、魔法界の 使い達が沢山集まっていた

落ち着いているところを見る限り、 闇使い達はまだ、ここまで 到達していないらしい

辺りを見回しながら歩いていくと、 見覚えのある後ろ姿を見つけた

真冬

そらるさん!

彼方

っ、まふまふ

僕が名前を呼ぶと、少し肩を ビクリと揺らしつつ、こちらを 振り返ったそらるさん

表情も、少し曇っている

今のそらるさんは、6年も 使いをやっているベテランで、 現世使いの中では最強だと 言われているほどの実力者

何もない限り、 彼が死ぬようなことはない

なのに、そらるさんのこの反応

……それもそのはずだ

──そらるさんは一度、この場所で 殺されかけているんだから

真冬

(今こうして生きてるから、本当に死ぬってことはなかったけど……)

……あれは、僕にとってもトラウマだ

真冬

っ大丈夫ですよ。ほら、2年前と違って上位使いもいっぱいいるじゃないですか!

真冬

それに、僕も上位使いになったんですよ?

上擦る声を抑えて、暗い顔の そらるさんを励まそうと、声をかける

彼方

……ふっ、お前に元気付けられたくねーよ

すると、そらるさんが いつもの笑顔を見せてくれた

彼方

けど、1人なのによく来れたな、ここまで

それは、“もう一度この場所に”って 意味なのか、“そらるさんの近くまで” って意味なのか

この言葉が、どっちの意味でも……

真冬

そりゃ来れますよ。僕、昔以上に頑張ってきたんですから

ノアさんにも、マフユは強いよって 言ってもらえるくらいなんだ

真冬

それに僕は、1人じゃないです

使いを始めた時から……いや、 それよりも前から、そらるさんとは ずっと一緒だった

彼方

たしかに

そらるさんがいたから、 僕は頑張れたんだ

今日くらいは自信を持って、 自分の使命をやり遂げよう

真冬

あれ、そういえば天ちゃんは……

今はそらるさんだけじゃなく、 もう1人、心強い仲間がいる

その肝心の3人目が 見当たらないけど……

彼方

……天月なら、他のとこにいるだろ。あいつが上位使いとは聞いてないし

言われてみれば、たしかにそうだ

いつもの戦いで、普通に僕らと 連携を取れていたし、十分強いから、 てっきり天ちゃんも上位使いだと 思ってたけど……

……って、あれ? あの少し 遠くにいる、こっちに向かって きてる人って……

真冬

天ちゃん!

僕からも駆け寄って、彼のそばに行く

翔太

ま、ふくん……?

真冬

うん。って、どうしたの? 大丈夫?

何故か、足元がおぼつかなくて、 ふらふらしている天ちゃん

特に目立った怪我もしてないし、 あっちで戦っていたわけでは なさそうだけど……

彼方

天月……!?

僕の後ろから、そらるさんも来た

こっちはこっちで、何故か ひどく驚いた顔をしている

翔太

はあっ、はあっ……2人、とも……

真冬

うん、何?

天ちゃんの体を 支えてあげながら、話を聞く

翔太

っ……ごめんなさい……僕、2人にずっと、嘘ついてたっ……!

嘘……?

真冬

それってどういう……──っ!?

顔を上げた天ちゃんは、 ポツリポツリと涙を流していた

しかも、眼の色が赤い

魔力がないと居られない魔法界では、 使いは無条件で眼色が変わる

天ちゃんは、黄色眼だったはずなのに ……って、あ、あれ?

さっきまで赤かったはずの両眼。 なのに、右目が黄色くなり始めていた

翔太

っ……お願い……“俺”を、助けて……

真冬

えっ、天ちゃ……わっ!?

直後、天ちゃんの姿が消える

でも、瞬間移動を 使ったようには見えなかった

真冬

(“俺を助けて”って……?)

彼方

まふまふ、来るぞ!!

そらるさんの声でハッとする

周りを見ると、もう闇使い達が すぐ近くまで迫ってきていた

真冬

(天ちゃんのことも、気になるけどっ……)

今はまず、目の前のことに 集中しなきゃ……!!

魔法使いは何を唱う?

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130

コメント

4

ユーザー

“あの事件”ってそう言うことか… あまちゃんの一人称が「僕」と「俺」になってる…atrの2人助けてあげて!!( 」゚Д゚)」 でもまふくんも強くなったしだ、大丈夫だよね…(((゚Д゚)))ガタガタ

ユーザー

ん?…え?あまちゃんの一人称が 『僕』と『俺』があることが 気になってたけどもしかして……? あまちゃん辛そう…そらまふ、救ってあげて… まだ、あまちゃんには謎が残ってるけど… そしてあんな強いそらるさんでも そんなことがあったなんて…相当 やばくないか…?怖いよね…でも!!!! 今はまふくんもいるし、昔よりは 全然強くなったし、大丈夫だよね??? 続き楽しみにしています!!!!!!!

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