ﾀﾞｯﾀﾞｯﾀﾞｯ…！

俺は、猛ダッシュした…！

もう少しで病院に着く

あと少しで、瞳に会える…！

なんでだろう…？

莉乃は面会謝絶だと言っていたのに

受付の人の言い方はまるで…

会ってもいいけれど会わないほうが いいと警告しているようだ…

瞳が！？

俺に、会いたい…！？

今すぐ行く！！

やっと瞳に会える…！

急いで向かおう！！

ー・・・ー

ｶﾞﾁｬｯ…！

瞳の病室に入った

嘘だろ…？

まさか瞳、俺のことを

ー忘れてしまった…？ー

瞳が目を伏せる

悲しそうに、儚く…

あれ？名前は覚えてるんだ…

瞳に悲しそうな顔させたくない

だから、思いっきり笑って…

と聞いた

日記…！？

あ、そういえば…！

2回目のお見舞いの時に 瞳が言っていた

あの日記なのか…！？

ー日記ー 笹野　瞳

ー入院1日目(2日目に書いた)ー

私は脳系の病気にかかってしまった

どんどん思い出が消えてしまうらしい

でも、私は

思い出が消えるなんて嫌

鮮やかな思い出を

幸せな日々を

ずっとずっと、覚えていたい！

そのために、日記を書く

私は、病気なんかに負けない！

ー入院2日目ー

今日は、海斗と莉乃と敦が お見舞いに来てくれた

すごくすごく嬉しかった

海斗は、何かを言いかけた

「す」って言った

もしも海斗の言いたかったことが

「好き」の2文字だったら

私はすごくすごく嬉しい…！

莉乃と敦も元気そうで、

みんないつも通りに接してくれた

それが嬉しい

たとえ、長くは続かない幸せでも

今日私はたしかに幸せだった

ー入院3日目ー

今日は、海斗を中心にみんなが 4人でどっか行こうと言ってくれた

嬉しかった

だから私は、 夏祭りに行きたいと言った

そしたら、海斗の顔が曇った

なんでそんな顔をしているのか だいたい予想はついた

嫌な予感がするんだと思う

海斗の嫌な予感は昔から当たるから 心配しているんだと思う

でも、私は

今なら何でもできる気がする

海斗、私、莉乃、敦がそろえば 無敵な気がする

でも、なんだかちょつと変…

治療が始まってから、 なんだか記憶が抜けていっている

まるで、抜け殻みたい…

でも、私は病気なんかに負けない！

なんてウソだ…

思い出せない

かろうじて莉乃と敦は思い出せた

なのに

海斗だけ思い出せない…

もう日記を書くなんて嫌

思い出が消えていることを 実感させられるだけだ

だから、今日で日記をやめる

瞳は、辛かったんだな…

だんだん思い出が消えていく

口で言うのは簡単だけど、

それがどれほど辛いものなのか…

考えると胸が痛くなった

泣きそうだ

でも、瞳の前だから絶対泣かね〜！

ドアを開けて出る時に言った

瞳はただ、不思議そうに目を丸くした…

ー・・・ー

瞳の日記

瞳の笑顔

幸せだった日々

また、見たい…

ー瞳の笑顔をー

そして、

ー瞳とくだらない話をしたいー

ー・・・ー