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あくねこ 夢 雰囲気暗め

あくねこ 夢 雰囲気暗め

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11

ナック・シュタイン3

♥

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2024年02月11日

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デビルズパレス 主の部屋

ナック

失礼いたします

そう言って

花を手折るような丁寧な手つきで

お姫様抱っこで運ばれたわたしは

そっとベットに降ろされた

((いつからだろう…

((眠れないときにナックの傍に行くようになったのは

わたしは無抵抗に

彼が布団をかけてくれるのを眺めていた

((いつからだろう

((お姉ちゃんのことを「あの人」なんて

((他人みたいに呼ぶようになったのは

耳元にドクンドクンと

生を叫ぶ音が響く

………

ナック

主様

ナック

どうかなさいましたか?

心配そうに顔を歪めた彼が

こちらをのぞきこむ

ナック

主様…?

わたしを呼ぶ口元を見たら

その口に触れた体温と柔らかさで

頭が

いっぱいになる

……っ

ナック

っ!

ナック

あるじ…

違う

ナック

っ!

彼の言葉をさえぎるように

わたしは言った

……っ

本当は…違うでしょ…

ナック

…………

涙が溢れて

顔が熱くて

鼓動がどんどんはやくなっていって

そして

……っ……っ…

頭の中を埋め尽くす

キスをしたあとの

とても寂しそうな微笑み

あなたのせいじゃない…

その笑顔は

飽きるほど見た

そして

見ないふりをしてきた

お姉ちゃんがいなくなったのは

私のせいだ…

ナック

それは違います!

ナック

あれはわたしの…

違う!

もう、嘘をつかないで

その日

心配する姉を放って わたしはナックと2人で街に行った

そのとき

けたたましく鳴り響く警音とともに

強い光を纏った天使が現れた

それは相当な強さの天使で

悪魔を解放出来ないわたしは

ボロボロになりながら必死に戦う彼を 見ていることしかできなかった

そして一瞬の隙をついて 天使の攻撃がわたしに放たれた時

駆けつけた姉がわたしの背を押した

ずっと

頭から離れない

目がくらむような光の渦に 飲み込まれていく姉は

とっても寂しそうに笑っていた

つらいことは全部忘れたいのに

伝えそこなったものが

ずっとずっと…

胸に詰まって、苦しいよ…

ナック

っ…

っ!

雪崩のように

溢れて止まらないわたしの言葉を 食むように

彼はわたしに唇を重ねた

((やめて…

ナック

主様…

((嫌だ…

ナック

主様

ぬくもりが消えたあとに触れる空気は

冷たくてしかたない

ナック

あなたのせいでは

ナック

決してございません

…ナック

ナック

わたしが未熟だったのです

ナック

弱く不甲斐ないわたしのせいで

ナック

あの方を失い、

ナック

あなた様をずっと苦しめてしまっているのです

…ナック…っ

((違う…

((またそんな嘘をついて

ナック

ですからどうか

ナック

わたしをあなたのお傍にいさせてください

((本当は…

((ずっと苦しんでるのは…

((ナックの方だって分かってる

ナック

先代主様との約束を果たせなかったわたしにとって

ナック

あなた様が生きる意味なのです

((でも…

……好き

ナック

っ!

あなたのことが…

ずっと…好きなの…

ナック

………

彼はそっと

わたしの涙を指先ですくいとった

それはまるで

蝶の羽に触れるような繊細な仕草だった

ナック

わたしの麗しい主様

ナック

なにをそんなに悲しむ必要がございましょうか

最上級のシルクのようになめらかな声が

ナック

恐れながらわたしも

ナック

主様と同じ気持ちでございます

甘い言葉に嘘を溶かす

((なんであのときわたしを助けたの…

……うれしい…

((いつもそう

((自分のことよりもわたしを優先して

((ボロボロになって

青と赤の瞳が三日月のように細められ

わたしは縋るように腕を伸ばす

((最後まで無理して笑ってた

愛しいぬくもりを感じながら

それが去ったあとの冷たさを 考えてしまう

ナック

主様…

ナック

わたしがあなたを照らす炎となります

ナック

ですから

ナック

嬉しいときも、寂しいときも

ナック

わたしがあなたをお守りいたします

見上げた彼の

頬に手を添えて

花を愛でるようにその古傷をなでた

うん

ずっとずっと

…そばにいてね

嘘でもいいよ

わたしを見てなくてもいい

わたしとの約束は

破らないでね

1年前

デビルズパレス 食堂

???

あらあら

???

お邪魔だったかしら?

その言葉とは裏腹に

そのお方は楽しそうな笑顔を浮かべて

定位置の席に着いた

ナック

主様

ナック

とんでもございませんよ

わたしは席から立ち

彼女の来訪を迎えた

ナック

なにかお飲み物でも

ナック

お持ちしますか?

先代主

大丈夫よ

先代主

ちょっと覗きに来ただけ

先代主

すぐに部屋に戻るから

ナック

かしこまりました

先代主

ほら

先代主

座って

ナック

はい失礼いたします

主様は隣に視線を移す

先代主

よかった

先代主

ちゃんと寝れてるみたいね

そこには静かな寝息をたてるお嬢様が 座っていた

腕を組んで頭を埋めているお嬢様を

主様が優しく撫でる

艶のある黒髪がそれを無抵抗に 受け止める

先代主

ふふ

ナック

どうかされましたか?

先代主

もしこの子が起きていたら

先代主

この手は拒まれてしまうなと思ってね

ナック

……

主様の微笑む瞳には

溢れんばかりの慈愛が滲んでいる

しかしお嬢様はそれを決して 受け入れようとしない

ナック

お嬢様は

ナック

主様のことをとても慕っておられます

先代主

……

ナック

ただ

ナック

その気持ちをどう伝えたら良いのか

ナック

迷っていらっしゃるように見えます

先代主

私はこの子に安心して誰かに甘えられる環境を

先代主

与えてあげられなかった

先代主

だから嫌われても仕方ないって思ってるのよ

ナック

主様…

主様たちが初めてこの屋敷に いらっしゃった日は鮮明に覚えている

腕や顔にあったいくつもの痣と 光のない怯えた瞳

長い間虐げられてきたであろうその姿に

服の下に隠した古傷が痛んだ

ナック

ご自分を責めるのはおやめ下さい

ナック

あなたが大切に守ってきたからこそ

ナック

お嬢様がいるのです

ナック

主様は本当によく頑張っておられます

ナック

それはお嬢様もちゃんと分かっておられます

先代主

ナック…

先代主

うん

先代主

ありがとう

主様は瞳の端に滲んだ涙を

しなやかな指先で隠すように拭き取った

先代主

この子が眠れない時に

先代主

あなたのところに行く理由が分かったわ

ナック

わたしはなにもしていませんよ

ナック

ただ取り留めのない話をするばかりです

先代主

もう!

先代主

またそんな謙遜して!

主様は少し頬を膨らませた

先代主

そんなに遠慮ばかりしていると

先代主

大切なものまで逃してしまうわよ?

その怒る姿がかわいらしく

つい、笑みが零れてしまう

ナック

フフッ

ナック

ご心配には及びませんよ

先代主

あら

先代主

ずいぶん自信満々じゃない

ナック

えぇ

ナック

大切なお方は

ナック

花を愛でるように

ナック

蝶を慈しむように

ナック

誰よりも優しく

ナック

わたしが命をかけて生涯お守りいたしますので

わたしは心からの思いをこめて

胸に手を添え、礼をした

先代主

ふふ

先代主

本当に

先代主

あなたはキザなセリフが似合うわね

いつものように笑う主様

ナック

お褒めに預かり

ナック

光栄でございます

しかし、その頬は

先代主

期待してるわね

春を彩る桜のように

愛らしく染まっていた

先代主

でもね、私だって

先代主

あなたたちを守るわ

ナック

わたしたちを?

先代主

そう

先代主

この子も、悪魔執事たちもみんな私にとって大切な存在だもの

ナック

主様…

先代主

ナックが前に話してくれたでしょう?
あなたの過去の話

ナック

えぇ…

先代主

その時に思ったの

先代主

あなたが誰かを守るという選択肢をとったなら

先代主

そんなあなたを支えるのが、主の私の仕事だって

ナック

っ…

ナック

フフッ…

ナック

守るという言葉をかけていただいたのは

ナック

人生で初めてです

じわりと

胸に温かいものが込み上げてくる

先代主

嬉しいときもつらい時も

先代主

わたしが守る

主様は身を乗り出し

片手を私の頬に添えて

いつのまにか零れていたわたしの涙を そっとすくった

先代主

だから

先代主

私の大切なものを一緒に守ってちょうだい

ナック

…もちろんでございます

触れられた手のぬくもりが

頬の古傷を優しく包む

先代主

ふふ

先代主

約束よ

これまで見てきたどんなに美しい花も 決してかなうことはできない

ナック

はい

ナック

約束です

主様の笑顔は

そんな愛しさを感じさせた

あくねこ 夢 雰囲気暗め

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