目が覚めると、そこはなにもない場所だった。

闇か光か、そんなものすらない。

そこにぼんやりと立っているだけの状況で、

俺はようやく理解した。

覚えているのは、勤めている工場の機械点検中

突然動き出した機械に巻き込まれて、体が引きちぎられた事だった。

死ってのは便利なもんだ。

体は全部いつも通りだし、血のあともない。

まぁ、死んでまで痛みがあったら最悪だよな。

でもだったら、よくホラー映画で見る欠損した幽霊とかどうなんだろう

しょせんフィクションってことなんだろうか。

そんな事を考えていた時だった。

チャラリラッタラルラル♪

リラリラッタチャラリラ♪

輝くミラーボール

あの世とは思えない音楽

そしてその中で、明らかに変なおっさんが踊っていた。

祈りを込めてスマホをタップする。

周囲がグルグル回りながら色を変えていき、やがてまぶしく光を放つ。

目の前に開いた13個のボール。

それを見て、閻魔様はにっこりと目を細めた。

サラリーマン、売れない画家

生涯フリーター、銀行員

ずらっと並んだ人生にめまいがする。

その中でひときわ、やけに輝くものがあった。

ゴクリと唾を飲み込み、一枚のカードに手を伸ばす。

その瞬間、それは大きな鉄の扉に変わり、

俺は知らず、そこから続く長い道へと足を踏み入れていた。

14年後