ホウフク少女　~劇場型復讐劇~

第4話

ホウフク少女

100

2020年12月13日

#劇場型犯罪

#少女

#復讐劇

#ミステリー

#サイコパス

少浜芥

キライちゃん

それとも怖くてできないの？

キョウコ

どうすればいいの

キライちゃん

流石キョウコちゃん

キライちゃん

そうこなくっちゃね！

キライちゃん

詳しく説明するよ

キョウコ

ありがとう

キライちゃん

日時　〇〇月〇〇日(金)
(18:00開始19:00終了)
対象　子犬

場所　自室　
※備考：カーテンは閉める

凶器　縄(17:30頃に配達される)
　
支給　縄，レジャーシート，
　　　ビニール袋，紙袋

条件制服を着た状態で殺すこと

キライちゃん

実行は明日だね

キライちゃん

ここまでで何か質問ある？

キョウコ

いろいろ聞きたいことがあるけど…

キョウコ

『配達される』って

キョウコ

どういう意味？

キライちゃん

そのままだよ

キョウコ

住所…知ってるの…？

キライちゃん

まあね

キョウコ

気持ち悪い…

キライちゃん

悪用するつもりはないよ

キライちゃん

信用して

キョウコ

…信用なんかできない

キライちゃん

ん〜

キョウコ

でも宅配便ってことは

キョウコ

あなたの住所も私にバレるから都合悪くない？

キライちゃん

誰も宅配便に頼むなんて言ってないよ！

キョウコ

え？

キライちゃん

ワタシのオトモダチに届けてきてもらうの

キョウコ

オトモダチ？

キライちゃん

そうそう！

キライちゃん

ワタシは優しいからね

キライちゃん

残念なオトモダチも見捨てないで

キライちゃん

雇ってあげてるの！

キョウコ

…よくわからないけど

キョウコ

仲間がいるのね

キライちゃん

仲間っていうか〜

キライちゃん

…ま、会えばなんとなく察するんじゃない？

キョウコ

…相変わらず言い方が不気味だね

キョウコ

それにあなたの正体も分からずじまいだし

キライちゃん

不気味なんかじゃないよ〜

キライちゃん

キライちゃんは天才なの！

キョウコ

天災の間違いでしょ…

キライちゃん

…他に質問はない？

キョウコ

縄はわかるとして

キョウコ

残りの支給品はなにに使うの？

キライちゃん

証拠隠滅に使うよ！

キライちゃん

殺すときに

キライちゃん

きっとものすごく暴れると思うから

キライちゃん

これがあれば毛とか落ちても掃除が楽でしょ？

キョウコ

意外と親切設計…

キライちゃん

ビニール袋は

キライちゃん

死体を入れるためだよ

キライちゃん

時間が経つと内容物が出てくる場合があるよ

キライちゃん

だからビニール袋にいれようね！

キョウコ

うわぁ…

キライちゃん

何重にも重ねて紙袋にインしよう

キライちゃん

で、次の日指定した場所に埋めて

キョウコ

公園のゴミ箱とかじゃダメなの？

キョウコ

においが漏れたりする？

キライちゃん

意外と確認してるんだよ…掃除の人がね

キョウコ

ゴミを漁ってるみたいでやだね

キライちゃん

キモいよね〜

キョウコ

そこまでは言ってないけど…

キライちゃん

…じゃあもう質問締め切るよ〜

キョウコ

待って

キョウコ

『条件制服を着た状態で殺すこと』って？

キライちゃん

ああ

キライちゃん

それね

キライちゃん

そのままの意味だよ

キライちゃん

ワタシが前に『スケールのデカイことがしたい』って言ったの

キライちゃん

覚えてるかな？

キョウコ

うん

キョウコ

確かその第1号が私なんでしょ？

キライちゃん

そうそう！

キライちゃん

昔は完全犯罪を狙って

キライちゃん

被害者たちと活動してたの

キライちゃん

証拠を隠して…隠して…

キライちゃん

最初のうちはそれも楽しかったけど

キライちゃん

もっとドキドキしてキュンキュンすることをやりたい！

キライちゃん

そう思うようになったの

キライちゃん

そこで私が考えたのは…

キライちゃん

劇場型犯罪

キョウコ

なにそれ

キライちゃん

簡単に言うと

キライちゃん

犯人が劇の主人公で

キライちゃん

警察みたいな人たちは脇役

キライちゃん

それを取り巻く世間が舞台

キライちゃん

…そして一般人やメディアは観客

キライちゃん

犯人はイニシャルなどの証拠を残したり

キライちゃん

警察に犯行声明を送りつける

キライちゃん

しかし警察は犯人をなかなか捕まえられない

キライちゃん

この駆け引きが最高にワクワクしちゃう！

キョウコ

劇的だね

キライちゃん

観客たちも思わずエキサイト！

キライちゃん

なんてドラマティックで素敵なんだろう…

キライちゃん

キミには同一人物の犯行だと分かるような

キライちゃん

シルシを残しつつ

キライちゃん

完全犯罪をやり遂げてもらうの！

キョウコ

えっ…

キライちゃん

ワタシの思い描く主人公、

キライちゃん

"ホウフク少女"は…

キライちゃん

犯行に及ぶときに必ず制服姿なの

キライちゃん

復讐心が募ったのは学校だった

キライちゃん

だから負の記憶を持つ制服姿を

キライちゃん

あえて自分である証明として掲げるの！

キライちゃん

復讐の象徴みたいな？

キライちゃん

そして負の記憶を塗り替るために戦い続ける

キョウコ

人の不幸を物語のダシにしないで

キョウコ

というか制服着てたら身許バレちゃうよ

キライちゃん

大丈夫

キライちゃん

制服姿だと知ることになるのは

キライちゃん

ターゲットだけだから

キライちゃん

世間には出回らない情報ってわけ

キョウコ

じゃあ私っていうシルシ？として意味ないじゃん

キライちゃん

これは単に主人公役の設定みたいなもの

キライちゃん

…それに、キミの言った通り

キライちゃん

制服着てたほうが大胆な行動に出づらくて

キライちゃん

スリルがあるでしょ？

キライちゃん

ワタシはプロだからさ〜

キライちゃん

これぐらいハンデがないと

キライちゃん

ポリスメンが可哀想だし〜

キョウコ

あなたの気持ちがよくわからない…

キライちゃん

ちなみに

キライちゃん

ちゃんと世間に出回らせるシルシもあるよ

キライちゃん

それは今度説明するね！

キライちゃん

今回は躊躇いをなくすための練習だから

キライちゃん

"ホウフク少女"のデビュー戦じゃないの！

キライちゃん

制服は一応着てもらうけどね

キョウコ

つまり？

キライちゃん

あなたはまだホウフク少女ではないから

キライちゃん

わざとキミのシルシを残す必要はない

キョウコ

まあそうだよね

キョウコ

だって私の飼ってる犬だし

キョウコ

明らかに人間が殺した痕があれば

キョウコ

真っ先に私が疑われる

キライちゃん

う〜ん…

キョウコ

ちょっと待って

キョウコ

学校のやつを殺したら…

キョウコ

いじめられっ子の私が疑われたりしない？

キライちゃん

落ち着いてよ

キライちゃん

まずは目の前のことに集中してね

キョウコ

そうだね…

キョウコ

それに人を殺すなんて実感わかないし

キライちゃん

だからまずは身近なか弱い動物で

キライちゃん

練習するんでしょ？

キライちゃん

実行は明日だよ

キライちゃん

できる？

キョウコ

大丈夫だよ

キョウコ

父さんはいつも帰りが遅いから

キョウコ

きっとバレずに完遂できる

キョウコ

子犬の居場所を聞かれたら

キョウコ

返してきたって言えば喜ぶよね

キライちゃん

いいんじゃない？

キライちゃん

それじゃ

キライちゃん

頑張って！

次の日

キョウコ

ただいま

キライちゃん

おかえり

キライちゃん

遅かったね

キョウコ

…ちょっとね

キョウコ

いろいろあってさ

キライちゃん

？

キョウコ

…そういえば玄関に段ボールがあったよ

キライちゃん

オトモダチと入れ違いになったんだね

キライちゃん

それが支給品だよ！

キライちゃん

さあ、さっさと準備して殺しちゃってね

キョウコ

…わかった

キライちゃん

これが終わったら次のステップに進むよ！

キライちゃん

どんどん人間を殺すことに

キライちゃん

躊躇いを感じなくなっていってね！

キョウコ

ねえ

キライちゃん

ん？

キョウコ

次のターゲットは

キョウコ

人間じゃだめかな

キライちゃん

…急にどうしたの？

キョウコ

別に

キョウコ

あなたもその方が都合がいいでしょ？

キライちゃん

まぁそうだね

キライちゃん

でもあんなに嫌がってたのにどうしたの？

キョウコ

…とりあえず

キョウコ

今は練習を終わらせてくる

キライちゃん

あぁ、そう…？

キョウコ

……いってきます

キライちゃん

…いってらっしゃい？

自室にて

キョウコ

(昨日の会話も見直したし…)

キョウコ

(これで手順はバッチリ…のはず)

子犬

きゃんきゃん！

キョウコ

わっ！びっくりしたじゃない

キョウコ

いきなり吠えないでよ…

子犬

きゃん！

キョウコ

ふふっ

キョウコ

分からないよね

キョウコ

今からアンタは死ぬんだよ

子犬

？

キョウコ

アンタの一生は

キョウコ

とても短かったね…

キョウコ

…さ、こっちにおいで

キョウコ

そこのレジャーシートの上に乗ってね

子犬

きゃんきゃん！

キョウコ

…そういえば名前すら決めてなかったね

キョウコ

ごめんね…

キョウコ

アンタは悪くないのにね

キョウコ

産まれたのが間違いだったみたいに

キョウコ

ぞんざいな扱いを受け続けたんだよね…

キョウコ

私、犬は嫌い

キョウコ

でも

キョウコ

人間はもっとキライ

キョウコ

だって…

キョウコ

何もしてないアンタを…私を…

キョウコ

要らないみたいに嫌うから

キョウコ

でも私も人間なんだ…

キョウコ

何も抵抗できない"弱い"アンタを

キョウコ

身勝手な理由で

キョウコ

傷つけて…

キョウコ

終わらせて…

キョウコ

それで前に進めるのがとっても

キョウコ

たのしい

ｷﾞﾁｷﾞﾁｷﾞﾁｷﾞﾁ…

………

初めて自らの手で殺意を持って動物を殺しました。

ギチギチギチと締まる縄…

苦しみ喘いだ弱者の声が

まるで命乞いをするかのように無様で…

アイツらとは違うという私のプライドが

女々しく隠し持っていた気高さが…

大きな音を立てて剥がれ落ちるのを感じました。

…。

…そうですね。わかっています。

今日は彼女との出会いからここまでお話ししました。

ありがとうございます…。

それでは続きはまた明日。

ホウフク少女　~劇場型復讐劇~

作品ページ

次の話を読む

この作品はいかがでしたか？

100

0件

👏 最初のコメントを書いて作者に喜んでもらおう！

少浜芥

プロフィール

電車の中でも寝る前のベッドの中でもサクサク快適に。
もっと読みたい！がどんどんみつかる。
「読んで」「書いて」毎日が楽しくなる小説アプリをダウンロードしよう。