ドチャッ！

転がり出ていたそれは、視神経のついた眼球だった

腰が抜け、枯れ葉が大きく鳴る

思いがけない知人の登場に、白壁の全身から力が抜けた

苦笑して頬を掻き、恐らく鹿かなにかを解体しているのだと納得した

バスに上がった白壁は、それきり言葉を失った

中にあるランタンの光が鮮烈な赤を見せる

見えたのは、黄色い脂肪と血にまみれた、人間の死体だった

階段から転がり落ち、頭を打っても、恐怖はやまなかった

びちゃびちゃびちゃっ

嘔吐しながら、近付こうとする玄迫を手だけで牽制する

笑いながら目だけは強い怒りを湛えた玄迫に、白壁は怖じ気づいた

呼びかけに笑顔を見せた玄迫に、次の瞬間、白壁は逃げ出していた

ガチガチと歯を鳴らし、頭から布団を被って恐怖に耐える

むくりと起き上がり、スマートフォンを見る

ホーム画面には緊急通報ボタンが表示されていた

翌朝

戸惑いと憤慨が入り交じった複雑な気持ちながらも、仕事にかかる

…その考えが止まったのは、終業後だ

夕刻

白壁は頭を抱え、書棚に隠れて玄迫を見る

しばし頭を捻ったあと、白壁は挑むように玄迫を見た

その言葉に一瞬の沈黙が落ち、やがて

響いたのは、弾けるような笑う声だった