夏海 狩香
私の母の名前である
母は1年前
職場の火事事件で亡くなってしまった
その日から私の人生は
モノクロになってしまった
いつも通りの朝
いつも通りの天気
亡くなった母の写真に挨拶をして
家を出て
電車に乗る
空は、夏だと暗示するかのような 青空だった
つまらない毎日──
だった
あの日から、"ある人"に会った日から
私の人生が変わった
スマホを開いて、"ある人"との 個人チャットを開く
すると、1件のメッセージが 届いていた
私は少し、安心した
蒼くん
それを見て、私も返信する
Suzuka
彼の名は野上蒼くん
蒼くんからLINEのIDを教えてくれて
彼のおかげで私は救われている
蒼くんとは同じ学校の 同じクラスだけど
1度も目を見て話したことがない
蒼くんは人気者だから近寄れないし
近寄ればファンの人に目をつけられて
私の身に危険が及ぶ
だから、こうしてLINEだけで やりとりしている
でも、みんなに囲まれている 蒼くんと話せたら
きっと幸せなんだろうな
夏海 鈴香
そう言った瞬間、スマホが鳴った
スマホを開くと、
蒼くん
!!!
えっ、どういうこと!?
後ろを見ると、私に向けて ウィンクをする蒼くんがいたのだ!
でも、周りに誰がいるのか 分からない今
話すわけにも行かず、 LINEで送り返した
Suzuka
蒼くん
私がLINEを送ると すぐに返信がくる
でも…だからなんで!?
蒼くんは、いつもこんな感じで 私をからかってくる
それがいつも困ってしまう
Suzuka
蒼くん
蒼くんはいつも笑顔で笑っていて
周りには取り巻きがいつもいる
私は少し羨ましかった
いつもひとりの私に比べたら 羨ましく思うのは当然だけど
でも私は、そのせいで蒼くんが 疲れているのをわかっていた
だから…
蒼くんとLINEで話すことも 控えるようにしている
電車を降りてホームに着くと
鳥谷 律
浪川 佳音
彼の取り巻きの2人の 鳥谷律くんと浪川佳音さんが
蒼くんに合流していた
鳥谷くんは、蒼くんと同じ サッカー部の人で、毎日一緒にいる
浪川さんは…
蒼くんとの元の関係は分からないけど
学校中の蒼くんと同じような人気者で 1番の美人さんと言われている
蒼くんには他にももっとたくさんの
そしてこの学校の中心たる取り巻きが 周りにいつもいる
それが、みんなが蒼くんを 高嶺の花だと思う理由
教室に入ると
さきに着いていた蒼くんがいて
周りにはたくさんの取り巻きがいる
私はその場を通り過ぎて 前の方の席に着く
すると
中辻 美桜菜
可愛い声で、中辻美桜菜ちゃんが 話しかけてくれた
美桜菜ちゃんは、学校で話せる 唯一の友達だった
明るくて楽しくて こんな私にも話しかけてくれた
とてもいい子だ
夏海 鈴香
中辻 美桜菜
夏海 鈴香
中辻 美桜菜
えっ…
ということは、
美桜菜ちゃんと 離れちゃうかもってこと?
私が落ち込んでいると、
中辻 美桜菜
中辻 美桜菜
と、励ましてくれた
夏海 鈴香
よかった…
またひとりぼっちになるんじゃないか
そう心配してたけど
する必要はなかったみたい
でも、
このあと 私にとっては最悪なことになる
そんな考えなんて
このときはなかった…