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テラーノベル(Teller Novel)

雨が降っていた。

空から溢れ出す雫は、地面に波紋を 作り続けている。

足元が跳ねる泥水で濡れてゆくのも 気に留めず

真波は傘をさしながらいつもの場所へ と走っていた。

駄菓子屋の屋根の下、目的の姿は そこにいた。

コンクリートの地面に腰を下ろし、 スマホを暇そうにいじっている。

真波

ごめん、遅くなって

美月

んーん、俺も
さっき来たところ

美月はスマホを触っていた手を止め

整った顔立ちで、白い歯を見せニカッと笑った。

俺もそれに笑い返し

傘を閉じて、美月の隣へと腰を おろした。

約束をしている訳ではないが、俺たちはそれぞれの学校が終わったあと

毎日この取り壊しが決められた 駄菓子屋の下に集まって

他愛のないことを駄弁るのが 日課となっていた。

何故学校の違う俺たちが仲が良いのか

その答えは単純なものだ。

俺と美月は小学生の頃家が隣同士で よく遊んでいた。

美月の家の引越しが決まり、家は 少し離れてしまったが

高校生になった今でも、こうして 遊んでいる。

美月は昔からクラスの人気者で

俺は昔から人見知りだった。

正反対だと思われた二人は、不思議と 気が合った。

…気が、合いすぎたのかもしれない。

いつからか、俺は

普通とは少し違った感情を抱いて しまっていた。

真波

俺、この雨が止んだら

真波

美月に告白しようと
思ってる

やっとの思いで、なんとか口にした その言葉に

美月は一瞬驚いたように目を見開き

そして視線をゆっくりと俺から 逸らした。

美月

…それ、もう
言っちゃってるじゃん

美月

ていうか、

美月

雨、…止むこと
ないんだし

この街は、いつも雨が 降っている。

俺が生まれる前からも、 俺が生まれてからも

ずっとずっと雨が降っている。

この街に晴れの日が来ることなんて ない。

そんな日が来るのだとしたら、それは もう奇跡に等しい。

ということは、俺にとってこいつに 告白するのは

それくらい革命的なもので

だからといって、この気持ちを伝えず

ずっとしまっておくのは辛いから

愛を込めて、だけど残酷に

君に伝えてしまった。

俺は本当にずるい奴だ。

美月

(…本当に、ずるい奴)

美月は心の内で、そうこぼした。

こいつは遠回しに伝えてきただけで

俺はまだ告白された訳じゃない。

嫌われることが怖いから、俺に何も言って欲しくないのだろう。

だから、俺もそれに応えることが 出来ない。

美月

(自分は気持ちを
伝えるくせに)

美月

(俺に返事はさせて
くれないんだね…)

真波

…もう今日は帰ろっか

真波

いつもより雨ひどいし、
風邪引くかも

真波は逃げるようにして立ち上がる。

続けて俺も立ち上がった。

が、このまま真波を帰す訳には いかない。

美月

真波、傘入れてよ

真波

はぁ?何でだよ

真波

お前傘持ってるだろ

美月

んーん。

美月

忘れた

真波

忘れた!?

真波

この街で傘忘れる奴
なんていないだろ!

真波

美月それ、
学校来てんのに

真波

勉強道具忘れたような
もんだぞ!

呆れるほどの間抜け顔でまくし立てる真波に

俺はふっと笑って畳み掛ける。

美月

真波と相合傘したくて

俺がそう口にした瞬間

真波は泣き疲れた子供のように、 すっと静かになった。

真波

…入れよ

真波はそっぽを向いたまま

傘をこちらにかかげてくれた。

美月

ありがと。

真っ赤になった真波を見て、 今日も味を占める

そんな俺もまた、ずるい奴だ。

俺たちは、革命的な何かが 起こらない限り

これ以上前に進めない。

だから神さま、願いが叶うのなら

美月

(どうか、)

真波

(どうか、)

この雨を晴らして下さい。

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コメント

27

ユーザー

もう好きすぎて好き…💕←語彙力どこいった() 止むことのない雨…🌧 晴れて告白することはできないけど、それでも伝えたいんだね…😢 とりあえずうちには何もできないから『この街がいつか晴れますよーに』ってお願いしとくか…🤔✨ 恥ずかしそうに相合傘に入れって言ってるの可愛い💕((ボソッ カサミネちゃんのBL大好き😁

ユーザー

あー!好き!!好きすぎて言葉が出ないです!!好きです!! てるてるぼうず100個くらい作ってやりたい…!!

ユーザー

表現力、雨の降り続く街という残酷な?(笑)設定、あり変わらず素晴らしいです😊

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