あれから1年と１０ヶ月

トントンの故郷である ザイズ国に着いた

壊れかけた真っ黒焦げな家、

微かに焦げ臭った匂いがする。 鼻を刺激臭が襲った。

どこからか子供の泣き声が 聞こえてくる

あっさりとした別れだが それでいい

いつか絶対に仲間にするんだからな

グルッペンはトントンの家を後にした

グルッペンさんとはもう、 会わないし会えない

グルッペンさんは遠くへ行くし 俺はここで母さんと暮らさないと、 …そうじゃないとダメだと思う

少し、寂しいかもしれない

…いや、

回想中 gr 「甘味が欲しいんじゃー！」 gr 「じゃあなトン助！ 　　　頑張って魔物に勝ってくれ！」 gr 「トントン、お前太ったか？」

トントンは眉間に皺を寄せながら きしむ自分の家のドアを開けた

そこには生きた母など 居ないというのに。

無惨な姿で横たわった女性は 間違いなくトントンの母親だった

周りに飛び散る赤黒い液体は いやでも最悪の想像を沸き立てた

目の前立っている銀髪の男が 持っている刃物は血濡れていた。

この男が、 トントンの母親を殺したのだ

トントンの声で振り返った男は 何か喚き散らした後、 トントンに飛びかかった

トントンは無意識で やっていたのだろうか

家の中で散らばった瓦礫の破片を掴み 男の心の臓に突き立てた

意識を取り戻したかのように ハッと息を吸った

男は死んだ

血が、そう教えるように流れ出る

夢は痛みがあれば目覚められる

夢から覚めたら、 元気な母さんが俺に、 ご飯を作ってくれているんだ きっと、そうなんだ

血の滲んだ手で再び瓦礫の破片を掴み それを自身の首に突き立てた