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実家の和室
汐梨
これ、こっちでいい？
お母さん
うん
汐梨
この部屋の整理って、何年してないの？
お母さん
おばあちゃんが亡くなってからだから、もう5年かな
汐梨
そっか、もうそんな経つんだね
汐梨
(そういえば、あの時…)
現在から5年前
おばあちゃんの病室
汐梨
おばあちゃん
おばあちゃん
汐梨、来てくれたんだね
汐梨
当たり前だよ
おばあちゃん
大きくなったね
汐梨
毎年会ってるじゃん笑
おばあちゃん
おばあちゃんにとっては、1年でも成長は早く感じるんだよ
汐梨
そう？
おばあちゃん
うん
汐梨
早く元気になってね
汐梨
また、皆でお正月おばあちゃん家行くから
おばあちゃん
そうだね
おばあちゃん
そうだ、汐梨
汐梨
何？
おばあちゃん
おばあちゃんが死んだら、あの人形探してね
汐梨
人形？
おばあちゃん
そう、汐梨が小さい頃くれた
現在
汐梨
(あの後、探したんだけど見つからなかったんだよな…)
汐梨
(どんな人形あげたんだっけ？)
お母さん
汐梨、そっちの押し入れお願いできる？
汐梨
あ、うん！
押し入れの扉を開けると…
汐梨
けほっけほっ
汐梨
埃すごいね
お母さん
5年間1度も開けてないからね
汐梨
(あ！確か、ここだけ探しそびれたんだ…)
現在から5年前
汐梨
(あれ、無いな…)
汐梨
(どこだろう)
ほとんどの押し入れを探し終わり、あと1ヶ所だけどなった時
汐梨
(よし、ここにあるはず)
お母さん
汐梨、ご飯作るの手伝って！
汐梨
はーい！
汐梨
(後で探すか)
現在
汐梨
(ご飯食べた後、探すのすっかり忘れてて…)
汐梨
(あるかな)
物を出していくと、小さな箱が出てきた
汐梨
この箱…
お母さん
どうかした？
汐梨
この箱、見覚えあるような気がして
現在から15年前
汐梨
おばあちゃん！
おばあちゃん
どうしたの？
汐梨
これ、汐梨が作ったの！
おばあちゃん
あらまあ、可愛い人形さんね
汐梨
あげる！
おばあちゃん
いいの？
汐梨
うん！
おばあちゃん
ありがとう
おばあちゃん
大切にするね
汐梨
あと、これ
おばあちゃん
何？これ
汐梨
お人形さんのお家！
汐梨
ここに入れておいてね！
おばあちゃん
ありがとう
現在
汐梨
(人形と一緒にあげたんだ)
箱を開けると…
汐梨
懐かしい…
お母さん
あら、本当ね
お母さん
おばあちゃん、それずっと大切にしてたんだよ
汐梨
そうなんだ
汐梨
こんな壊れやすそうな人形…
お母さん
もらってからしばらくは飾ってたんだけどね
お母さん
ある日、壊しそうになっちゃったみたいで
お母さん
その箱に大事そうにしまってたよ
汐梨
ふふっ
汐梨
あれ？
お母さん
うん？
汐梨
何だろう、これ
その箱には、人形と 見覚えのない封筒が入っていた
開けてみると…
現在から5年前
便箋に何かを書いているおばあちゃん
おばあちゃん
汐梨へ
おばあちゃん
汐梨、元気ですか？
おばあちゃん
この手紙を読んでいる頃にはおばあちゃんはもうこの世にいないでしょう。
おばあちゃん
おばあちゃんは、汐梨の成長を毎年見るのがとても楽しみでした。
おばあちゃん
年に1回しか会えないというわけではないけれど、汐梨が来ない時間がとても長く感じられて、1ヶ月会っていなかっただけでも汐梨が大きくなったように感じました。
おばあちゃん
汐梨がまだ小さかった頃、お人形さんをくれましたね。
おばあちゃん
それはそれは可愛らしいお人形さんで、おばあちゃんはとても嬉しかったです。
おばあちゃん
しばらく飾っていたけれど、お茶をこぼしてかけてしまいそうになったり、よろけた拍子にぶつかりそうになってしまったりしたから、汐梨がくれたお人形さんのお家に入れて押し入れにしまっておくことにしました。
おばあちゃん
そしたら汐梨、飾ってないのに気づいて怒ってしまってね。
現在から15年前
汐梨
おばあちゃん、何でお人形さんいなくなってるの？
おばあちゃん
それはね…
汐梨
失くしたの？
汐梨
おばあちゃん、ひどい！
おばあちゃん
あ、汐梨…
現在から5年前
おばあちゃん
あの時はごめんね。
おばあちゃん
おばあちゃん、上手く言えなくて。
おばあちゃん
でもその後すぐに許してくれて、おばあちゃん嬉しかったよ。
おばあちゃん
汐梨は優しい子だなと思って。
おばあちゃん
おばあちゃんにとって、あのお人形さんはとても大切でね。
おばあちゃん
だって、初めて汐梨にもらった物だったから。
おばあちゃん
だから、そのお人形さんと一緒にこの手紙を入れておくことにしたの。
おばあちゃん
その時のことを思い出して欲しくてね。
おばあちゃん
汐梨は大人になるにつれて、おばあちゃんのことを忘れていくだろうから。
おばあちゃん
おばあちゃんね、本当はもっと汐梨と一緒にいたかった。
おばあちゃん
汐梨が高校卒業して、大学行って卒業して、就職して、結婚して、子供を産んで。
おばあちゃん
汐梨の花嫁姿も曾孫の顔も見たかったけど、仕方ないね。
おばあちゃん
今、汐梨は何歳ですか？
おばあちゃん
何歳だとしても、幸せに過ごせてるといいな。
おばあちゃん
これからも幸せで健康に過ごしてください。
おばあちゃん
おばあちゃんは天国から見守っています。
おばあちゃん
おばあちゃんより
現在
汐梨
おばあちゃん…
お母さん
ねぇ、汐梨
お母さん
帰りにおばあちゃんのお墓、寄って行かない？
汐梨
うん、そうだね
おばあちゃんのお墓の前
汐梨
おばあちゃん
汐梨
ごめんね、人形のこと忘れてて
汐梨
でも、これからは忘れないよ
汐梨
もちろん、おばあちゃんのことは今までもこれからも絶対に忘れないからね
汐梨
私は、今度結婚することになったんだ
汐梨
今度、彼も連れて来るね
汐梨
曾孫も一緒に
お母さん
え？汐梨、子供できたの？
汐梨
うん
汐梨
今日はそれも伝えに来たんだ
お母さん
おめでとう！
お母さん
やだ、早く言ってよ
お母さん
言ってくれたら、部屋の整理手伝わせなかったのに…
汐梨
そのくらい大丈夫だって（笑）
汐梨
それに、手伝ったからおばあちゃんの手紙見つけられたわけだし
お母さん
確かにね
汐梨
お母さん、ありがとう
お母さん
どういたしまして（笑）
汐梨
おばあちゃんもありがとう
電車の中でも寝る前のベッドの中でもサクサク快適に。
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