群発性怪異

第2話

ある日常の風景

2023年02月23日

#ホラー

#ファンタジー

#一次創作

#ドラマ

重田💋（omoda）

キーンコーンカーンコーン

高校生Ａ

あ、次は古典だったか

ガラガラガラ

文・学（ふみの・まなぶ）先生

さて、今日は『平家物語』の続きをやっていくよ

文・学（ふみの・まなぶ）先生

ええっと、前回は本文を見たから、今日は訳をみていこうな

文・学（ふみの・まなぶ）先生

近衛天皇が御在位であったとき、仁平のころ、

文・学（ふみの・まなぶ）先生

つまり1151年から1154年の間だな

文・学（ふみの・まなぶ）先生

天皇がよなよな怯えなさることがあった

高校生Ａ

いきなり怯えだした！

文・学（ふみの・まなぶ）先生

本文は前回やったろ？

高校生Ａ

古典、意味分らん

高校生Ａ

本文を聞いても、何が何やら

文・学（ふみの・まなぶ）先生

ああそうかい

文・学（ふみの・まなぶ）先生

ちなみに、近衛天皇は1141年12月、わずか2歳で即位している

文・学（ふみの・まなぶ）先生

仁平のころだとまだ12歳から15歳といったところだ

高校生Ａ

若けえ！　俺らより年下じゃん

文・学（ふみの・まなぶ）先生

さて、天皇は加持や祈禱の出来る徳の高い僧や位の高い僧に仰せ付けて、

文・学（ふみの・まなぶ）先生

大法や秘法を行ったのだが、効果がなかった

高校生Ａ

病気の心配じゃないんだ？

文・学（ふみの・まなぶ）先生

この時代は、霊的なものが病気を起こすと考えられていたから、まず加持祈祷だね

文・学（ふみの・まなぶ）先生

それで丑の刻、つまり午前1時から午前3時ごろになると、

文・学（ふみの・まなぶ）先生

東三条の森の方から、一群の黒い雲がやってきて、

文・学（ふみの・まなぶ）先生

天皇が居住しておられる屋敷を覆うと、天王が必ず怯えなさった

文・学（ふみの・まなぶ）先生

そこで公卿たちが会議を開いた

高校生Ａ

対策会議みたいな？

文・学（ふみの・まなぶ）先生

まさにその通りだね

文・学（ふみの・まなぶ）先生

それで、昔同じようなことがあって、そのときは源義家を護衛につけてうまくいった

文・学（ふみの・まなぶ）先生

だから今回も武士を護衛につけよう、ということになった

文・学（ふみの・まなぶ）先生

昔の考え方の特徴として、

文・学（ふみの・まなぶ）先生

こういう例があるのでこうしようとか、そういう例がないのでやめようとか、

文・学（ふみの・まなぶ）先生

先例というのを非常に大切にしたんだ

高校生Ａ

へえ

文・学（ふみの・まなぶ）先生

そして、源氏、平家の精鋭たちの中から、源頼政が選ばれた

文・学（ふみの・まなぶ）先生

頼政は、「武士が朝廷に呼ばれるのは、朝廷に逆らったものに対処するときで、

文・学（ふみの・まなぶ）先生

目に見えない妖怪変化に対処しろというのは聞いたことがない」

文・学（ふみの・まなぶ）先生

と愚痴を言うんだが、まあ天皇の命令なので参上した

高校生Ａ

愚痴るんだ

文・学（ふみの・まなぶ）先生

まあ、得体のしれない怪物の相手をさせられるんだから、

文・学（ふみの・まなぶ）先生

文句の一つも言いたくなったのだろう

文・学（ふみの・まなぶ）先生

それで、源頼政は頼りにしている従者、遠江国の住人である

文・学（ふみの・まなぶ）先生

井早太（ゐのはやた）に矢を持たせ、たった一人だけ連れて、控えていた

高校生Ａ

井早太、何者？

文・学（ふみの・まなぶ）先生

詳しいことは分っていないが、

文・学（ふみの・まなぶ）先生

後に頼政が戦に敗れて自害したとき、首を持ち帰ったという伝承もある

文・学（ふみの・まなぶ）先生

さて、日頃人々が言っている通り、丑の刻になると

文・学（ふみの・まなぶ）先生

東三条の森の方から、黒い雲が一群れたち来たって、天皇のお屋敷の上に立ち込めた

文・学（ふみの・まなぶ）先生

源頼政がきっと見上げると、雲の中に怪しい物の姿があった

高校生Ａ

でた！

文・学（ふみの・まなぶ）先生

これを撃つのに失敗すれば、生きていられるとは思えなかったそうだ

文・学（ふみの・まなぶ）先生

それでも、矢をつがえ、「南無八幡大菩薩」と心の中で唱えながら、

文・学（ふみの・まなぶ）先生

強く引いてひゅっと射ると、手ごたえがあった

文・学（ふみの・まなぶ）先生

落ちてきた何物かに井早太がさっと駆け寄り、取り押さえ、

文・学（ふみの・まなぶ）先生

続けざまに9つに刀で裂いた

高校生Ａ

井早太、何者？

文・学（ふみの・まなぶ）先生

火をともして確認してみると、頭は猿、体は狸、尻尾は蛇、手足は虎の姿をしていた

文・学（ふみの・まなぶ）先生

そして鳴く声は鵺（ぬえ）に似ていたという

高校生Ａ

あれ？

高校生Ａ

その怪物が鵺なんじゃないの？

文・学（ふみの・まなぶ）先生

そこはいろいろあってね

文・学（ふみの・まなぶ）先生

とりあえず、鵺というのはトラツグミという鳥のことではないか、とされている

文・学（ふみの・まなぶ）先生

だから、この時点では、

文・学（ふみの・まなぶ）先生

この怪物は鵺ではなく、鵺の声でなく正体不明の怪物、ということになる

文・学（ふみの・まなぶ）先生

それでこの変化の者はうつほ舟に入れて流されたそうだ

文・学（ふみの・まなぶ）先生

これはまた別の話だけれど、

文・学（ふみの・まなぶ）先生

その鵺が流れ着き、祟りを恐れた地元の人によって埋められ、塚が作られたそうだ

高校生Ａ

地元の人、大迷惑

文・学（ふみの・まなぶ）先生

そのため大阪や兵庫には鵺塚と呼ばれる塚が実際にあるんだ

高校生Ａ

あるんだ！

文・学（ふみの・まなぶ）先生

大阪では明治時代に入って塚が取り壊されかけ、

文・学（ふみの・まなぶ）先生

鵺の怨霊が近くに住む人々を悩ませ、慌てて塚が修復されたなんて話もあるそうだ

文・学（ふみの・まなぶ）先生

鵺塚はそれ以外にも各地にあるから、案外この近くにもあったりしてね

高校生Ａ

うっかり壊すと、祟りがありそう

文・学（ふみの・まなぶ）先生

壊すなよ

高校生Ａ

やらねぇよ

キーンコーン、カーンコーン

文・学（ふみの・まなぶ）先生

おっと、授業はここまで。続きはまた今度

群発性怪異

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重田💋（omoda）

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