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【完結】便利屋・紫雲かぎり

【完結】便利屋・紫雲かぎり

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10

『忘れ物』

♥

40

2022年11月11日

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最初の印象は

しがないサラリーマンだった。

おっさん

ねぇ、君

おっさん

”ミトちゃん”でしょ?

篠崎 美兎花

…は?誰、あんた

おっさん

あ!やっぱりそうだ!

おっさん

写真より現物の方が可愛いね

篠崎 美兎花

……

篠崎 美兎花

(出会い系アプリ『ミルキーウェイ』に)

篠崎 美兎花

(”ミトちゃん”って名前で登録してたけど……)

おっさん

あれ?違った?

おっさん

このアカウントなんだけど

そう言って見せてきたスマホの画面には、

ミトちゃんとして登録したときの写真が表示されてた。

篠崎 美兎花

……そのアカウント

篠崎 美兎花

もう消したはずなんだけど

おっさん

ってことは

おっさん

もうパパ活してないってこと?

篠崎 美兎花

そういうこと

おっさん

ふぅん、そっか…

ミイナに連絡いれて、

待ち合わせ場所を変えることにした。

それなのに、

こいつはどこまでもついて来た。

篠崎 美兎花

どこまでついて来んの?

篠崎 美兎花

マジでうざいんだけど

篠崎 美兎花

警察呼ぶよ?

おっさん

警察呼ばれるのは困るなぁ

おっさん

だって、呼ばれたら

おっさん

ミトちゃんが補導されちゃうでしょ?

おっさん

未成年だから

篠崎 美兎花

(うっざっ)

思えばこのとき、

迷わず交番に行けばよかった。

今は、

そう後悔してる。

篠崎 美兎花

わかった

篠崎 美兎花

おっさんさぁ

篠崎 美兎花

私とヤリたいんでしょ

おっさん

えっ…

おっさん

な、なにをっ

篠崎 美兎花

だってさぁ

篠崎 美兎花

普通ここまで食い下がる?

おっさん

あ、いや、それは

篠崎 美兎花

でも、残念

篠崎 美兎花

さっきも言ったけど

篠崎 美兎花

私、もうパパ活してないから

篠崎 美兎花

幾ら積まれてもやんないよ

おっさん

……

篠崎 美兎花

え、なに

いきなり腕を掴まれて

それでヤバいって思った。

篠崎 美兎花

離してよ

篠崎 美兎花

私が叫んだら

篠崎 美兎花

あんたの人生、一発で終わるよ?

おっさん

痛い目に遭いたくなかったら

おっさん

黙れ

おっさんがポケットから取り出したのは

折りたたみ式のナイフだった。

篠崎 美兎花

……

おっさん

良い子だね、ミトちゃんは

おっさん

さぁ、一緒に行こうか

若い女とヤリたいだけのヤバい奴、

かと思ったらそうじゃなかった。

おっさん

顔を傷付けたら

おっさん

パパ活なんて出来なくなるかなぁ

おっさん

耳が片方無い女なんて

おっさん

誰も抱きたいなんて思わないだろ?

こいつは

マジでヤバい奴だった。

おっさん

それとも

おっさん

片方の乳房を削ぎ落とす?

おっさん

ははっ

おっさん

そう怖顔をするな

おっさん

その体でたくさんの男を喜ばせてきたんだろ?

おっさん

じゃあ、オレも楽しませてくれよ

おっさん

女の子の痛みに喘ぐ声は

おっさん

オレの最高の癒しだからさ!!

マジで殺されるって思った。

手足拘束されてたし、

口も塞がれてたし、

ただ、

どうせ殺されるなら

悪足掻きぐらいしたっていいでしょ?

ゴッ!

おっさん

ぬふっ!?

思い切り頭突きをすると

目の前に星がちらついた。

おっさん

このっクソガキ!!

ナイフを振り下ろそうとしたおっさんに

拘束された両足で蹴飛ばす。

おっさん

んなっ!?

蹴飛ばされ倒れたはずみで

ナイフが落ちて部屋の隅に転がったのが見えた。

あのナイフさえ拾うことが出来れば、

そう思って

急いでナイフに近付いて

そして、

バチッ

篠崎 美兎花

がっ!

体に衝撃が走った。

おっさん

ったく

おっさん

手間取らせやがって

おっさんはもう一回

スタンガンを押し当てて

バチッ!

篠崎 美兎花

あ゛ぐっ

おっさん

まぁこれぐらい足掻いてくれないとな

おっさん

面白くない

おっさん

前の女はあっさり殺しちまったけど

おっさん

お前はじっくりとなぶり殺してやる

おっさん

ふひひっ

おっさんは馬乗りになって

気持ちの悪い笑みを浮かべてた。

無駄な足掻きだった?

そうかな。

そうは思わない。

こいつも馬鹿だな。

さっさと殺せばいいのに。

ねぇ

助けに来てくれるよね。

私は

信じてるから。

かぎりん。

河西と篠崎は、

過去の出来事から

互いに何かあったとき

すぐに駆け付けられるよう

追跡アプリ”ついせきちゃん”を

インストールしていた。

そのことを思い出して、

GPS機能を使って

篠崎の居場所を見つけた二人が

そこを訪れたのは

篠崎と連絡が途絶えてから

一時間ほど経ったときのことだった。

河西 美依奈

ミトカ!?

紫雲 かぎり

……

河西 美依奈

……

古いアパートの一室に

篠崎美兎花は

仰向けに倒れていた。

河西 美依奈

ミトカ!!

顔は痣だらけで

片方の耳が

削ぎ落とされていた。

天井を見つめる目は虚ろで、

意識が無いのは明らかだった。

そこに犯人の姿はすでに無く、

全てが終わったあとであることを物語っていた。

どうやって通報したのか

紫雲には

はっきりと記憶に残っていない。

気が付けば

救急車と警察が来ていて

篠崎は担架に乗せられ

運ばれていき

それに河西が泣きながら付き添う形となっていた。

警察の長い事情聴取が終わり、

解放されたのは明け方のことだった。

そして、

篠崎美兎花が亡くなったという訃報が届いたのも

ほぼ同時刻のことだった。

発見したときの状態から見て

紫雲はどこか

篠崎が助からないことを

理解していたので、

河西ほど動揺することはなかった。

紫雲 かぎり

………

紫雲は

明けたばかりの空を見つめ、

煙草を咥え、

火を付けると、

ゆっくり

紫煙を吐き出す。

紫雲 かぎり

さて…

紫雲 かぎり

探すか……

紫雲 かぎり

(貰った分くらいは働かないとな)

【いつかの会話】

篠崎 美兎花

もしさ、私が変態に殺されたら

紫雲 かぎり

は?

篠崎 美兎花

かぎりん、私の代わりに復讐してね!

紫雲 かぎり

俺は報酬が発生しないと動かない薄情者だからなぁ

篠崎 美兎花

はい、じゃあこれ!

紫雲 かぎり

ん?

篠崎 美兎花

前払い報酬!

紫雲 かぎり

え、なに、マジなの?

篠崎 美兎花

マジだよぉ

篠崎 美兎花

だって、あのババアは娘が殺されても平気そうだし

篠崎 美兎花

だから、かぎりんにお願いするの!

紫雲 かぎり

……まぁ報酬さえ払ってくれれば何でもするけど

紫雲 かぎり

なんで殺される前提なんだよ

篠崎 美兎花

ミイナに起きたことを考えるとさ

篠崎 美兎花

この世界には自分が思ってるより

篠崎 美兎花

ヤバい奴が多いって気がついたの

紫雲 かぎり

気がついたんならパパ活なんて止めればいいだろ

篠崎 美兎花

今は止めてる

篠崎 美兎花

でも、お金もさ

篠崎 美兎花

大事でしょ?

紫雲 かぎり

まぁ…なぁ…

篠崎 美兎花

危ないところには行かないつもりだけど

篠崎 美兎花

連れて行かれる可能性はあるでしょ?

紫雲 かぎり

うーん…まぁ、否定はしないが

篠崎 美兎花

だ、か、ら!

篠崎 美兎花

もし、万が一のときは

篠崎 美兎花

お願いね!

紫雲 かぎり

……

紫雲 かぎり

っていうかお前

篠崎 美兎花

なに?

紫雲 かぎり

一万円ってどういうこと?

篠崎 美兎花

JKが出せる最大値です

紫雲 かぎり

嘘付け、この間パパ活で二十万儲けたっつってただろ!

篠崎 美兎花

それは残念ながら学費に消えたのです

篠崎 美兎花

ババアに全額取られなかっただけマシ!

紫雲 かぎり

………

篠崎 美兎花

じゃ、宜しくね、かぎりん♪

篠崎美兎花が亡くなって

12時間が経過した。

おっさん

(はぁ…疲れた…)

おっさん

(マジであの職場ダメだな)

おっさん

(使えねぇクソババアばっかだし)

おっさん

(早く帰って一杯飲みてぇ…)

おっさん

(ん?)

おっさん

(玄関が空いてる?)

おっさん

(何でだ?)

不思議に思いながらも

玄関を開ける。

若い女性の声

いや

若い女性の声

助けて

若い女性の声

助けて

若い女性の声

私は何もしてない!

部屋の奥から

女性の声が聞こえてきた。

おっさん

……だ、誰かいるのか?

暗がりに向かって言うが、

返事は無い。

代わりに…

若い女性の声

パパ活なんてしてない!!

若い女性の声

いや!止めて!!

女性の声がまた聞こえた。

おっさん

いや、これはっ

何かに気がつき、

電気を付けると、

男は急いで部屋の中に入る。

おっさん

だ、誰だ

おっさん

お前は……

部屋の中、

パソコンの前の椅子に

真っ黒なパーカーを着た人物が座っていた。

 

やぁ、おかえりなさい

 

小山敏(こやま さとし)さん

その人物はクルリと椅子を回して振り返ったが、

フードを深々と被っているので

顔ははっきりと見えない。

小山 敏

な、なんでオレの名前を…

 

名前だけじゃないですよ

 

小山敏(こやま さとし)

 

38歳

 

ハウスレット不動産に勤務

小山 敏

ど、どうしてそのことを…

 

業績はまぁまぁ

 

過去に何度も

 

同僚の女子社員に侮蔑的な発言を繰り返し

 

注意を受けている

 

どうです?

 

半日で集めたにしては

 

なかなか上出来じゃないですか?

小山 敏

さっきから何の話をしている

小山 敏

お前の目的はなんだ?

小山 敏

金か?

 

いえいえ

 

忘れ物を届けに来ただけです

小山 敏

忘れ物?

 

その予定だったのですが、

 

思わぬ収穫もありまして

マウスをクリックすると、

若い女性の声

いや!止めて!

若い女性の声

止めてぇぇぇぇ!!

パソコンの画面に

フルスクリーンで映し出される、

血に塗れた少女の泣き顔。

小山 敏

あ、ちょっ!

小山 敏

てめぇ!!

駆け寄った小山に

容赦なくスタンガン押し当てた。

バチッ!!

小山 敏

あぐっ!!

衝撃で床に膝をつく。

 

これが忘れ物のスタンガンです

小山 敏

う、ぐっ…

しかし、

スタンガンを見せるだけで

渡そうとはしなかった。

 

こんなもの現場に残していたら

 

あっという間に捕まってしまいますよ?

小山 敏

ふっ、ふふっ

 

小山 敏

それだけで何がわかる

小山 敏

前科が無けりゃあ

小山 敏

指紋だけじゃあ捕まりっこねぇ

 

まぁ、そうですが

 

もし

 

あんたとこの子が一緒にいる映像が見つかれば…

小山 敏

へ?

取り出した写真を

小山の前に投げ落とす。

それは画質の悪い写真ではあったが、

小山と女の子が並んで歩いている姿が写っていた。

 

彼女の名前は

 

宮川唯(みやがわ ゆい)さん

 

この間、橋の下で死体となって見つかった中学生です

小山 敏

……

 

某タクシー会社のドライブレコーダーに映っていました

 

今はまだ警察が調べていない部分ですが

 

直、警察も見つけることでしょうね

小山 敏

……

小山 敏

よく出来たフェイク画像か?

 

心配しなくても

 

動画もありますよ

小山 敏

……

 

それと

 

昨夜、駅前で女の子に声をかけましたよね?

小山 敏

は?何のことだよ

 

はい、これ

さらに一枚の写真を投げ落とす。

そこには確かに小山の姿と

若い女の子―篠崎美兎花が写っていた。

小山 敏

これもフェイクだろ…

 

駅前ですからねぇ

 

監視カメラなんて腐るほどあるでしょ?

小山 敏

……

 

この映像と

 

パソコンの動画があれば……

 

指紋など小さな証拠の一つにしかならないでしょうね

小山はふらりと立ち上がり、

スーツのポケットから

折り畳みのナイフを取り出して見せた。

小山 敏

男を殺す趣味はねぇが…

 

はぁ…

わざとらしくため息をこぼす。

小山 敏

どうやら痛い目に遭いたいらしいな

小山 敏

お前を殺して

小山 敏

動画を削除すれば

小山 敏

証拠は無い

小山 敏

ただ、被害者と一緒に歩いている映像があるだけじゃあ

小山 敏

逮捕はされねぇよ

小山 敏

オレは若い子に声をかけただけなんだからな

小山 敏

ふひひっ

 

……

 

ホント、鈍いんだな

小山 敏

は?

 

なんで気がつかないのか

 

俺はその方が不思議でならん

小山 敏

なにを

 

タクシーのドライブレコーダーの映像や

 

駅前の監視カメラの映像を持っている時点で

 

おかしいと思わなかったのか?

小山 敏

おかしい?

 

そんな映像、誰でも見られるのかってことだよ

 

加えて、パスワードが設定されてるパソコンが起動していて

 

動画が見られていることに何の違和感も覚えなかったのか?

小山 敏

あ、いや…

 

はぁ…

 

まぁいい

 

所詮、その程度の脳味噌しか持ち合わせてないってことだ

小山 敏

な、なんだと!?

 

俺にとっちゃ

 

個人のパソコンに侵入することなんざ造作もない

小山 敏

……

 

お前のパソコンの中にある

 

反吐が出るような動画は全部とあるクラウドにコピーした

おっさん

んなっ!?

 

お前が俺を殺して

 

一生懸命パソコンの中身を綺麗にしても

 

クラウドにいれた動画は

 

24時間後に某動画投稿サイトにて代々的に公開される仕組みだ

小山 敏

!!!?

 

あの動画には

 

お前の声も入ってたからなぁ

小山 敏

そん、な…

小山 敏

消せ!!

小山 敏

今すぐ!!

小山 敏

消すんだ!!!

 

嫌だね

小山 敏

貴様!!!

小山 敏

死にたいのか!

振り下ろされたナイフを

キャスター付きの椅子ごと避けると

ナイフは見事に机の天板に突き刺さった。

おっさん

おっ

男は小山の後ろ襟を掴んで

思い切り後ろへ引っ張った。

小山 敏

んぐっ!

体勢を崩した小山は

そのまま尻もちをつく。

 

あ、そう言えば

 

俺の目的が知りたいって言ってたよな?

男は天板に突き刺さったナイフを取り、

小山に近づく。

小山 敏

ゲホッゲホッ

 

俺は

 

復讐をしにきたんだ

小山 敏

…復、讐?

 

生前頼まれたんでね

 

貰った報酬分は働かないと

 

呪われそうだ

男は乾いた笑みをこぼし、

そして、

ナイフを喉に突き刺した。

おっさん

んぐっ

 

安請け合いするのはいつものことだが

 

一万円で人を殺すのは

 

初めてだな

おっさん

なに、を…

 

ま、てめぇみたいなクズ野郎なら

 

逆に一万円は高い報酬だったかな

おっさん

んっ

喉から抜かれたナイフは

迷うことなく

小山の心臓を突き刺した。

ニュースキャスター

××市にあるアパートの一室から

ニュースキャスター

遺体が発見されました

ニュースキャスター

遺体は、この部屋に住む小山敏さんと見られ

ニュースキャスター

遺体の状態から

ニュースキャスター

これまでに起こっている連続殺人事件と関係があると見て

ニュースキャスター

警察は捜査を進めている模様です

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