TellerNovel

テラーノベル

アプリでサクサク楽しめる

タイトル、作家名、タグで検索

テラーノベル(Teller Novel)
死んだ彼女とコスモスの花

死んだ彼女とコスモスの花

「死んだ彼女とコスモスの花」のメインビジュアル

3

死んだ彼女とコスモスの花 完

♥

525

2019年09月07日

シェアするシェアする
報告する

ゆみ

…出張?

こうじ

うん、海外に1ヶ月。

ゆみ

そう…。

こうじ

結構忙しくなるから、あまり連絡も出来ないかも。

ゆみ

…最近働きすぎじゃない?

こうじ

え?

ゆみ

もっとこうじと一緒にいたい…。

こうじ

…仕方ないだろ。仕事なんだよ。

ゆみ

…。

こうじ

なに?

ゆみ

…何でもない。

ゆみ

…そうだよね、ごめん。

ゆみ

仕事頑張って!!

こうじ

……うん。ありがとう。

海外にて

Bob

Hey,koji.(やあ、こうじ。)

Bob

How is the progress? (どんな状況だい?)

こうじ

Sorry,It is not done yet.(すいません。まだ終わってません。)

ゆみ

不在着信

不在着信

こうじ

(ん?ゆみ…)

Bob

As soon as possible, please (急いでやってくれ)

こうじ

…Ok(了解。)

こうじ

………。

ゆみ

不在着信

不在着信

こうじ

…うるさいな!電源切っとこ。

ピッ。

その数日後。

こうじ

はあはあはあ。

こうじ

ゆみ!!!!

ゆみの母

…こうじ君。

こうじ

お母さん。ゆみ、ゆみは!!

ゆみの母

……。

こうじ

…ゆみ……!

思い出されるのは、10年前の記憶。

こうじ

クローゼットの中にしまった……確かこの服の中に…

ゆみは元々体が悪かった。俺の出張中に体調が急変したのだ。

こうじ

あ、あったライター。

こうじ君のせいじゃない。 ゆみのお母さんはそう言ってくれた。 でも、あの時連絡をしてれば…。

こうじ

…ん?…こっちの服、ゆみとのデートで良く着てたジャケット…。

こうじ

…懐かしいな。

…人の思いは物に宿る。

こうじ

今回の事件は全て…この折り紙から始まった。

こうじ

……。

ライターを構える。

こうじ

…ゆみ。

コスモスの折り紙に火をつける。メラメラと折り紙は燃えていく。そして、すべてが燃え尽きた。

こうじ

……。

こうじ

これで、やっと。

マリエ

通話終了

通話
00:00

こうじ

あ、マリエ…

こうじ

はい。

こうじ

うんうん。

こうじ

…もう大丈夫。家に来ていいよ。

こうじ

うんじゃ駅まで迎えに行くね。

こうじ

……。

こうじ

よし、いくか。

こうじ

…久しぶりに、このジャケット着てこう。

こうじ

あ、マリエ。

マリエ

こうじ

こうじ

…行こう!

そして、家に来たマリエに全てを話した。

マリエ

…。

こうじ

…。

マリエ

…てことはもう、ゆみさんの霊は…

こうじ

…うん成仏したはずだ。

マリエ

こうじ…。

こうじ

……。

こうじ

ゆみは、もう現れない

マリエ

本当?

こうじ

うん。これで一緒になれるよ。

マリエ

……そう。

こうじ

マリエ。

そう言ってマリエを引き寄せる。

こうじ

…。

ゆみ。君は10年前に死んだんだ。だから俺は前に進まなきゃならない。

そうだろ?俺は、俺は………!

ザク

こうじ

……。

こうじ

……え?

ザク?

なに?腹からは血が…え??

こうじ

うっ。。

一体何が……。

マリエ

……ふー。

マリエ

本当に、霊は成仏したようね。

こうじ

…!

マリエの手には小型のナイフが握られていた。

こうじ

ど、どう言うこと…。

マリエ

…ごめんなさいね。私借金があるの。

こうじ

…借金?

マリエ

まあ、私というより私の男が作った借金なんだけどね。

頭がくらくらしてくる。マリエは何を言っているのか…。

マリエ

本当はもう少し仲良くなって、金を騙し取ろうとも思ったけど、机の札束見て思ったわ。

マリエ

あなたを殺して奪えばいいだけだってね。

こうじ

う。…くっ。

マリエ

ごめんなさいね。男から連絡あってね…。こっちも時間がないのよ。

こうじ

……。

マリエ

でもあなたが、幽霊を成仏させてくれて助かったわ。

こうじ

マリエ

あの幽霊、私の邪魔ばっかするから。

こうじ

…ど、どういう…ことだ

マリエ

初め、あの幽霊が現れたとき。…あなたがお茶をいれてるときね…。

……最初にゆみが現れたとき? 確かに俺は、マリエを背にお茶を入れ……

こうじ

マリエ

気づいたようね。あの時も背後からあなたを刺そうと狙ってたのよ。

こうじ

…!!

マリエ

それに夜の岩壁から海を見ていたあの日…。

あの時もゆみが現れた。…その時は目をつむってと言われて…

こうじ

まさか…突き落とそうと…?

マリエ

正解!

マリエ

あの日、あなたがまさかの合鍵くれたからね。このまま海に落としてしまおうと思ったところに幽霊よ。

こうじ

……う。

激痛が襲ってくる。意識も遠のく…。

マリエ

つまり、貴方はあの幽霊に守られてたって訳。

マリエ

それを、貴方が成仏してくれるんだもの。本当に助かったわ…。

こうじ

……。

マリエ

さ、お喋りは終わりよ…。

こうじ

……これも…

これも全部俺のせいだ。

何も知ろうとしなかった。表面しか見なかった…。

マリエとの関係も、ゆみを忘れる為の只のきっかけ…。俺はマリエを何も思ってなかった。

こうじ

…ふー。うっ。

きちんと彼女に向き合ってれば、彼女の闇に気づけたはず。

結局俺は昔と同じ…

こうじ

……ごめん。マリエ…。

こうじ

ごめん。ゆみ。

次もし生まれ変わったら、俺はもっと真剣に向き合って……

マリエ

なにか言ったかしら?

こうじ

……!

マリエがナイフを振りかぶる。

本能だろうか。自然と心臓と頭を守るように身構える。

くしゃ

マリエ

さよなら

こうじ

………

マリエ

……え?

こうじ

!!

マリエ

!!!!

こうじ

…ゆみ!?

マリエ

きゃ!!

マリエは驚き尻餅をつく。

マリエ

な、なに??

ゆみはマリエの体を通過し、そのまま姿を消していった。

マリエ

ど、どうしてまたあの女が…!!

こうじ

…。

こうじ

……!!!!

マリエ

っ!

マリエの隙を付き、彼女に飛びかかってナイフを持つ手を押さえる。

マリエ

!は、はなせ!!

こうじ

うっ!

刺された腹からは止めどなく血が流れる。 でもこの手は離さない。 ここで死ぬわけにはいかない…!!

こうじ

…俺はまだ、きちんとお礼も別れの言葉も言えてないんだ…!!

マリエ

……この、死に損ないが…

その時だった

バタン!!

警察

…!

マリエ

警察

警察だ!動くな!!

マリエ

…な!

こうじ

…警察。

隣の部屋で只ならぬ物音がする

不審に思った隣人が、最寄りの警察署へと駆け込んでくれたとのことだった。

マリエはそのまま現行犯逮捕。

こうじ

…。

俺は気を失い病院へと搬送された。

1ヶ月後

こうじ

…懐かしいな。この谷、ゆみと一緒に良く来たっけ。

病院について搬送された俺は、なんとか命拾いすることができた。とても腕のいい医者のお陰だ。感謝してもしきれない。

こうじ

……。

逮捕されたマリエからは様々な余罪が出てきた。 当分は刑務所から出られないとのことだ。

こうじ

ゆみ。

……何故、成仏したはずのゆみが、あの時また出てきて俺を救ってくれたのか。

その答えは俺の着ていたジャケットの中にあった。

こうじ

…。

チョコレートコスモス

折り紙で作ってあった、チョコレートコスモスが、ジャケットの中にあったのだ。

このジャケットもゆみが死んでから着ていない。 つまりこれは、ゆみが死ぬ直前に入れたもの…。

こうじ

…この折り紙にも、ゆみの思いが詰まって…。

トン!

こうじ

え?

誰かに後ろから手を叩かれた… いやこれはデコピン?

こうじ

…。

その衝撃で手から離れた折り紙は、ゆらゆらゆらゆら、風に吹かれ谷の底へと消えていく。

こうじ

…後ろにも…誰もいない。

落ちてくチョコレートコスモスの折り紙を見ながら、あの日の事を思い出す。

こうじ

……。

ゆみ

あーでも今日は本当に最高の日だ。

こうじ

うん、本当に!

こうじ

この貰ったコスモスの折り紙、大切にする。

ゆみ

うん!

ゆみ

……ね、知ってる?

こうじ

ゆみ

私は体が弱いです。

こうじ

うん、知ってるよ。

こうじ

…安心しろ。俺がしっかり稼いで、お前に負担はかけさせない。

ゆみ

…ありがとう。

ゆみ

…じゃさこれは知ってる?

こうじ

ゆみ

さっきあげたコスモスね、色によっては全く違う意味になるの。

こうじ

そうなの?

ゆみ

うん、さっきあげたピンク色は乙女の純情。

ゆみ

でも茶色いコスモスは全く違った花言葉なの。

こうじ

茶色いコスモス。

ゆみ

通称チョコレートコスモス。

ゆみ

チョコレートコスモスはね、とても悲しい花言葉。

こうじ

……。

ゆみ

花言葉は、「恋の終わり」

こうじ

えー、嫌だ!

ゆみ

ふふ。

ゆみ

だからもし、私が病気で死にそうになったときは折り紙でチョコレートコスモス折ってあげる。

こうじ

…いらねーよ。縁起悪い!

ゆみ

…ふふ。

ゆみはトンっと俺にデコピンした。

ゆみ

そんな顔しないの!笑
万が一の話よ!

こうじ

…ちぇ。

ゆみ

……でもいつか、本当にそんな時が来たら……

ゆみ

綺麗さっぱり私のことは忘れてね。

こうじ

……。

ゆみ

こうじ、大好きよ。

こうじ

…うん、俺も!
一緒に幸せになろう!!

ゆみ

うん!!

こうじ

………

こうじ

最後まで君に守られっぱなしだったなー。

こうじ

……ん

こうじ

雨か…?

こうじ

ふふ。帰ろう。風邪をひいてしまうな。

こうじ

…………。

こうじ

ゆみ、今まで本当にありがとう。

こうじ

……さようなら。

この作品はいかがでしたか?

525

コメント

22

ユーザー

kohaさん、長いお話お付き合いありがとうございます! そうですね、でもゆみもあの世で幸せになれるはずです…!

ユーザー

切ないですね、、、

ユーザー

田中さんありがとうございます! 長い話お付き合い頂き嬉しいです!

チャット小説はテラーノベルアプリをインストール
テラーノベルのスクリーンショット
テラーノベル

電車の中でも寝る前のベッドの中でもサクサク快適に。
もっと読みたい!がどんどんみつかる。
「読んで」「書いて」毎日が楽しくなる小説アプリをダウンロードしよう。

Apple StoreGoogle Play Store