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テラーノベル(Teller Novel)

じゃあ、おばあちゃん。ごめんな、ちょっと出かけてくる

望が座椅子に座りながらテレビを観る祖母に声をかけた。

今日は圭と優衣と約束した祭の日なのだ。

祖母

そんなん気にしなさんな。

祖母

ばあちゃんはあんたが友達と遊ぶことが嬉しいんやけ

え?

祖母

こっち帰って来てから、ずっとばあちゃんのことばかりで遊んでなかったやろ。

祖母

やけ、今日は楽しんで来なさい!

ありがとう、おばあちゃん…。

優衣

あ!

優衣ちゃん!

待ち合わせ場所に居たのは優衣だけで、圭の姿は無かった。

ごめん、待たせた?

優衣

いいえ!全然です!

あれ?圭は?

優衣

それが、まだ来てなくて…

その時、望のスマホが震えた。

圭からの着信のようだ。

圭、後どのくらいで着く?

そ、それが…うぅっ

どうした!?何かあったのか!?

げ、下痢で…うっ!

……

昨日なかなか寝付けんで、腹いっぱいになったら眠くなるっち思って…

食いすぎたと

ピ、ピンポーン…

で、お前来るの?

い、行く!行く!だがしかし、俺には先にこいつを倒すという使命が…

かっこつけてるけどあれだろ?うんK…

わーわーわー!!!!頼む!優衣ちゃんには秘密にしとって!!!!

はいはい…

とにかく遅れるけど絶対行くから…

先会場向かってるぞ

わ、分かっ…おおおおおおおお!!!

が、頑張れよ…

親友に空エールを送り、望は電話をきった。

優衣

あの、圭さんは…

あ〜…急用で遅れるって

優衣

そうなんですね

先に俺らで行っててくれってさ

優衣

え…

ん?

2人でと言った途端、急にモジモジしだす優衣。

圭が居ないと嫌?

優衣

ち!違います!そうじゃなくて!

ん?

優衣

…あ!えと、な、名前!

名前?

優衣

はい!圭さんは名前を伺ったんですが、あなたのお名前、まだ知らなくて…

あ、そっか!まだ言ってなかったね!

優衣

はい

ごめんごめん、俺の名前は…

その時

ザアアアア…!!

優衣

きゃっ!

突然の土砂降りが2人を襲った。

優衣

めっちゃ降っとる…!

優衣ちゃん、こっち!

望が優衣の手を引き、屋根のある場所へ移動する。

繋いだ望の手が暖かくて、優衣の体温は更に上昇した。

優衣

あ、ありがとうございます

いや、いいよ。それより、濡れちゃったね

優衣

はい…ビショビショです

っくしゅん!

優衣

大丈夫ですか?!

ん、平気平気

平気と言いつつ、寒そうな望。

さっき雨宿りする時に咄嗟に優衣が濡れないようかばっていたのだ。

そしてそれを、優衣も気づいていた。

優衣

あの…私の家ここから近いんで、そっち行きますか?

え?いやいや、悪いし…

優衣

そんなことないです!だって、私が濡れにくいようにかばってくれたから、そんなビショビショになってますよね…

優衣

着替えも父のならありますし、雨が止むまでそっちで暖かくしてください

でも…

優衣

じゃないと、風邪ひいたら嫌です…

…分かった。ありがとうね

優衣

いえ、とんでもないです。

そうして2人は優衣の家へと向かった。

優衣は〝なんて大胆なことをしたんだろう〟と思ったが、そうこうしているうちに到着した。

お邪魔しま〜す

優衣

今誰も居ないので気使わないで大丈夫ですよ!

え!?

優衣

…迷惑、でしたか?

いや、そうじゃなくて!

流石に望も2人きりという状況を意識し、赤くなる。

しかし、優衣の方はそれどころじゃない。

ドキドキが止まらないし、何を話したらいいのかも分からないし

優衣

〜〜!!あの、これタオルと父の着替えです!こっちシャワーなので、どうぞ使ってください!

シャワー!?!?!?

優衣

え?

いや!なんでもない!

ありがとう!お言葉に甘えて使わせてもらうね!

そう言って、バスルームへ向かった望。

1人になった瞬間、優衣は衝動を抑えきれずにソファーにダイブした。

優衣

なにやっとんの私〜!!!

自分がしたことの大胆さに驚きを隠せず、顔が赤面しっぱなしだ。

優衣

…あの人、優しいな

さっきもそうだけど、さりげない言葉や行動で、優しい人なんだって分かる。

あの人のこと知っていくにつれ、ドキドキする回数も増える。

でも、なんでだろ。

もっと、あの人のことが知りたい…。

シャワーを浴びながら、望は考えていることがあった。

あの子…昔どこかで

そう。 望はまだ優衣が昔病院で仲良くなった少女だと気づいて居なかったのだ。

しかし、どこか懐かしい気持ちにさせてくれる優衣に心地良さを持ち始めていた。

会ったばっかの子になんで懐かしいなんて…

…てか

シャワーって言葉で反応するなんて

俺はエロおやじか…

落胆し、反省をする望。

そんな望の深いため息が、バスルームに響いていた。

ガチャッ

…あの、シャワーありがとう。着替えも

優衣

いえいえ!温まりましたか?

うん!

優衣

………

………

お互い会話につまる2人。

長い沈黙が部屋を包んだ。

先にそれを破ったのは

優衣

あの!

緊張で声が裏返りながら話しかけた優衣だった。

ん?

優衣

………名前

優衣

結局、まだ聞けてなかったな〜って!

そうだったね。

俺の名前は

優衣

はい……

望が出しかけた言葉を一瞬飲み込んだ。

言っていいのか?

俺の名前は佐野 望だって。

そしたらこの子はどんな顔をする?どんな言葉をかける?

いきなり態度を、〝アイドルとしての佐野 望〟への対応に変える?

優衣

あの…

…望

優衣

え?

俺の名前は、佐野、望…

優衣

…………っ!

再び静寂が2人を包む。

部屋に響いているのは、激しさを止めない雨音だけだった…。

ダサいのには理由がある!~アイドルと恋愛してみませんか?~

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