8月31日，木曜日

なんだか、祖母の家に行って、 年下の従兄弟に出迎えられたみたいな 気分になった。

利久くんは 一昨日のことがなかったみたいに ニコニコしていて安心した。

こっちこっち、と嬉しそうな利久くんに 手を引かれて移動する。

ちら、と俊介くんを見ると 今を噛み締めるみたいに 大事にだいじに話を聴いているのが 伝わってきた。

何も言わない俊介くんの顔を茜さんが 不安そうに覗き込んだのが視界に入った。

ぽた、と俊介くんの目から 涙が落ちたのも、一緒に。

下を向いている俊介くんの手を利久くんが優しく握った。

寂しそうに笑う利久くんも、 泣き出してしまうような気がした。

だけど、そんなのを吹っ飛ばすように 声を出したのは

ポケットをゴソゴソ漁って 何かを取り出した夏雪さんだった。

足を止めた夏雪さんを振り返る

大きな声でそう言って、 くるりと踵を返した彼女は もう一度だけ振り返って 大きく手を振ってから 夜に溶けていった。