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2018年5月21日月曜日
半日の講義を終えて大学から
徒歩5分の牛丼屋で昼飯を食べた後、
バスに乗ってアパートへと帰る
何度も繰り返されたその行為を
今日も忠実にこなし、
今はそれほど混み合ってないバスに揺られていた。
もう午前の講義は半分以上頭の中から抜け落ちていて、
yuan
と考え暗い気分になる。
1年目は講義を受けることに必死になっていたけれど、
今はそうでも無い
それなりに真面目にやっていれば、
単位が取れることを知ってしまったし、
必要最低限の回数だけ講義に出ていれば何の問題もない。
余裕が出てきたのはもちろんいいこと だが、
こんな風に目的もなく毎日過ごしていると将来が不安になってくる。
yuan
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最近はそういうことが頭の中をぐるぐる回っていて、
僕の心をどうしようもなく不安にさせる。
やがて最寄のバス停にバスが停車する。
yuan
読んでいた文庫本を閉じてカバンの中へしまい、バスを降りた。
今、将来のことを考えても仕方ないと悟った僕は、
一人暮らしをしているアパートへ戻るという目標を掲げて歩き出した。
大通りから離れ住宅街をしばらく歩き、
やがて角を曲がれば見慣れたアパートが現れる。
それから2階への階段を上り、1番右端の部屋へ帰る
......はずだった。
角を曲がった僕は、
その光景を見て思わず足を止める。
─アパートの前に、
制服を着た女の子が倒れていた。
それを頭の中で遅れて受け入れた僕は
立ち止まらせていた足を走らせる
yuan
??
すぐに駆け寄ってその彼女を抱き起こすと、
彼女はかすかな呻(うめ)き声を上げた。
どうやら意識はあるようだ。
慌ててポケットからスマホを取り出そうとして──地面へ落とした。
yuan
動揺して指先が震えているのだ。
スマホを拾い上げて、
着信画面を呼び出す。
yuan
と考えているうちに彼女は目を開いた
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その時初めてまともに彼女の顔を見た僕は
yuan
数秒の間、目を奪われた。
長く綺麗な髪。
伸びた睫毛に隠された瞳はまるで宝石のようで、
吸い込まれてしまいそうなほどに深い色をしている。
小ぶりな鼻は自己主張をせずに、
それがまた可愛らしさを引き立てている。
我に返った僕は、かぶりを振った。
yuan
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そう呟いて、彼女は自分の後頭部へおそるおそるゆびさきを当てる。
それが触れた瞬間、慌てて手を離し苦悶の表情を浮かべた。
その瞳には涙が浮かんでいる。
yuan
断りを入れて彼女の後頭部へ触れると、指先に大きなコブが感じ取れた。
同時に彼女が
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という悲鳴を上げたため、すぐに手を離す。
おそらく地面に頭を打ったのだろう。
それ以外にはセーラー服が乱れているだけで、
目立った外傷は見られなかった。
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首をかしげた後、彼女はどこか遠くを見つめるように目を細める。
胸中に嫌な予感が渦巻いた。
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彼女は自分を"えと"と名乗り、
人差し指を地面へと立てた。
そして一つ一つを思い出すように、ゆっくりと指先を滑らせていく。
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再び首をかしげる。
小さく口は空いているが、何かが喉に詰まっているかのように声を発そうとしない。
その口は結局、何の言葉も発さないままゆっくりと閉じっていった。
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しばらく考えた後、
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小さく首を振る。
家族構成や通ってる学校、
行ったことのある地域、
色々なことを質問したけれど、
そのどれも彼女は覚えていなかった。
覚えているのは"えと"という名前だけ。
いわゆる、記憶喪失というやつだ。
持っているのはスカートのポケットに入ってた
ティッシュと、ピンクのハンカチ。
それからピンク色のスマホだけで、
身元がわかるものは一切所持していない
おまけにそのスマホのロック解除のパスワードも分からないという。
何か助けになりたいと思ったけど、
さすがに手に負えないとわかり立ち上がった。
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et
yuan
yuan
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金銭の類いを持っていないということは、
おそらくそれほど遠くから来たわけではないのだろう。
警察へ頼って何かしらの対応をしてもらえば、
案外すぐに何かしらの手がかりが見つかるかもしれない。
彼女もすぐに納得してくれるだろう。
だけど彼女は両目を見開き、
すぐに怯えた表情を浮かべる。
その表情の意味がわからずに戸惑っていると、
彼女が唐突に僕へと抱きついてきた。