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テラーノベル(Teller Novel)

エミ、必死で走っている。 後ろから追いかけてくるのは男の姿。

エミ

ハァ、ハァ

待って、エミちゃん!!

別れるなんて言わないで!ちゃんと話し合おう!

エミは無視して走り続ける

ねぇ、エミちゃん!!

……待てコラァーーー!!

男はぐんとスピードを上げる

エミは追いつかれ腕をガシッと掴まれる

エミ

ヒッ!!

エミ、バッと目を開ける。 見えるのは白い天井。

エミ

ハァ、ハァ、ハァ……

額にびっしょり汗をかいている。

ー朝ー

エミ

(結局、ほとんど眠れなかった……)

コンコン、ノックの音。

看護師

失礼します。朝食です。

看護師

あら、顔色が悪いですね。

エミ

悪夢を見てしまって……

看護師

どんな夢ですか?

エミ

男に追いかけられる夢です。それで追いつかれて、目が覚めました。

看護師

あー、よくありますよそういう夢。だいたい疲れてる時に見ちゃうんです。

エミ

……はぁ

看護師

顔色も悪いですし、ちゃんとご飯食べて横になっててくださいね。

エミ

わかりました。あの、メイクがしたいんですけど、買いに行くことはできますか?

看護師

今は外出は禁止されています。
2階の売店に簡単な化粧品なら売ってますよ。

エミ

そうなんですか。ありがとうございます。

看護師

無理はしないでくださいね。

看護師、部屋を出ていく。

エミ

(ご飯を食べたら売店に行ってみよう)

エミ、売店で化粧品を見ている。

エミ

(当たり前だけど安物しかないな)

エミ

(ファンデーション、1000円、アイブロウ500円、アイシャドウ1500円、リップ1000円、マスカラ1000円こんなもんかな。あ、あとチークも買っとこ。)

カゴに次々いれていく。

エミ

(前はもっといい化粧品使ってた気がする)

レジに並ぶ

エミ

(……そう!ショネルの化粧品で統一してた!)

店員

次の方どうぞー

エミ

あ、はい

店員

えー、合計5点で5500円になります。

エミ

はい

エミ、一万円札を出す

店員

では、4500円のお返しですね。ありがとうございました。

エミ

……

エミ

(4500円になっちゃった。大丈夫かな、これから)

不安そうに店を出るエミ

エミ、305号室の前に立っている。

エミ

(つい、来ちゃった……)

エミ

(化粧もしてきたからちょっと見て欲しいし)

エミ

(なにより一馬くんに話を聞いて欲しい)

エミ、ノックする。

一馬

はーい

エミ

あの、エミです。今いいですか?

一馬

えっ、エミちゃん?!ちょっと待ってね。

ドアが開く。

一馬

おはよう。入って。

エミ

ありがとう

エミ、部屋に入る。

一馬

どうぞ座って。

エミ

ありがとう

一馬

今日はメイクしてるんだね。

エミ

うん

一馬

いいね。すごく可愛い。でも、すっぴんも好きだったな。

エミ

うそー、顔色悪かったし恥ずかしいよ。

一馬

そんなことないよ。エミちゃんはメイクしててもすっぴんでも両方可愛いよ。

エミ

(すごく嬉しい!)

一馬

それでどうしたの?なんかあった?

エミ

あ、うん、たいしたことじゃないんだけど

一馬

なんでも聞くよ。

エミ

悪夢を見たの。男の人に追いかけられて……捕まえられる夢。

エミ

もしかしたら、私の中にある恐怖感みたいなものってこの人が原因なのかな。

一馬

男の人はどんな人だった?

エミ

うーん、顔まではわかんないけど細身の人だったな。

エミ

別れるなんて言わないで、話し合おうって。そのセリフがすごくリアルで。

一馬

現実でも言われてたかもしれない?

エミ

……うん。でもはっきりとは思い出せない。

一馬

それって……彼氏なんじゃない?

エミ

声の感じが中年っぽくて……まぁ、年上の人と付き合ってたのかもしれないけど。

エミ

……でも、今の感覚だと、特に中年層が好きとは思えないかな。

一馬

……中年か。もしかしたらストーカー?
それとも職場の人に言い寄られてたとか……

一馬

ごめん、単純な発想しか沸かなくて。

エミ

ううん、聞いてくれてありがとう。

エミ

職場については何も思い出せなくて……なにか思い出すきっかけがあればいいんだけど。

一馬

じゃあさ、えみちゃんが働いてそうな職業、言っていくからピンときたら教えて。

エミ

うん

一馬

えー、企業受付、秘書、カフェ店員、化粧品の販売員、美容師、ネイリスト、CA……あとはー、えっと。

エミ

ふふ、ありがとう。華やかな職業言ってくれて。

一馬

どれもピンとこない?

エミ

うん、ごめんね。

一馬

いやいや、謝ることじゃないし

おーい、一馬。入るぞー!

松葉杖の男が入ってくる

あれ、ごめん先客いたんだ。

一馬

ああ。またあとでな。

あ、もしかして、この子がエミちゃん!?

エミ

……はい、そうですけど

そっかそっかー!ほぉー、本当に可愛いじゃん!

一馬

おい

カズマさー、昨日エミちゃんの話ばっかでさぁ!可愛いくていい子だって。

一馬

うるさいぞヨシキ。

ヨシキ

いい奴だから仲良くしてやってよ

エミ

あ、はい。

一馬

ごめんね、こいつはヨシキ。会社の同僚で、一緒に事故に遭ったんだ。

ヨシキ

そ。勤務中、こいつの運転でね。

一馬

一方的に追突されたんだから、僕のせいにするなよな。

エミ

仲、いいんですね。

ヨシキ

同期で同じ部署だからね。

エミ

銀行、ですよね。

ヨシキ

そう!うちの部署にもこんな可愛い子いればなぁ。
姫ポジ確定よ!

エミ

ふふ。姫ポジって。

ヨシキ

お邪魔みたいだから、俺は先にナナちゃんのとこ行こうかな。
カズマもあとでこいよ。

一馬

わかった。

ヨシキ

エミちゃんもよければおいでー!じゃあね!

ヨシキ、出ていく

エミ

ごめんね、もしかして何か約束してた?

一馬

あー、大丈夫だよ。大した用事じゃないから。みんなで7並べやろうって言ってて……エミちゃんも来る?

エミ

ナナさんって方、私知らないですけどいいのかな?

一馬

大丈夫だよ。いい子だから歓迎してくれるよ。

エミ

……そっか。じゃあ、私もお邪魔しちゃおうかな。

休憩スペースで、エミ、一馬、ヨシキ、ナナが座ってトランプを囲んでいる。

ヨシキ

うぁー、誰だよ、ここ止めてる奴。

一馬

僕じゃないよナナちゃんじゃない?

ナナ

私も止めてないよ!

一馬

じゃあエミちゃんかな?

エミ

私も止めてないよ!

ヨシキ

じゃあ誰だよー嘘ついてる奴!

一馬

さぁな。はい、俺の番

ゲームが進んでいく

ヨシキ

くそぉー、出せるのない、パス3

ナナ

あ、パス3回目

一馬

ヨシキ負けー!

ヨシキ

まじかよー。

ヨシキ、手元のカードをテーブルに並べる。

エミ

じゃあ、私の番

ナナ、止めていたハートの8のカードを出す。

ヨシキ

くそぉーエミちゃんだったか!

一馬

やるねぇ!

ナナ

全然わからなかった!ニヤニヤしてたから一馬くんかと思った。

一馬

えっ、ニヤニヤしてた?

ナナ

してたよー!

一馬

まぁ、常に笑顔を心がけてるからな。

ナナ

確かに、一馬くん、いつも笑顔だよね。素敵素敵!

ヨシキ

なんだよぉー俺もいつも笑顔だぜ?

エミ

(……ナナちゃんって一馬くんのこと好きなのかな)

エミ

(一馬くんは、どう思ってるんだろ)

一馬

おーい、エミちゃんの番だよ!

エミ

あ、ごめんね。えーっと。

しばらくゲームは続き、エミが勝ってゲームは終わる。

ナナ

エミさん強い!

一馬

な。

ナナ

3人でやるより面白かったよね!

ヨシキ

うん、次はババ抜きやろうぜー。

エミ

いいね。やろう。

一馬

エミちゃん、顔に出さないからまた強そうだな。

ナナ

ごめん、今日はちょっと疲れたから私はまた今度。3人で楽しんで!

一馬

大丈夫?部屋まで一緒に行こうか?

ナナ

一馬くんってほんとに心配性。大丈夫だから。

ヨシキ

よし、じゃあ俺が……

ナナ

もおー、いいから!エミさん、またね!

エミ

あ、うん!

ナナ、笑って手を振り去っていく。

エミ

ナナちゃん、いい子だね。

ヨシキ

でしょー?ほんといい子。可愛いし。

一馬

ヨシキはそればっかだな。

エミ

ナナちゃんとはいつから仲良いの?

ヨシキ

俺ら入院してから割とすぐだよな?

一馬

そうだな。ヨシキが食堂で声かけてさ。

一馬

それから時間あると集まってトランプしたり、ウノしたり。

ヨシキ

テレビもつまんないし、スマホも飽きたし。暇なんだよな。

ヨシキ

あ、エミちゃんのライン教えてよ。みんなで集まるとき呼ぶからさ。

エミ

えっと……スマホ無くて。

ヨシキ

えー、大丈夫だよ!?俺こう見えて連絡しまくったりとか迷惑行為しないからさっ!

一馬

いや、ほんとに持ってないんだよね。

エミ

……うん、そうなんだ

ヨシキ

えっ?マジ!?なんで?まだガラケーとか?

エミ

いや、話すと長くなるんだけど……

一馬

はい、その話はおしまい。人には人の事情ってもんがあるの。ゲームの続きしようぜ。

ヨシキ

えーーなんでよ。そう言われると気になるじゃん!

一馬

ヨシキ、すぐ色んな人に言いふらすからな。エミちゃん、何も言わなくていいよ。

ヨシキ

おいおい、そりゃねぇだろ。あ、わかった。

ヨシキ

エミちゃんと二人で秘密の共有したいんだろ。ずるいぞ。

一馬

僕はエミちゃんを心配してるだけ。

ヨシキ

ちぇーっ。エミちゃん、また今度教えてね。

エミ

はは

一馬

よし、配り終えた。ババ抜き開始。

ババ抜きが始まる

エミ

(ナナちゃん、なんで入院してるのかな。聞きそびれちゃった)

エミ

(私と違って守ってあげたくなるタイプの子だったな)

エミ

(はあ……なんだか胸が苦しい)

エミは半分上の空でババ抜きを続けた

病棟のシンデレラ

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