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カラダの関係は、お試し期間後に。

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カラダの関係、お許し下さい![葵の実家編]Pt.4

♥

16

2021年08月17日

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………

お風呂上がりの濡れた髪をタオルで拭きながら、葵は1枚のメモを眺めていた

♡葵へ♡ 今日は久しぶりに高校時代の同級生とお茶してきます♪ くれぐれも、電話してきたりして女子会の邪魔はしないでねっ♡ 夜までには帰るよー!

……遅いっ!

せっかくちゃんと話し合って仲直りしようと思って、今夜は得意なビーフシチューをいつも以上にこだわって作ったのに…っ

アイツ…

まさか…な……

…ガチャン

(…あ、帰ってきた)

…おかえりっ、綾乃

綾乃

たっだいまー、葵っ!

ずいぶん遅かったじゃん…そんなにお茶は楽しめた?

綾乃

……うん、まぁね

…あ、先に一緒にご飯食べる?

今日は綾乃の好きなビーフシチューだよん

綾乃

……あ、私…先にお風呂にするねっ

綾乃

葵、先に食べてていいよ?

…そうなの?

じゃあ待ってるよ

綾乃

……ごめんね

パタン。

……なんだアイツ…まともに俺の顔も見ないで…

………

痛いほど降りしきるシャワーの中、涙も一緒に流れていく

綾乃

う…っうぅ…っ

泡立てたスポンジを、胸にこすりつけた

すべてを洗い流すかのように、念入りに何度も…何度も

綾乃

(ごめん……葵)

綾乃

(私が間違ってたよ…)

綾乃

(私が…勝手にあんなことしたから…)

綾乃

(だから…これはただの自業自得…っ)

綾乃

(すぐに…忘れられるっ…!!)

まだクスリの効果が抜けない、疼く体に冷たい水を浴びせかけた…

リビングに戻ると、葵が配膳の用意をしながら待っていた

綾乃

………

なんだよお前、フロまでおっせーのっ!

どこ磨いてたの?(笑)

綾乃

……ごめん

………

…おいっ

通り過ぎようとした綾乃の腕を掴んで、その顔を見た

綾乃

あ…っ!

……泣いた?

綾乃

な、何でもない…っ

何でもないわけないだろっ…

ふと髪をすくって首筋を撫でた瞬間、ビクンと綾乃の体が震え上がった

綾乃

あ……!!

……なに、その反応…

綾乃

……っ

……話して。

綾乃

……ダメ

綾乃

言え…ないっ…!

なんで!

綾乃

ちゃんと、何もなかったことにしてきたから!!

綾乃

だから、これでいいの!

綾乃

葵は何も心配しないでっ!

お前…

…俺の家族と会ってきた?

綾乃

……っ!!

そうなんだろ?

綾乃

……うん

誰と会った?

母さん?それとも兄貴?

綾乃

………

…俺、こういう仕事してるとさ、いろんな業界の有名人の噂話とか耳に入ってくるんだよ

兄貴は母さんの下で社長におさまってるけど…

手当たり次第に女に手を出してるのも知ってる

綾乃

……!!

…なぁ…違うん…だよな?

お前が…兄貴に…っ

綾乃

ごめん…葵…っ!

綾乃

私が何も考えずに勝手なことしたから!だから…!!

……!!

綾乃

でも最後までされてないから!!

綾乃

途中でお母さんが帰ってきて──

最後まで説明し終わらないうちに、葵はすでに動き出していた

綾乃

葵っ?!

綾乃

…どこ行くの?!

クソ兄貴のトコに決まってるだろ…!

綾乃

待って!!ダメ…!

綾乃

私、何もなかったことにしてきたの!!

綾乃

お兄さんの…ためにも!!

綾乃

だから…もう、私も関わらないから…っ

そんなのどうでもいい

殺す…っ!

綾乃

葵……っ!!

怒りで歪んだ葵の横顔を見て、綾乃はグッと胸元で拳を握りしめた

綾乃

葵っ、お願いだから落ち着いてっ!

綾乃

電話で話し合ったりだってできるでしょ?!

お前、どこで兄貴と会った?

綾乃

それは…っ

綾乃

街から離れた場所の大きなお屋敷だったし、道順なんて覚えてない…

綾乃

お兄さんは「別宅」って言ってたけど…

綾乃

帰りだって、家政婦さんにタクシー手配してもらったからわからないよ

………

それ、昔俺が住んでた実家だから

綾乃

えっ…そうなの…?

一気にスピードを上げて走り出す

綾乃

ねぇ、聞いて葵…

…なに?

綾乃

私ね、お兄さんに…そのっ…押し倒された時…

綾乃

お兄さんの口から聞いたの

綾乃

葵に対する気持ちっていうか……恨み…っていうか…

………

綾乃

でもね、ただ単に葵のことを恨んでるだけには聞こえなかったの

綾乃

私には、何か大きなコンプレックスみたいなのを抱えてるふうに見えた…

綾乃

だからお兄さん…苦しんでたんじゃないかな…

………

綾乃

ねぇ…だから葵、考え直して?

綾乃

葵がそこまで怒る理由だって、私はちゃんとわかってるから!

綾乃

だから…たった一人の血を分けたお兄さんのこと、殺す…なんて…言わないで…っ!

………

………

綾乃

『私…潤くんとデートしてて…』

綾乃

『途中で気分が悪くなったので、ここで休ませてもらってただけなんです…』

……っ

ピーンポーン

ドカドカドカドカ…

葵…なのかっ…?

家政婦

ちょっと…あなた方は一体なんなんですっ?!

家政婦

いくらご身内の方でも会長の承諾もないのに困ります…!!

家政婦

警察呼びますよ?!

ガララッ!

!!

襖を勢いよく開けたのは、予想通りの人物だった

………

相変わらずつまんないカオ…

綾乃

葵…っ!ねぇ、お願いだからやめてっ!!

葵…!!

何年かぶりに会ったのに、ずいぶんな言い草だな…

…当たり前だろ?

いい歳してママにオンブに抱っこで、やりたい放題やってるようなバカのツラがつまんなくて何が悪い

……っ!!

綾乃

そんな言い方ないでしょ!!

綾乃

ねぇ、お願いだから冷静に話し合ってよ…っ!

……ふっ(笑)

まぁ、お前がそんなに怒り狂うのも無理ないだろうな

綾乃ちゃん、俺に触られてすっごく興奮して淫らになっちゃったから…さ

………

綾乃

お、お兄さん…!

クスリの効果もあったけど…

あんなにエロい声漏らしながら濡らしちゃうなんて、お前が普段彼女をどれだけ調教してるのかがよくわかっ───

部屋に入り込んだ葵が、床の間に飾ってある短刀を手に取った

綾乃

何するの…?!

……!!

そのままスラッと鞘から抜くと、逆手に握って潤の元へと突き進む…

綾乃

いや…やめて!葵!!

あ……っ!!

そして恐れのあまりに固まった潤を押し倒し、馬乗りになると、短刀を振りかざした

綾乃

…きゃあああ!!

グサッ!!

────!!

綾乃

あ…あぁ…あ…!!

気がつくと、顔をかすめて畳に突き刺さった短刀を握る手の震えを、潤は横目で見つめていた

お……お前っ…

……兄貴じゃなきゃ…

今すぐこの場で…ぶっ殺してた…!!

綾乃

葵…!!

スッと立ち上がり、葵は畳から引き抜いた短刀を鞘に戻す

ま……待て!

お前…どうしてっ…

ガラッ!

保篠陽子

…さっきの悲鳴は何?!

───!!

母さん…

葵の姿を目にした陽子は、言葉を失った

保篠陽子

慎司…?

その時綾乃は、陽子の瞳の中の輝きをハッキリと見たのだった…

綾乃

………

保篠陽子

…いいえ違う……葵っ?!

保篠陽子

葵なのね…っ?

自分の息子と別れた旦那のこと見間違えんなよ…

保篠陽子

あ、あなた…どうしてこんな所にいるの?!

保篠陽子

まさか……私に会いに──

クソ兄貴を懲らしめに来たんだよ

それと、兄貴をこんなふうにしたあんたもな

なっ…!

保篠陽子

な、何を言ってるの…?!

その歳になってもまだわかんないの?

あんたのせいでっ!俺たち2人がどれだけ犠牲になってきたのか…!

保篠陽子

犠牲…ですって?

保篠陽子

私はあなたたちには何不自由ない生活をさせてきたじゃないの!

保篠陽子

一流のファッションデザイナーとして、私は何も恥じることなく生きてきたわ!

そう、その素晴らしい功績の結果…

俺は孤独の道を歩むしかなくなって、兄貴は劣等感に押しつぶされて歪んだんだよ

保篠陽子

……!

何言ってるんだよ、お前…

母さんは、俺たちのことを女一人で育て上げるために必死に頑張ってきたんだぞ!!

それを勝手に反発して出て行ったのはお前じゃないか!

それに、俺だってこうして社長として会社を一任してもらえてるのも──

本気でそんなこと思ってんの?

……っ

「母さん」、もうこれでよくわかっただろ?

俺と兄貴は…

あんたから愛されたくて…愛されてる自信が欲しくて……幼い頃からお互いに認め合うことなんてできなかった

俺だって、あんたの言いなりになってるだけの兄貴を見てるとどうしようもなくイライラして…

兄貴が……憎らしかった…っ

綾乃

葵…っ

でも大人になって、誰かを愛するようになった今ならわかるんだ

あんたの「愛し方」はやっぱり間違ってるんだよ、母さん

保篠陽子

……どうしてなの…っ?

保篠陽子

私の…何がそんなに間違ってるのよ…!!

…自分で考えなよ

それと、俺…そこにいる綾乃と結婚するから

保篠陽子

結婚…ですって…?

綾乃

あ…っ

もちろん結婚式なんて参加しなくていいし、お祝いも何もいらない

あえてお祝いしてくれるなら…「無関係」になってもらえると一番ありがたいかな

綾乃

そんな、どうして?!葵っ…!

保篠陽子

……っ

保篠陽子

勝手に…なさいっ…!

…じゃ、元気でね

そう言うと、葵は綾乃の手をとって踵を返した

綾乃

待ってよ葵っ!まだ…っ

もう話すことなんてないっ

何度も振り返る綾乃を引っ張って、部屋を出て行く葵の後ろ姿

その後ろ姿に向かって陽子は弱々しく手を伸ばした…

母さん…

保篠陽子

……っ

保篠陽子

待って…よ…っ!

保篠陽子

葵っ……!!

蚊の鳴くような声を震わせて座り込む母の背中を、潤は静かに見つめていた…

つづく

カラダの関係は、お試し期間後に。

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コメント

8

ユーザー

最高すぎます!!続き楽しみです!

ユーザー

”愛し方”かぁっ。 今日もすごかったです!! 続きが楽しみだなぁっ!!

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