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複雑な関係【9bic】

複雑な関係【9bic】

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けど、言わないで。【椚三波斗】

♥

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2022年04月18日

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椚三波斗

え?

市川慶一郎

ハッキリさせた方が良くない?

市川慶一郎

必ず幸せにするって約束するから

市川慶一郎

傷つけないから

椚三波斗

……

まるで、俺の心を読んでいるような目を向けた。

市川君、何考えてるの?

何を考えてるのか分からないけど、“幸せにする”って、信じていいの?

信じるからね?

仮屋瀬さつき

うん…

俺達が振り返ると同時に、さつきが頷いた。

市川慶一郎

同じベッドで?

四季涼雅

え?うん

市川慶一郎

え何?

市川慶一郎

2人ってそういう関係なの?

市川君は2人に隙が無いくらいどんどん聞いていった。

そんなに責めて、何が目的なの?

仮屋瀬さつき

別に違いますけど…笑

さつきは笑い混じりにそう言った。

その笑顔が、少しイラッときた。

涼雅はきっとさつきのことが好きだ。

だから涼雅は俺には振り向いてくれない。

だからこそ、さつきのその余裕そうな笑顔が、胸に刺さった。

悔しい。

市川慶一郎

涼雅はどうなの?

市川慶一郎

さつきのことどう思ってんの?

市川君は少し焦った様子を見せながら次は涼雅に質問した。

四季涼雅

え…どうって笑

四季涼雅

メンバーとしか見てないよ?

嘘だ。

涼雅はさつきのことが好きだ。

だって、俺とさつきに対する態度が明らかに違うし、

一緒に寝るなんて…

涼雅が“さつきが好き”と言ったらもっと苦しかったろう。

だけど、誤魔化さないで欲しかった。

言ってくれない方がもっと嫌だ。

市川君の“ハッキリさせた方が良くない?”という意味が、なんとなくわかった気がした。

涼雅、嘘つかないでよ。

目が熱くなった。

椚三波斗

涼雅

いつの間にか口が開いて、涼雅の名前を呼んでいた。

椚三波斗

嘘…でしょ?

四季涼雅

え?

聞きたくない。

椚三波斗

ほんとのこと…

言わないで。

さつきが好きって、言わないで。

椚三波斗

…言ってよ

複雑な感情が入り交じった。

言わないで欲しい。

だけど、言って欲しい。

四季涼雅

…三波斗?

仮屋瀬さつき

…どうしたの?

市川慶一郎

……

いつからか、俺の頬には涙が流れていた。

椚三波斗

ごめん…忘れてっ

俺は洗面所を飛び出した。

市川慶一郎

…三波斗?

四季涼雅

…三波斗!

後ろから、俺を呼ぶ声が聞こえる。

涼雅は階段を駆け上がる俺を追いかけてきた。

来ないで。

お願い。ほっといて。

涙を服の袖で拭いながら部屋に入った。

四季涼雅

…三波斗?!

部屋に入った途端、足の力が抜けて、その場で崩れ落ちた。

椚三波斗

……

四季涼雅

大丈夫?

涼雅が俺の隣にしゃがみ、背中に手を置いてきた。

椚三波斗

…っ…っ

涙が止まらない。

顔を下に向けて膝に目を擦りつけた。

四季涼雅

…三波斗?

これ以上、話しかけないでよ。

四季涼雅

…立てる?

無理だよ。

椚三波斗

…やめて!

四季涼雅

…ごめん

涼雅は俺の声に震えながら手を背中から離した。

ちょっと、言い過ぎたかな。

涼雅、震えてるよ。

椚三波斗

…言い過ぎた

椚三波斗

ごめん

その場で立ち上がり、涼雅に背を向けた。

それから、2人でベッドに座り、しばらくの沈黙が流れた。

四季涼雅

さっきさ

涼雅が口を開いた。

四季涼雅

ほんとのこと言ってよ

四季涼雅

って言ってたよね?

椚三波斗

え?

四季涼雅

それって…

椚三波斗

…待って

確かに言った。

だけど、いざとなったら怖い。

四季涼雅

…?

椚三波斗

忘れてって言ったじゃん

椚三波斗

もうその話ししないで

あぁ、なんでこんなに弱いんだろう。

四季涼雅

……わかった

きっと涼雅は、さっきの沈黙の中ずっと考えていただろう。

“さつきのことが好き”と言うか言わないかを。

それできっと、“言う”という選択をしただろう。

だから、止めてしまった。

ほんとのことを知りたがっていたのは俺なのに。

ほんとにごめん。

俺、可笑しいよ。

椚三波斗

俺、そろそろ戻る

椚三波斗

他の2人に申し訳ないし

四季涼雅

うん

四季涼雅

じゃあ、戻ろっか

2人は微妙な空気感が漂う部屋を出た。

涼雅は俺より3段くらい下を歩いている。

2人に謝った方がいいかな…

あと、涼雅にも…

また雰囲気悪くしちゃったし…

そんなことを考えながら歩いていると

椚三波斗

…!!

やばっ!!

階段を踏み外してしまった。

怖くて、目を閉じてしまった。

椚三波斗

……

足が痛い。

四季涼雅

…三波斗?!

四季涼雅

大丈夫?!

今日で2度目の、階段から落ちてしまった事件。

さっきいた段より2つくらい先に滑って落ちてしまった。

涼雅が駆け寄ってきた。

椚三波斗

うん

椚三波斗

大丈夫…

右足首が少し痛いような…

リビングのドアが開く音がして、ドタバタと足音が近づいてくる。

市川慶一郎

…どした?

四季涼雅

市川君!三波…

市川慶一郎

…三波斗?!

市川君が、俺の元に駆け寄ってきた。

その後ろにはさっきもいる。

椚三波斗

あ、ごめんみんな

椚三波斗

大丈夫だから

市川慶一郎

…立てる?

心配させない為にも、俺は手すりを捕まって立とうとした。

市川君は自然と肩に俺の腕を掛けて立ち上がらせてくれた。

だめだ。

右足首が変な感じする…

骨折までとはいかないけど、そこそこ痛い…

四季涼雅

とりあえずソファ行く?

市川慶一郎

うん、そうだね

椚三波斗

大丈夫だって!笑

市川慶一郎

痛いんだろ?右足

椚三波斗

…え?

市川君が耳元でそう囁いた。

なんで分かったの?

俺、痛そうにしてたかな?

市川君だったら、俺のことさっきみたいに助けてくれたのかな。

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