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夏、涼風が頬に染みる夜
すいせい
みこ
2人の少女(主に赤髪の方であったが)は、世界に絶叫を晒していた。
リスナー
リスナー
みこ
すいせい
みこ
すいせい
みこ
すいせい
みこ
みこは慣れた手つきで「いくらですか?」と手早くタイプする。
みこ
みこ
すいせい
みこ
みこの表情が再び強ばり、 しかめっ面を示す。
みこ
すいせい
みこ
みこ
すいせい
みこ
無邪気さを取り戻した彼女は、すいせいの言葉を「け、む、く、じゃ、ら」と1音ずつ反芻しながらタイプする。
みこ
すいせいはみこの一連の動作の間、終始ニヤついていた。
リスナー
みこ
すいせい
みこ
その言語学習アプリは、初級「疑問詞」編の最終問題として、簡潔な問題を提示した。
みこ
すいせい
みこ
すいせい
モニターは派手なファンファレーと共に、ピコーンと正解音を鳴らす。
すいせい
みこ
みこ
すいせい
みこ
すいせい
みこ
みこ
すいせい
みこ
みこ
みこは寝起きの猫のように ううん、と大きく伸びをする。
背もたれに体重を預けると、 ゲーミングチェアはぎい、と悲鳴を上げた。
シックなピンクが際立つ そのモダンな椅子は、すいせいが特別な常連客の為に誂えたものだ。
すいせい
みこ
すいせい
すいせいの雑なジョークに 「でゃまれ」と小さく返した後、クルッと椅子を回し、 不機嫌に机につっ伏す。
すいせい
みこ
すいせい
みこ
みこは何か言い淀んでいたようだが、すいせいは「いいから」と片手で浴室への移動を促した。
すいせい
みこ
すいせい
みこ
すいせい
きゃーと甲高い声を上げて、 みこは推進力を得たロケットのごとく部屋を飛び出していった。
すいせい
「やっぱりママやないか」と みこは小さな両手で、部屋のドアのラッチを握りしめて、片方の口角を吊り上げた。
みこが完全に退室したのを確認すると、すいせいは安堵のため息をもらした。
すいせい
6時間前、都内のスタジオ。
みこ
小さな丸椅子に体育座りし、 顔全体が陰るほど俯いている。
濃い半透明のピンクのカバーを帯びたスマートフォンを握りしめ、少し震えている。
みこは憔悴しきっていた。
すいせい
遅れて楽屋へ入室したすいせいが、みこの傍に駆け寄る。
すいせい
みこ
すいせい
みこ
か細く親友の名を繰り返すと、大きな瞳からぼろぼろと涙を零し始めた。
すいせい
背中を優しく、だが力強くさすってやると、みこは一層大きな声で嗚咽し始めた。
すいせい
咽びながらも、すいせいからペットボトルを受けとり、 一口水を含んだ。
喉へごくんと水を流し、飲み口についた口紅を拭き取ると、 みこはほんの少しだけ落ち着きを取り戻したようだった。
みこ
逡巡の後、「実は」といって、スマホを再び起動し、すいせいの手元へ寄せた。
すいせい
Xのアプリを表示した画面は、凄惨なみこへの中傷を記していた。
激発した怒りによる 侮蔑的な言葉が直情的に 書きなぐられている。
すいせい
すいせい
すいせいが最も重大な懸念点に気付くのに、全く時間を要さなかった。
すいせい
すいせい
みこは彼女のファンのことを話し出すと止まらなかった。 「この人はいつも配信に来てくれている」だとか、「可愛いと何回も伝えてくれる」だとか、個々のファンの名をあげて、すいせいに嬉々として話していたものだ。
それは半ば恋人への「のろけ」のようなものだな、とすいせいは感じていた。 そのくらい彼らのことを敬慕し、何より愛しているのだと。
そして、彼もまたその1人であった。
すいせい
すいせい
すいせい
みこ
みこがどんよりした沈黙を破って、悲しそうに呟く。
みこ
「そんなことない」と言いかけて、すいせいは押し黙った。
みこ
みこ
そこまで言い切ると、みこは再び泣き出してしまった。
すいせい
どのような言葉もきっと彼女の傷を癒すことが出来ない。 そう察したすいせいは、 今はただみこを優しく抱擁するに留めた。
現在、すいせい邸のキッチン
すいせい
スマホで同僚の音楽を流す傍ら、すいせいは食後の後始末をこなしていた。
あの後、悲しみに暮れる少女に「うちに来な」とだけ告げ、スーパーマーケットへ駆けた。
種々雑多の肉といくつかの野菜をカゴに詰め入れ、精算し、足早に帰途に着く。
少女をホカホカの白飯と一緒にホットプレートの前に座らせ、ただひたすらに肉を焼いてやった。
赤く目を腫らした彼女は、「お肉美味しいね」などと余裕を見せるふりをしていた。
すいせい
提案したのはすいせいだった。 いつもの明るくポンコツで可愛いみこを取り戻すのもまた、 ファンとの交流しかないと。
かつてのファンによって受けた傷を、現在のファンによって癒す。
不倫に勤しむ人妻みたいでヤらしいな、とすいせいが言うと、恋愛もロクにしたコトねー奴がよ、と軽蔑された。
すいせい
箸やら皿やらのテーブルウェアの油を簡単に落とした後、食洗機に突っ込む。
すいせい
すいせいは自身が慢性的な昼夜逆転人間であることを自覚していた。
朝には完全な活動限界を迎えるので、今のうちに面倒は済ませておこうという魂胆である。
すいせい
すいせいは冷蔵庫の食材たちを覗き見る。
すいせい
すいせい
ほうれん草を手に取り、あからさまに苦悶の表情を浮かべた。
すいせい
すいせいは、過激なアンチ菜食主義であった。 しかし、この頃おとな各種が「健康に気を使え」と煩い。
一方的な無視を貫いてきたが、とうとう最新の健康診断がその欺瞞を断じて許さなかった。
渋々両手で数えられる程度の野菜を購入したは良いものの、 実物をまじまじ眺めると やはり吐き気がする。
すいせい
すいせい
なんてことをしてしまったんだ、と反体制派の買収を深く悔やんだ。
すいせい
すいせい
すいせい
連中に処刑方法を宣言すると、素早く執行に取り掛かった。
すいせい
すいせいの包丁さばきは実に軽やかであった。おそらくアップテンポのBGMも功を奏していたのかもしれない。
すいせい
「未だ、青い」 すいせいのお気に入りの曲のひとつである。
過去の思い出や青春の時期、成長とともに進む時間の中での感情や経験を柔らかな口調で見事に表現した屈指の名曲だと彼女は常々感じている。
すいせい
何十回と口ずさんだフレーズに、ふと想いを馳せる。
すいせい
他人に「かくあれ」と望む方が間違っているが、とすいせいは心の内に付け加えた。
すいせい
すいせい
すいせい
いつしか「未だ、青い」の英題は「Stay Blue」だと海外の同僚から聞いたことを思い出した。
すいせい
いつぞやにDiscordで議論した時の、彼女からの提言を反芻する。
すいせい
それは私の思う「愛とはなにか」という哲学的命題に対する解答にも通ずるな、と頷いた。
愛とは、固執することだという持論が、すいせいにはある。
互いの意見や感情に強く固執することで、関係性を深めていく。
だがそれは同時に、理想を擦り合わせて、神経をすり減らしていくことでもあると、すいせいは疑ってやまない。
別の同僚にその哲学を披露すると、彼女は
まつり
などと全く意味不明なことを抜かしたが、今のすいせいにはそれに反証する自信がある。
すいせい
すいせい
すいせい
そして限界値を突破してしまった結果があの暴言ヤローだと嘆息する。
すいせい
すいせい
すいせい
すいせい
スムージーとオムライスの素、それからパンケーキとトーストを然るべき場所に保管する。
すいせい
みこ
みこ
すいせい
みこ
バスローブに身をくるんだみこがびっくりした様子で、ソファに横たわったすいせいを見下ろす。
すいせい
すいせい
すいせい
すいせい
すいせい
みこ
みこの柔らかい微笑みに、すいせいは小さく首を振る。
すいせい
みこ
みこ
熱い風呂の湯のせいか、みこの顔がほんのり紅潮しているように見受けた。
みこ
みこは少し俯くと、わざとらしく顔を手で仰いで小さく呼吸した。
みこ
すいせい
予想外の告白にすいせいはしどろもどろになる。
みこ
みこ
すいせい
よいしょと呟いてから、柔らかいソファに身を沈めると、身を揺すってすいせいにぴとりとくっついた。
緊張した面持ちであったが、 みこの眼差しは極めて真剣だった。
みこ
みこ
すいせい
膝の上でぎゅっと拳を作ると みこは上目遣いで尋ねた。
みこ
すいせい
すいせい
みこ
すいせい
すいせい
みこ
みこ
みこ
みこ
言葉に詰まっているすいせいの様を察したみこは、 僅かな沈黙の後に続けた。
みこ
みこ
みこ
みこ
すいせい
すいせい
すいせい
みこ
みこ
みこ
すいせい
すいせい
みこ
みこ
すいせい
すいせい
みこ
みこ
すいせい
すいせい
みこ
すいせい
冷蔵庫に付属するサーバーから水をグラスに汲むと、それを一気に喉へ流し込んだ。
すいせい
すいせい
彼女の大きく潤った瞳孔は、 はっきりとすいせいの姿を捉えていた。
すいせい
すいせい
私たちの関係性は「愛」までに昇華していたのだろうか?
すいせい
すいせい
女の子同士てじゃれて「大好き」と言い合うことはある。 だが、あの「体も心も支え合っていこう」という宣誓はまるで…
すいせい
すいせいの心の内では、喜びと不安、そして動揺が複雑に絡み合っていた。
すいせい
すいせい
すいせいは考えた。 ネジを一本失った懐中時計が、それでも無理矢理拍動を続けようとするように。
すいせい
すいせい