蜜華-mituka
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高校2年の時の夏休み。
急に庭の物置を整理しようと思いたった母を 手伝った時やったな。
得体の知れない健康用具器具の下敷きになって、 大きな桐箱が出てきたんや。
ゾム
母は懐かしそうに目を細めて
お母さん
母の話を聞き流しながら箱を運び出して、開けてみる
単位もお雛様を手に取った時、唐突に「記憶」が蘇った。
ゾム
両親が寝室に使っている和室。
大きな雛飾り。
部屋の隅には赤いランドセルが放り出されている
ーーそう。小学生に上がった時のことだ。
俺は薄暗い和室で、男の子と遊んでいる。
俺は一人っ子。 そんな事は分かっとる。
でも俺は、「彼奴」の名前も顔も思い出していた。
お母さん
と困ったように笑う母
ゾム
ある日たまたま遊びに来た他所の子やない。
ノブヒロはうちに住んどった。 一緒に雛祭りを祝った。
俺と2人でお風呂に入ったり、 同じ布団で寝た。
2つ下の4歳で、 卵ボーロが好きだったノブヒロが…。
ただ、何時居なくなったのか、 霧に霞んだみたいに思い出せんのや。
一緒に居たのは一週間の気もするし、 何年も暮らしていたようにも思えてくる
夕飯の席で父に同じ話をして、こう言われたんや。
お父さん
お父さん
お父さん
そうや。小1の歳の暮れに 母がくも膜下出血で倒れ半年ほど入院しとったんや。
俺は父から 「家に友達を連れて来ちゃいけないよ」
…と、きつく言われた。 幸い後遺症も残らず、 元気な母と暮らすうちにすっかり忘れていた。
お父さん
何日かたって父がネットで調べてくれたらしい。
1人きりでいる時間が長い児童に見られる 「空想上の友達」 本人にとっては強い実在感は伴うが、 孤独が解消されると消える事が多い…。
お父さん
お父さん
お母さん
ゾム
それ以来、ノブヒロの話はしていない。
…都内の大学に進学して、 独り暮らしを始めたゴールデンウィークのこと。
何気なく付けとった 「未解決事件ファイル」 というテレビ番組で取り上げられた幼児の写真に 俺の目は釘漬けとなった。
アナウンサー
12年前の正月休みに起こった誘拐殺人事件。 現場は俺の実家の隣県
資産家の息子で当時4歳の友田信広が、 公園に遊びに行ったきり失踪 翌日、身代金の要求する電話があるも、
受け渡しに失敗 その後、死体で見つかった。
…この手の事件にありがちな、 「身代金要求時点で既に殺されていた。」 ケースと違い、
推定時刻は発見の1時間前だったと分かった為、 死亡で報道協定が解錠されると 「助けられたのではないか」 との批判が多く寄せられたそう。
被害者として紹介された写真は間違いなく、 「彼」やった。 ノブヒロという名前、 12年前に4歳という年回りもぴったりだ。
ただ、事件が起きたのは、正月だという。
じゃあ、俺が一緒に雛祭りを祝ったのは…?
あの日、母が言っていた事を思い出して、実家に電話した。
ゾム
お母さん
ゾム
4歳で殺されたあの子の霊は、遊び相手が欲しくて、 彷徨っていたのだろう。
そして、母がおらんくて寂しかった俺に出会ったんや。
雛人形を飾ったら、また会えるかもしれん。彼が好きだった卵ボーロをいっぱい買って帰ろう。画面に映し出されたノブヒロの写真を見ながらそう思った。
蜜華-mituka
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ゾム
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ゾム
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ゾム
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ゾム
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ゾム
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