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『エーデルワイス』

『エーデルワイス』

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『エーデルワイス』

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2020年01月01日

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ずっと忘れていた物語 これはある日のことだった 雨の中ボロボロのダンボールに入っていた 小さな小さな犬 どこかで会ったことのあるような そんな気持ちに僕をさせた 仕方ないと思い 拾って家に帰った ペットショップに寄ってから ご飯を買って家で食べさせようとしたものの 食べなかった ブルブルと震えている犬に 無理やり食べさせる事も出来なかった 初めてのペットでどうすればいいのか分からず 病院に連れて行った方がいいのかと考えたが よくよく考えたら近くに病院はない 早くても明日になってしまう 仕方なくお風呂に入れてやろうと思い お風呂の準備をした お風呂で体を洗ってあげると 急に僕に懐いてきた どこか懐かしい気持ちになったが それは気のせいだったのだと思う その後はご飯も何事もなかったかのように食べた 美味しそうに食べている犬を見て 明日の病院はいいかと思った 次の日 犬に名前を付けようと思った ダンボールにはポチと書いていたが ポチ!と言っても反応しないので どうせだったら新しい名前を付けようと思った 名前を決めるのに そこまで時間はかからなかった このどこか懐かしい気持ちから ふと思いついたのが 「りい」だった 正直どんな名前だよとも思ったが それ以上の名前は出てこなかった 初めてりい!と呼ぶと りいは反応をしてくれた それがとても嬉しくて 何度も呼んだ そんな紛れもない日々が続いた 日を重ねるにつれて りいは僕によく懐いた 一度ペットショップにりいを連れていき ご飯をどうすればいいかなどを聞いた そこでリードも買った おもちゃも買ったが あまり気に入らなかったようだ 早速その日に散歩をしてみた りいは元気に走り 僕も久々にたくさん走った この時間がとても楽しかった 少しすると首輪も買った 名前入りのものだ 表にりい 裏には僕の名前が彫られている りいは心なしか喜んでいる気がした 僕も心なしかそんなりいを見て嬉しかった りいに異変が起きたのはそれから半年後の事だ 一年近く一緒にいた だから異変に気付くのも早かった方だと思う 最初は散歩を嫌がる事からだった 珍しく散歩を嫌がった 散歩させないわけにはいかないから 散歩させた 外に出たら楽しそうに走り回ったので あまり気にはしなかった 次はよく僕のベットに入ってくる事だった 普通の家はおかしいとは思わないかも知れないが 今までりいはなぜか 僕のベットの中には入ってこなかった でも最近よく震えながらベットに入ってくる それも一つの異変だった そして一番大きいのは ここ最近よく食べ物がなくなっていた事だった まさかとは思ったが りいの調子も悪そうだし一度病院に行ってみた だが診断結果は異常なし 不思議に思いながら家に帰った 少し苦しそうなりいを見ていると 本当に大丈夫だろうかと思い始めた ネットで調べてみるも 特になにもヒットせず そんな日々が数週間続いた ある夜中 ゴソゴソゴソッゴソゴソゴソッ と音がした なんだと思って寝室を出ると そこには人がいた 一瞬戸惑って携帯を手にしたが 「まって」 と言われて 携帯から手を離した その人は首輪をしていた 頭がめちゃくちゃになっていった 「俺はるぅとくんのペットのりいだよ」 「え?」 「だってりいは犬じゃ」 「犬は仮の姿だよ」 「え?」 「俺の本当の姿はこれ」 「なに言ってるの?りい?」 「俺はね、この世界で君の願い事を叶えるために 君と出会ったんだよ」 「なんで僕なの?」 「簡単な話だよ、信じるか信じないかは君次第だけど、君は前世俺を守って死んだんだ」 「は?」 「君はとても勇敢ないい奴だったよ」 「だからこんないい人間に生まれたんだ」 「なにを言ってるのか分からないんだけど」 「分からなくてもいいよ、理解する事で君が得る事はなにもないから」 「まぁ、強いていうなら一つ願い事を叶えてもらう事ぐらいじゃないかな」 「願い事なんてないよ」 「嘘だね、俺は君の心が分かるんだよ?」 「何を欲しがっているのか見てみたら分かるんだから」 「え?なんで?」 「その質問には答えられない。早く願い事を叶えたいんだ」 「願い事を叶えてもらったらどうなるの?」 「君の前から消えるよ」 「え、じゃりいは僕と早く別れたいの?」 「そういう事になるね」 「なんで?なんでそんな事言うの?」 「君がいい人過ぎるからだよ」 「君と居ると離れたくなくなってしまう」 「だから早く別れたいんだ」 思考回路が止まって頭が混乱する なにを言えばいいのかわからない 黙々と流れている時間に 淡々と沈黙の空気が流れていた 「必ずまた君の前に現れるから」 その次の日りいは僕の前から消えた 一輪のエーデルワイスを残して それから時は経ち 僕は19歳になろうとしていた 今年から音大に入り晴れて大学生になった 前々から誘いがあった YouTubeのグループにも入り 普通の人生ではしない事を沢山した その時に出会って相棒になったのが 「莉犬」だった どこか懐かしい気持ちになったが この気持ちがなんなのかは分からない 最近不思議と記憶が飛んでいることがある 念の為病院に行ったが異常なしと言われた こんな事前にもあったようなと思ったが この一年病気も怪我もしていない だから気のせいかと思った そしてもう一つ何故か家にあった 一輪のエーデルワイスが ここ最近枯れていた 一年近く咲いていたのに 普通は一年も咲かないらしい 少しだけエーデルワイスについて 調べてみた事があった 咲く時期やどこで咲いているのかなどを 調べていると 花言葉が出てきた 「尊い記憶」 何故か心が締め付けられた 何か忘れてはいけない事がある気がする でもそれは何か分からない めちゃくちゃな気持ちに心えぐられる どうすればこの気持ちは治るのだろうか 「るぅとくん?どうしたの?」 この一言で僕の気持ちは軽くなった 何かに気がついたのだろうか いやわからない でも分からなくてもいい気がする どうしてだろうか とてつもなく悔しい けどどこか嬉しい 変な気持ちになった 「ううん、なんでもないよ!」 そう言って僕は歩き出した この道を この世界を 一歩一歩  そして今日は 僕の世界が変わる日だ ----------------------------------------------- 『エーデルワイス』お楽しみ頂けましたか? 一人でもいいなと思ってくれていたら光栄です! 私自身このお話を作っているとどこか胸が締め付けられました。 このお話を作ろうと思ったきっかけが「花言葉」でした。色々な花言葉を見ているととても楽しくどんどんお話が思い浮かんできました。 このお話は続きません。 これまでの時間を大切に そして今の時間も大切に そういう気持ちで書きました。 それでは、またいつかお会いしましょう

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