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「紗季!はーやーくー!」
春。桜の咲いた道をただひたすらに歩く。
新品の制服、ローファー、リュック、おもしろさ。
途端ふわっと風が私達の横を通り過ぎる。
彼女のセミロングの髪が揺れた。
その姿がただひたすらに綺麗だった。
他のものなど目に入らないかのように彼女だけを私の目が捉えている。
ピントは彼女に合わされていて背景が、他の人が全てぼやけている。
「紗季、?どうかしたの?」
はっと我に返ると背景がぼやけてはおらず彼女の他に何があるのか認識出来るほど元に戻っていた。
「なんでもないよ、行こう。」
「うん、」
「俺のクラスめっちゃ可愛い子いるんだけど」
「え?!まじ!いいなぁ。」
「ひとりはもう天使ってレベルで可愛い」
「そんでもうひとりが絶世の美女って感じで凛としてる。」
「どの子?!」
「あの子達!」
そう何度も言われて来たから知っている。
私達は人一倍顔が整っているらしく沢山の人から好意を寄せられる。
誰にも興味が無いのが唯一の欠点だろうか。
「紗季は気になる人、できた?」
「出来るわけないじゃん。私だよ、?」
彼女の話し方は凄く可愛らしい雰囲気がある。
だから一緒にいる人も癒される気がする。
「紗良は?」
「んー、私もいなーい!」
「なにそれ、」
彼女といると私は自然と笑顔になっている事も知っていた。
彼女が居ればそれで良かった。
けれどそれを周りは分かろうとしてくれなかった。
「ねぇねぇ紗良ちゃん!私達とお昼食べない?」
「あー、ごめん。紗季と食べる!」
彼女は愛嬌があって誰にでも優しい。けれど私は物静かで愛嬌など微塵も無い。
可愛い上に性格の良い彼女と綺麗で真面目な私。
どう考えたってみんな彼女を好む。
見た目だけに釣られた男は私に寄って来ることもあった。
それに私は付き合っていたのに彼等は面白みが無いと勝手に文句を付けてくる。
話しかけておいて裏で陰口を言うなんて甚だ図々しい。
自分の理想を勝手に上げてそれ以上では無い人間を低評価するなんてどうかと思う。
「私の期待に応えられなかった」ではなく「勝手に期待をした」が正しいと思う。
彼女は「期待以上」で私は「期待以下」なのだろう。
だからと言い私と彼女の仲が悪くなることなど無かった。
幼い頃からずっと一緒だったから。
私達は正に「ふたりでひとつ」だと思う。
親同士が元から仲が良く同時期に妊娠をして同時期に出産。
私達の誕生日は一日違い。
私が先で彼女が後。
これに関係性など無い。
けれど運命だと今までずっと感じていた。
人生でひとり、運命の人と出会うと言うが私は産まれた瞬間に運命の人と出会ってしまった。
はたまた運命の人は他にいて彼女と出会うのは宿命だったのかもしれない。