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テラーノベル(Teller Novel)
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心臓が弱かった。だけど特別な才能があった私には救世主から機械の心臓が与えられた。

救世主は20歳までの試練を用意した。それまでに才能を活かして殺せば普通の人のように生きれると。


私は救世主に感謝した。

プレゼントとして渡された拳銃には期待が詰まっていた。

私は躊躇いなく殺した。

組織の命令に従い、殺して、殺して、殺し尽くした。

そうして、私は組織で一番の殺し屋となっていた。全てを殺し尽くす死を告げる鳥。

私の才能を殺すためだけに極めた。そうして日本は平和になった。

7年の月日を経て、大きな闇の組織は壊滅させ、根絶やしにした。そうして日本は世界で一番平和な国になった。


組織は大きくなり、犯罪を未然に抑止する日本の治安を守る裏の組織となった。そして私は休暇が与えられて、喫茶店で店員をすることになった。


緊急性の高い任務があれば支援に向かうが、基本的に平和な世界で暮らすことが可能になった。そうして、私達の尽力によって作られた世界一治安の良い国として認定された日本でカフェオレを飲む。



今日も何処かで争いの銃声が鳴り響いており、この廃工場でもまた、その銃声が断続的に響いている。


「クソッ、たかが女相手に!」


用いられている銃火器の数も、鳴り響く銃声も、小競り合いと比べて非常に多い。しかも鳴り始めてから一時間が経過しているというのに、収まるどころか、むしろ大きくなってさえいた。


そんな銃声を作り出す一端を担っている男達は、必死に銃を握る力を強くして攻撃を続けていた。その表情には、皆一様に大なり小なり怯えが浮かんでいる。



「何をしている! 相手は一人だぞ!」



彼らの視線の先に居たのは──およそ戦場に似つかわしくない女性。その手に無骨な銃を持ってさえいなければ歓楽街に居ても違和感の無いファッションで、そこにいた。

私だ。


姿だけを見れば男達が怯える要素は何処にもない筈だが、彼女が何なのかを知っている男達からすれば、死神のような存在に映るだろう。


私は物陰に隠れて放たれる銃弾をやり過ごしながら手持ちの銃のリロードを行い、そして、うんざりしたようにボヤく。



「流石に多くない? 多いよね? このあと味方の支援もあるのに私の担当する相手多すぎ」

「くそっ、ネリルはどうした!あいつ、まさか別の場所を警備してて見逃したのか?!」



銃声の合間から、そんな愚痴にも似た言葉が聞こえてくる。漏れ聞こえたその言葉に彼女は何を思ったか、二丁持っていた銃のうちの一丁を男達の方に向けて放り投げた。


ちょうど彼らの足元で止まるように加減されて投げられた銃は、彼女がやって来た方角を担当していた、ネリルが持っていた物だった。


「ネリルさんのお届けものです」

「貴様ぁぁぁぁ!!」


彼とネリルは旧知の仲だっただけに、ネリルが殺されたという事実に酷く激昂した。


その怒りの声は大気を震わせ、隠れている物に凄まじい弾幕が叩きつけられる程であったが、その怒気を向けられている私は余裕のある表情を崩さないのだ。この程度の怒気と殺意なら受けなれている。


だが、このまま物陰に拘束され続けるのは宜しくなかった。作戦の進行に遅れが出てしまうからだ。


やりすぎちゃったかなー。


もう少しマイルドにやるべきだったか。と思ったが、それは後の祭り。流石にこの弾幕の中では動くこともままならない。


本当は頼りたくなかったが、仕方ないか。と私は通信回線を起動させた。


「先生、聞こえる?」

『ああ、厄介なことになってるな』

「でしょでしょ。だからちょっと助けてほしいかなって」


回線を繋げたのは私の先生。スナイパーだ。


『わかった。怒ってる奴らでいいんだな?』

「お願いします」


その言葉が終わらない内に、激昂していた男の頭が撃ち抜かれた事を鋭い聴覚が伝えてきた。


男は唐突な狙撃に動揺したが、それも一瞬。即座に狙撃手の方向を割り出して、狙撃されないように物陰に隠れながら、しかし隠れている私に向けて威嚇射撃を繰り返して拠点にしている廃工場の内部に撤退しようとした。


それなりに場数を踏んできたのだろう。その動きは見事なものだが、一瞬があれば行動を起こすのは容易い事だ。


動揺して攻撃が止まった一瞬、私はそのまま表情を変えずに殺傷榴弾をセット。身を乗り出して一番効率的に被害を与えられる場所に向け、迷う事なくそれを撃ち込んだ。


自分に破片などが当たらないように再び物陰に隠れた直後に榴弾が弾け、数秒もしないうちに声が途切れる。


警戒しながら身を軽く出せば、そこには人だったものが一面に広がっていた。


「ありがと先生。助かりましたー」

『よし、そのまま拠点を制圧。別チームの援護に回れ』

「了解」



通信を終えた私は、廃工場の二階から自分を狙っている存在に気付いていた。

気配を隠すように努力はしているが、あまりにも天然のサーモグラフィーカメラアイに引っかかっている。


「ざんねーん、私は特別なのだ」


持ってきていた拳銃を抜き放つと、それをそのまま二階の狙撃手に向けて発射した。


「バレバレよん」


全弾、命中。

その華奢な見た目からは想像できない高速で放たれた拳銃と弾丸は、私が思い描いた通りに狙撃手の頭に血の華を咲かせた。


弾丸が命中して、絶命した狙撃手が割れた窓の奥に消えていく。それを見届けてから、未だ銃声が止まぬ廃工場の内部に入っていった。


廃工場の内部には夥しい量の血と弾丸の空薬莢が床に散らばり、血肉に混じった脳髄が壁を彩る。


気の弱い者が見れば、それだけで嘔吐が止まらなくなりそうな凄惨な光景を前にしても、私は動揺することなく、はまるでショッピングに来たかのような軽い足取りで進んで行った。

ぐるりと、周囲を見渡し、私の第六感レーダーに反応なし。

通信回線を開いて先生に繋ぐ。


「こっちは終わった、援護行くよー」

『急げ、鮮花。こっちの状況が悪い』

「具体的には?」

『武器商人に人質を取られた。本部との通信途絶、更に依頼主からのオーダーは武器商人の生きた状態での確保をご要望だ』

「うへぇ。何それキッツ。無理だよ、人質のランクは?」

『セカンド』

「なら幾らでも補充がきくし、人質を先に撃って、身軽になった味方部隊に取り押さえるよう連絡しよう!」

『お前は……』

「あれ? 駄目?」

『わかった、それでいこう。はぁ、また恨まれるな』

「どんまい! この特別な私が部下にいるんだから良いことあるって!」

『取り敢えずお前も制圧位置についておてくれ。ビルの7階だ』

「おっけい」

『あっっ!』

「えっ? なになになになに!?」


機銃掃射の音と共に、窓ガラスが割れて降ってくる。慌てて建物の中に避難して難を逃れるが、危なかった。


「状況は?」

『機銃掃射で人質ごと武器商人を殲滅した。あのセカンドの独断か、司令部からの判断を待ってからだと遅いと判断しての事か。思いっきりは良いが……目標はエージェントの生存のみか。渋い結果だな』

「神谷司令めっちゃ怒ってるんじゃないの。私達の報酬減らされないよね」

『あれはあくまでセカンドエージェントの独断専行が原因だ。俺たちには関係ない。報酬は支払われるさ、多分な』

「さて、朝から平和のために運動もしたし、午後からでも喫茶店開けていこうー」

『お前はブレないな』

「んー? 私の命は救世主さんがくれたものだしねぇ、その命を少し殺しの仕事をするだけで後は自由に使って良いなんて言われたら、そりゃあこうなるよ」

『そうだな。その通りだ』

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