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最高の旦那様

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3

第3話 旦那様は義実家が更にお嫌い。

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2024年01月07日

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「……法的に処理するだけでなく、社会的に抹殺するだけでなく。今世から消せば良かったですかねぇ」


「やだわ、喬人さん。それでは、復讐にならないじゃないですか。私が受けた傷の分程度には苦しんでほしいと思っています。だから喬人さんの手配が最善でした」


「本当に?」


「ええ。まぁ、異世界トリップもの大好き読者としては、生贄勇者や聖女として召喚されて、想像を絶する目にあえばいいのにとか、思わないでも、ないですけどね」


両親の年齢で勇者や聖女としての召喚は今一つ様にならない気もするが、そこはそれ。

二人とも外見こそ悪くないのだから、いろいろな用途もあるだろう。

勇者や聖女が奴隷や娼婦に堕落する設定も好物だ。


「書きましょうか?」


「漫画で? 小説で?」


「当然、麻莉彩のお好みで」


「ふふふ。素敵ですね。でも結局のところ二次でしかないわけですからねぇ……どこかに異世界召喚できる人とかいないかしら?」


「いたとして。役どころはどうします?」


夫の瞳が静かに細められる。

私が持っていますから、異世界召喚スキル……とでも言いそうな表情だった。

パーフェクトすぎる夫だが、まさかさすがに持ってはいないだろうと思う心の片隅で。

本当に持っているのかもしれないと、微かな期待と恐れを抱きつつ、本来ならば現実には絶対になりえない妄想を語る。


「そう、ですね。元父が勇者奴隷で元母は聖女奴隷」


「! あの年齢でその設定ですか。なかなか鬼畜ですね」


「元兄は忌み嫌われる外見と能力の持ち主。チートの癖に全てが人に疎まれる結果になる仕様」


「チートは与えなくてもいいのでは?」


「あるにもかかわらず何もかも駄目っていうのが、素敵な絶望ポイントなのですよ」


「なるほど」


実際夫ほどではないが兄のスペックもなかなかのものだった。

現役で有名大学への合格ぐらいはできただろう。

私を性奴隷にできると思わなければ。

私を守る夫と敵対などしなければ。

器が違うのだと、夫と兄の対峙を見てしみじみ実感したものだ。


「元弟は性奴隷か公衆便所か迷います」


「性奴隷の公衆便所でいいんじゃないでしょうか。家族設定もそのまま活かしたいですね」


弟は兄より酷かった。

兄は綺麗な専属性奴隷を望んでいたが、弟は汚れた性奴隷を熱望していた。

兄が体を張って止めなかったら、私は数え切れないほど公開輪姦をされていただろう。

その点だけは、兄に感謝している。


「射精制御は当然として、排泄制御もさせたいですね」


「鬼畜ですね、喬人さん」


「貴女さえ望めば、今すぐにでも実行できますよ?」


「……全員があの有名な精神病院に収監されているというのに?」


「関係ありませんよ。資金援助もしていますし、院長他友人知人もいますしね」


日本でも有名な、犯罪者にもかかわらず、犯罪者として断罪されない特殊な罪人が患者として永久入院している。

精神病院・理《ことわり》の森。

入院に関する精査はとても厳しい。

何せ一度入ったら、如何なる理由があっても生きては出られないのだから、当然冤罪など許されるものでもない。


人権が! などと言う者もいなくなった。

字面通り、この世から消えた。

国でも重要人物認定されているあたりが設立当初から使っているから、邪魔者として抹殺されたとも。

断罪されなかった犯罪者に殺されたり、社会的地位を抹殺された人間の怨念に憑殺《ひょうさつ》されたりしたとも噂されている。


真夏のホラー特集として、潜入! 理の森の深淵! などと謳われて、一般公開される極々一部の映像は、毎年高視聴率を誇っていた。

法で裁けぬ者が、納得のいく処罰を受ける様が爽快なのだと思う。


最近では精神鑑定が黒となり、自殺した例すら出てきている。

犯罪に至るまでに同情すべき部分があれば、精査の際にきちんと盛り込まれた。

無論、同情すべき部分があったとしても罪は罪で贖わねばならないが、その場所が理の森ではないと判断される例も少なくはない。


現時点では一部を除き、大半の良心的な生活を送る人間が納得する悪質な犯罪者しか入院していないというのも、病院が存続し続ける一番の理由であるだろう。

資金源は不明だが、患者の血縁は勿論その被害者、善意の寄附、国からの援助で成り立っているのではないかと、推測されている。


夫に聞けば細かに教えてもらえるだろうが、私はあえてそれをしなかった。

世の中知らなくて良い案件もある。

闇を無理やり見せつけられてきたので、新たな闇はできるなら避けて通りたいのが信条なのだ。


夫は当たり前だと同意してくれる。

それが何より嬉しい。


「今はまだ。苦痛に慣れていないでしょうから、いいです。これから先、苦痛を贖いとして受け入れられないのなら、何時か……お願いしたいと思います」


「そうですか。何時でも迅速に手配できますから、遠慮なく言ってくださいね?」


「はい。ふふふ。ありがとうございます」


「では、食事の続きを……」


「冷めてしまいましたね。ちょっと温めてきます」


「よろしくお願いしますね。私は先ほどのやり取りのまとめをしてしまいます」


そうして関係者にデータを送信するのだろう。

次の面倒が起こらないようにと。

このままではそれこそ、理の森への入院も考えなくてはならない。


外見だけは高評価の兄弟と引き合わせたら案外、夫の姉妹は標的を変えるかもしれない……と、不穏な妄想をしながら、私は二人分のカレー皿をレンジの中へとセットした。

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