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その日の朝、高橋はただ宛もなく廊下を歩いていた。だが、高橋は平然を装いながらも、心の奥底で膨大な恐怖を覚えていた。あのときのように冷めた目でこちらを見られたらと思うと、なんとも言えない恐さに襲われた。 次第に目が眩む。自分でもわかるほどの顔色の悪さに変貌した。
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ドンッ
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目の眩みがなくなったのは、自身の身体が誰かとぶつかった衝撃だった。我に返ると、眼の前には眼鏡をかけた女子生徒が尻餅をついていた。
「ご、ごめん。大丈夫?」
そう声をかける。
するとどうだろう、女は高橋を見た瞬間小さく悲鳴を上げた。そして素早く立ち上がり、思い切り肩を掴まれながら、小さい、蚊のような声で震えながらも力強く言った。
「森沢先生を殺さないでください」
は?何を言っているんだ、この女は。妙に苛立った。
「意味がわからない」
そもそも殺す意味もない、いや、決して殺す価値がないというわけじゃなく、俺自身にあの人を殺す理由がないという意味のものだった。
「だって、見たから…」
「何を?」
「貴方が、首無しの森沢先生に指をさされてるところ…」
まさか、……いや、そんなはず?
嘘であってほしいと、同時に、同じ夢を見ている人が居て嬉しいというどこか変な気持ちが半々となっていた。でも、
「同じ夢を見るなんて、そんなことあるのか?」
女は驚いた顔をしていた。まさか、自分の他にも同じ人が出てくる夢を見ている人がいるとは思わなかったのだろう、しかも、先生を殺そうとしていると思っていた男が、だ。
「ちょっと、その話、詳しく聞かせて」
女は必死な顔でそう言っていた、だが、もうすぐで一限目が始まりそうだった。学校の規則を無視して、廊下を走った。
「私、四乃森 晴香!」
女は少し息切れながらそう言って、自身のクラスへと飛び込んでいった。