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腐じゃないです。
それでもいいなら突き進んでくだせぇ
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「俺は天才じゃないですよ」
警察署で尋問を受けている時、ふと口走ってしまった。警官がなんの事だと云うの寄りも先に端にある椅子に腰掛けていた、名探偵と名乗っている少年が云った。
「なんのこと?」
惚けた顔でいうものだから俺は何故か無性に腹が立って言いたく無い事をどんどん喋り続けてしまった。
「…俺は、世界で殺人のトリックが天才と言われました。それに乗せられ本当の目的をも忘れて罪のない人々を俺が頭をひねって考えた残酷で、非道なトリックで人を殺し続けました。」
そこまで話すと警官が口を挟んだ。
「で、本当の目的ってのはなんなんだ?」
少し俯いて俺が話し始めようとすると椅子に腰掛けていた少年が話始めた。
「本当の目的は母親を騙して金をもぎ取って母親を自殺させた奴を殺す事、其奴を殺す為に前からずっと複雑なトリックを考えていた…。其奴を殺したら警察に自主するつもりだった、そのつもりがあまりにも上手くいき調子に乗ったんだろう?これが、本当の目的だね」
全て心を見透かされていた事に驚いた。それと同時に自分の罪の深さをどうしようもなく理解して泣き出してしまった。
「……そうですよ…天才と云われました!それは、唯の見かけにすぎませんッッ!確かに複雑なトリックを考えたと思う、でもこうして捕まってしまったんですよ!?こんな醜態を晒してまで自分を天才と自称するには醜すぎるんですよ」
ぼろぼろと大粒の涙を流しながら俺は叫んだ。すると少年が云った。
「莫迦か君は?……いや、莫迦だ君は!!」
「そうやって復讐の為に努力したんだろう?そして天才並の頭脳を手に入れた。それはもう天才と行 云ってもいいんじゃないのか?まぁ、復讐がいい事とは僕は思わないけどね。君の母親も復讐をしてと願ってもいないと思うけど、君の母親は君に罪を犯してまでも自分を騙した人間を殺して欲しいと願うような人だったのか?そうじゃないだろう、本当に子供を愛しているなら元気に暮らして欲しいと普通なら思うはずだ、…まぁ、これまでも例外はあったけどね。自分の子供を人間と思わない親だっているんだ。そんな親を持ったのか?君は、子供を1人残して死んでいく親もどうかと思うけどね」
「か、母さんは…俺の母さんはそんな人じゃあなかった…」
「ならよかったじゃないか、恵まれていたんだ。君は…まぁ、過去形になってしまうけどね。罪を犯した時点で君は不幸だろう?人を殺した罪悪感も心の底ではきっと、少しはあるはずだ。それがないと云われたら君は唯のどうしようもないサイコパスだけどね」
少年が呆れたような顔で言葉をつらつら並べる。それを聴いてとんでもなく現実を突きつけられた気分になった。頑張ってこらえていた涙も目からこぼれ落ちてきた。
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時がすぎて死刑囚となった俺が死刑執行される一ヶ月前の事だ死刑囚になったのも当たり前だ。何人もの人を殺したのだから。
俺が最後に聞きたい事が、話したい相手がいると無理を云って1人の人にあわしてもらったのだ。
そして面談の日になった。其奴の姿は変わってなかった。子供らしさが残っているその姿を見て俺が言葉を発っそうとした時にまた其奴に先を越された。
「久しぶりだね」
机に突っ伏していた其奴が起き上がりそう云った。
「相変わらず喋り始めるのが早いんだな」
俺がニヤリと笑いながら云った。
「君が遅いんだよ」
「はっ、そうか」
俺が座ると透明の板越しに其奴は云った。
「最近どうだい?」
「最悪だよ」
「ははっ、可哀想だね。まぁ君が100%悪いけどね」
「わかってるさ」
そう云うと其奴は意外だったのか少し驚いたような様子をみせた。
「で、お前はどうなんだ」
「僕は相変わらず名探偵をやってるよ」
「へーぇ探偵屋か」
その言葉に其奴が反応して前のめりになった。
「探偵じゃない!名、探、偵!!」
「あぁ、そうだったな」
そう云うと其奴がぶつぶつ言いながら腕を組んだ。
するとふと、部屋の隅にいる男が目に入った、白い髪の毛の男だった。結構若く見えるが40代前半後半あたりだろうか、整った顔立ちをしている和装の男だ。無表情で名探偵の様子を見ていた。
俺がその男の事を気にしているのが名探偵にはお見通しだったのか名探偵は云った。
「あー、社長の事ね。僕の付き添いだよ。心配だって云ってたからついてきてもらったんだ。僕、電車乗れないからさ。」
「今、お前は何歳なんだ」
そう云うと其奴は手で素早く2と6を表して云った。
「26歳だよ?」
「26にもなって電車に乗れないのか…」
呆れた様子で俺が云うと名探偵は「悪い!?」と少し大きな声で云った。
「いや、意外だと思ったもんでな」
「意外って、あー、名探偵だから電車くらい乗れると思ったんでしょ?」
「流石、なんでもお見通しなんだな」
「別に乗れるんだけど、まぁ、うん…」
少し挙動不審になった其奴を見て不思議と笑みが溢れた。
「あ!笑ったね!」
「悪い悪い」
そう些細な会話を数分続けた時、警官が口を挟んだ。
「時間だ。」
「おや、そんなに時間が経ってしまったのか…」
気のせいか少し残念そうな名探偵を見て俺は少し嬉しかった。
「なら、僕はもう帰るよ。」
「あぁ、また、いや…もうまたは無いのか、そう思うと少し寂しいような気がするな」
「君が招いた結果だよ、しっかり罰を受けな」
何故かすっきりしたような気持ちだった。此奴と死ぬまでに話せて嬉しかったのだろうか。もうそんな事はわからないが。
そうして名探偵の帰り際、其奴はこんな事を云った。
「あ、そういえば、ねぇ君、僕はあの時努力して君は天才になったみたいな事を云っただろう?あれ、取り消しね。僕は生まれつきの異能力者だからね!努力なんかしてないのだから!」
「ははっお前らしいな」
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それから一ヶ月くらいだろうか、俺の死刑執行日だ。
彼奴に云われたとうりにしっかり罰を受けよう。
そんな事を考えているうちに俺の意識は遠のいて行った。
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「あ、この人、知ってますよ。前にとんでもないトリックで人をたくさん殺したんですよね。あ、この人の死刑、執行されたんですか」
そう敦が僕の隣でペラペラと口を並べていた。
「そうだね」
少し複雑な気持ちだった僕は敦に冷たい返事をかえした。
敦がずっとペラペラ喋っている。それに少し耳を傾けてながら新聞を読む。
「なにも、この人犯罪トリックを考える”天才”だったとか──」
「違う」
「へ?」
敦が惚けた声を出した。自分でも何故こんなに一生懸命にこんな事を伝えようとしたのかはわからなかった。唯、僕が云ったことだから云わないと気でも済まなかったのだろうか?そんな事もわからずに唯口走っていた。
「違うよ、彼奴は、天才なんかじゃない」