・kyrt
・死ネタ
死要素少ないけど、苦手な人はプラバ。
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rt side
『───ここを出たら何処行きたいって?』
『うーん、悩むなぁ』
「…そんなに悩んで、特にないわけ?」
『いやいや……俺はレトさんと一緒なら、何処でもいいよ』
「…そっか、」
あの会話したの、いつの話だっけ。
もう、覚えてないや。
ピ──…
なんで、キヨくんが…なんで───
───
──
─
「……〜!」
「レトルト!」「レトさん!」
うっしーとガッチさんに名前を呼ばれ、意識が現実に戻る。
「えっ、あ、何?」
「『何?』じゃねぇよ」
「大丈夫?」
ガッチさんが心配そうに顔を覗き込んでくる。
「あえと、ごめん…」
「大丈夫かって聞いてんだよ」
「え…」
何故かキレ気味なうっしーに睨まれる。
「だ…大丈夫」
「本当かぁ?」
「まぁまぁ…」
怒るうっしーとそれを落ち着くよう促すガッチさん。
二人は俺を元気づけようとしているのか、いつもよりやたら話しかけてくれた。
でも、結果こうなってしまった。申し訳ない。
───数週間前、キヨくんが死んだ。
不治の病だったらしい。
キヨくんとは出会って10年以上経っていた。
どんどん衰弱していって、最期はパタリと…。
最期まで時間はあった。心の準備をする余裕はいくらでもあった。
でも、耐え切れるはずがなかった。
二年くらい前から、ずっとキヨくんに対して恋心を抱いていたから、余計に。
でも、これはキヨくんのせいじゃない。
俺がずっと引きずってるせいで…二人に迷惑が───
「おい、またキヨのこと考えてるだろ」
「あ…」
「はぁ、ったくお前は…」
「仕方ないようっしー」
「ごめん…」
反射的に謝ってしまう。これが二人を困らせてるってのは、分かってるはずなのに。
「別に、すぐ切り替えろなんて言わねぇけど。ずっと引きずってたら、後々大変だぞ」
「それは、分かってる、けど…」
「でも、無理しないでね」
ガッチさんが優しく微笑む。
心配の仕方が対照的な二人だけど、優しさは伝わってくる。嬉しくて、少し目頭が熱くなる。
「ありがとう、ちょっと落ち着いた」
「そりゃ良かった」
「…そういえば、人は死んだら星になる、って言うよね」
ふと、ガッチさんが窓の外を見ながら呟く。
俺もそれに釣られて、窓の方を見る。
「星に、なる」
「都会じゃ星、見えないな」
「…じゃあ、見に行く?」
星が見えないことに退屈そうだったうっしーと顔を見合わせる。
ガッチさんからこういう事言うなんて、珍しかったから。
珍しいけど、悪い案だとは思わなかった。
■
ガッチさんの運転する車に揺られ数時間。
俺達は、星が見えそうな近くの山に来ていた。
少し開けた場所に出て、上を見上げる。
「わぁ〜…!」
「すっげぇ…」
「ね、都会じゃこんなの見られないよね」
煌めく星たちの中に、一段と輝いて見える星があった。
「あれ、キヨくんかな」
キヨくんなら俺たちに見つけて欲しくて、めっちゃアピールしそうだな、なんて思いながら指をさす。
「アイツ根暗だから、案外あれだったり」
───と、うっしーが別のを指す。
「ふはっ、確かに」
思わず笑うと、うっしーも少し嬉しそうな顔をした。
「レトさん、今日一楽しそうな顔してる」
「え、そうかな」
「俺も思った。俺たちと話すより星見てる方が楽しいのか」
「そ、そんなことないわ!」
うっしーのおちょくりに慌てて訂正を入れる。
俺たちは暫く星を眺め続けた。こんな機会、滅多にないし。
「う〜、寒い」
「もう冬だもんね。そろそろ帰るか」
車に戻る途中、ふと立ち止まって空を見上げる。
キヨくんがいなくなってすぐの頃、キヨくんなしじゃ生きてけないなんて思ってたけど、それは違った。
別に、独りになったわけじゃない。支えてくれる人が、寄り添ってくれる人がいる。
キヨくんがいない分、やっぱり寂しいけど…。
ねぇキヨくん、そこで見守っててね。
俺、キヨくんの分まで頑張って生きるよ。
次会う時は、ちゃんと想い伝えるよ。何十年後になるかは分からないけど。
『レトさん!』
聞き覚えのある声がして、思わず周りを見渡す。
でも、やっぱり彼は何処にもいない。また、本当にキヨくんは居なくなってしまったんだと、実感させられる。
目頭が熱くなる。ダメだ、うっしーの言う通り、ずっと引きずってちゃ後が大変なんだ。
「あぁでも、やっぱり、寂しいなぁ…」
「おーいレトルトー!何してんだー」
遠くでうっしーが俺を呼んでいる。早く行かなきゃ。
「ごめんーすぐ行く!」
涙を乱暴に拭って歩き出そうとした時、少し思いとどまって後ろを振り返る。
「キヨくん、見ててね」
そう言った時、まるで返事をするように、冷たい風が俺の頬を掠めた。
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初めての死ネタ(かな?)、どうでしょう。
なんか…なんかうっしーのキャラ間違ってる気がする…!いつもよりチンピラ感が…!!