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全て黒視点より始まります。
自衛は各自でお願いします。
勢いは大事です。察してください。
「第2回!チキチキ、テクニックの差を見せつけてやれ!!キス対決!!!」
「いよっ!!!待ってましたぁ!!!」
「やったぁぁぁ!!!!!」
「今度は勝つ!!!!!」
「まろの優勝ありがとうございまぁぁす!!」
「いやいやいやいやまてまてまてまてまて」
「ん?」
「デジャブ。これ、こんなん前もあったやん。」
「そうだね?だから第2回…」
「なんで第2回やろうとしてんの!?」
「え?前やるって言ったじゃん。連絡もしたでしょ?」
「は?」
え、俺今日ちゃんとやりますっていう連絡しか受け取っておりませんが?
勝手に話進められてるん?
「いやだから、今日、ちゃんと、正式に、キス大会を、やりますって連絡。送ったでしょ?」
「いや修飾語!!分かるか!んな省略されまくりの文章なんか!この文の読み取りなんか国語出来るやつでも出来ひんやろ!!」
「まあまあ、どうどう、落ち着いて。ほら深呼吸。ヒッヒッフー」
お前のせいなのだが??しかもそれ妊婦にやるやつ。
ムカつくわァ
「さて、改めて、」
「改めんな改めんな。そういうのいいから。会議じゃないなら俺帰るで。」
「え?」
「え?」
「帰られるとでも?」
「帰らしてくれや」
「え?」
「え?」
コントのようなやり取り。
流れる沈黙。
「今夜はキミを、帰さないぞ☆」
バチコーン と、星が飛んできそうな勢いでウインクされた。
今夜じゃねぇし。今真っ昼間やし。
知ってたよ分かってたとも。
会議の雰囲気じゃないなってことも、今日もなんかやられるんやろうなってことも。
チラ、と扉に目をやるも既にまろが塞いでいる。
前回もだが用意周到かよ。
「あのさぁ、なんで俺なん?俺別に女の子みたいな可愛さあらへんで?こんな筋肉攻めても面白くあらへんやろ。」
「は?何言ってんの?アニキ自分のこと見直してみ?最年長、童顔、チビ、筋肉、ロングヘア…こんだけいろいろ盛りまくった人間いる!?世の腐女子はなぁ!いろんな属性持ったやつが受けになると喜ぶんだよ!特にギャップの塊は最高の餌だ!!」
どんな世やねん。滅びてまえそんな世の中。
人を餌扱いするリーダー。こんなグループ、どこにあるというのでしょうか。ここにあったわ絶望。
「さて、というわけで諦めて俺たちとチューしよ?」
「なんでやねん。お前らホンマに意味わからんねん。」
この無意味なやり取りも、さっさと終わらせたいところだが…
ま、無理だろう。なんせ茶番が大好きなヤツばっかだし。
「で、今度はなんや、キス?」
「お?話が早いねぇ慣れた?」
お陰様でな。全然嬉しくないけど。
「今日は〜みんなとチューしよ?」
「いやや」
「なんで!!」
「いや、さすがにそれはちょっと…抵抗感があるというかなんというか…」
「でも俺たち家族なんだよね?」
「いや家族でもキスはそんなやらへんやろ」
「雄っぱいは揉んでも良かったのに?」
「あれは断じて許可出しとらへんし、まだ根に持っとるからな」
「ねぇ〜ダメ〜?」
悪いがないこの子犬モードには絶対絆されないと前回決意したんでな。
今回の俺はひと味違う…
と、服の裾を後ろから引っ張られる感覚がして振り向く。
「初兎?」
「なぁ悠くん、どうしてもダメなん?」
「え…」
「俺ら、悠くんのこと好きやねん。やからさ、ちょっとだけお願い」
「ぅ…」
「やっぱダメ…やろか」
「ちょっっ……と、だけなら…」
初兎のまともなお願いなんて、そうそう聞けないし。
まあ、少しだけなら、
そう思って渋々了承したら
「おっけ言質とったりました〜!それじゃ、遠慮なく」
「よくやったはつうさぎ!!」
「しょにだのくせにやるやん」
「だあぁ!?!?」
やられた。
完全に策に嵌ってしまった。
押しに弱くて、可愛いやつの頼みならと、少しだけ心を弛めた矢先にこれだ。
本当に自分の見積もりの甘さに殴りたくなる。
はあぁぁ、と深い深い、本当に今季一番くらいに深いため息をこれみよがしにして、子供のように無邪気な目をしたメンバーを見る。
あぁ、はい、俺にはこれ以上選択肢は無いんですね理解理解。
「で、誰からやるん」
「……誰からやって欲しい?」
一瞬キョトンとした顔をしたが、すぐに嬉しそうな顔に戻ったないこが口角を歪に上げながら聞いてくる。
ふむ、誰から…か。
多分りうらはそんなに経験ないやろうし、一番下手なのではないか。
ほとけも、りうらと変わらないレベル。
初兎は前回の事も踏まえて、それなりにテクニックがあるのではないか。ただしSっ気にステータス全振りした感じで。
ないこが1番未知数だ。前回は何故かめちゃくちゃ上手かったのだが、果たしてキススキルはどんなものか。
まろは経験済み。何となく前回のもまだ引き摺ってるから、一番上手いのではないだろうか。
と、1人でメンバーそれぞれの分析を行う。
なんで俺はメンバーのキススキル測っとんねん。こんなグループどこにあんねん。ここかよアタマおかしいだろ(2回目)。
「決まった?」
「1番目、ほとけ。次に初兎、まろ、ないこ、ラストりうら。」
「え、え、なんでりうら最後なの!?」
「どういう基準…」
「あんま考えとらんのか…?」
ふん、こいつらは俺の事を浅慮だと思い込んでいるようだが、違う。
いつも俺をバカだバカだとバカにしてくるヤツらめ、俺だってバカじゃないと思い知らせてやろう(バカがゲシュタルト崩壊してきたな)。
俺の考えはこうだ。
最初にほとけを配置することで軽く肩慣らし。
次いで少し怖い初兎を早めに終わらせ、キスレベル未知数のないこを真ん中に。まろは初兎とはまた別の意味で怖いがこの順番が妥当だろう。そして最後にりうらにすることで精神的安寧を得ようという考えだ。
「ちゃんと考えとるわ。ま、それ言うたらお前ら面倒臭くなりそうやから言わへんけどな。」
「ふーん…」
あれ、思ったより素直に聞いたな。と思ったのも束の間、
「じゃあ!早速僕から行かせてもらうね!」
と元気溌剌といった声でほとけが前に躍り出る。
「ん、じゃ、来いよ。」
手を広げてほとけを受け入れる。
ま、俺がリードしてやるか、なんて考えていた俺は、やはり前回の反省が活かしきれてないようだ。
前回同様、優美な所作で腕を回してきたほとけは、そのままがっつくように唇を吸いた。
平安だったか、そこら辺の時代の人達はキスのことを接吻とか口吸いなんて言っていたみたいだが、何となくそう言う理由がわかった気がする。
「っ、ぁ、ふ」
「は、む、んぅ」
思わず視界が狭まる。
くちゅ、という音をほとけが出していることに違和感を感じつつもそんな余裕を取り去る勢いでキスを続けるほとけ。
なんで、こいつこんなに上手い…
下手なんじゃ、なかったんかよ…
初っ端からこんなにもキツいのくらったらたまったもんじゃない。
このまま、ベッドまで連れていかれそうな雰囲気が出てき始めたところで、ないこストップが入った。
「はい!おしまい!ほとけっち離れて!!」
「えー!!これからからがいい所なのにー!!!」
「ほとけっち、なんかもうヤる気満々だったんだけど…」
みんながワイワイじゃれあっている間、俺はただただ呆然とする他なかった。
だって…だってあんな上手いなんて思わんかったし…
キスなんて、する機会そう滅多にないだろうに…
口の中にはソーダのような甘さが残っていて、何とも言えない、なんなのかも分からないやるせなさを抱える。
これは先が思いやられる…が、中断なんてこいつらが許してくれるはずもなくて、
「じゃ、悠くん、楽しもな?」
Sっ気たっぷりの笑顔で近づく初兎に顔が引き攣る。
初兎のSは、ドSのS。
おかしいなぁ…昔はあんな可愛かったんに…
いや、結構前からこいつは腹黒かったな…
という現実逃避は右手を握られた瞬間、中断させられた。
うわ、こいつさらっと恋人繋ぎしてきよった。恥ずかしくないんか。
男同士やしそんなことも無いんかな。
でもこういうのは女の子にやれよな…
「悠くん?何考えてんの。今は俺だけに集中しろよ。」
「っあぁ…すまん。」
「……」
あれ、初兎なんか怒っとる?
と思った瞬間、
「んっ…ぁ、」
初兎の舌が俺の舌を絡め取り逃がしてくれない。
右手は繋いでいるため自由に動かせないし、そもそももう片方の手で背中までホールドされている。
息が吸えない。
苦しい。
舌が触れる。
気持ちいい。
「ん、ぁん…ふ、」
やば、押し倒される…
「はい、初兎ちゃん終了〜」
「ぷはっ。なんやねん、えらい短いな」
「はっ!はぁ、はぁ」
やっと解放された口内は、初兎に散々舌で弄ばれたからか、感じたくもない快感が残る。
もっと欲しかった、なんて、そんなはずないだろ。
思わず口元を隠した俺の手は、まろの手によって優しく阻まれた。
「な、アニキ。今度は俺の相手もしてや。」
待てって。なあ、俺にタイムは与えてくれんのか。
迫り来るまろに碌な逃走も出来ぬまま、顎に手を添えられる。
そのまま軽く上にあげられて至近距離で下から見上げる形になった。
あ、これ俺知ってる。顎クイってやつだ…。
そのまま唇を合わせられて、思わず目を瞑ってしまう。
最初は軽く、バードキスを落とされる。
そういうものとは分かっていながらも、何度も唇が触れ、また離され、そしてわざとらしくまろが立てる音も相まってこちらが恥ずかしくなる。
「んふ、そんな目で見ても可愛いだけやで?」
睨んでも軽く躱されたと思うと、そのまま思いっきり吸いつかれた。
「んっ、ふぅ、」
初兎とはまた違った舌の絡め方。
どこまでも追いかけてくるくせに、こちらが求めようとすると離れていく。
さてはこいつ、焦らしプレイとか上手いな?
どこか冷静な頭とは別に身体はそろそろ限界を迎える。
もう全身力が上手く入らない。
キスだけでこんなふうになってしまう自分に愕然としながら、感じ取ってしまう快感に従順になりかけたところで、
「ストップーーー!!!!」
「まろ離れろてめぇ!!!」
「さっさと次行こ!!」
止めが入った。
たった数十秒、それがとてつもなく長く感じられて、そんな自分に思わず舌打ちをしたくなる。
やはりまろはキスが上手い。なんなんだアイツ。
高身長高学歴高収入を兼ね備えた上でさらにイケメンバフとキステクニック天上バフ施されているなら、もう人間としての領域を凌駕していると言っても過言ではないだろ。
うん、あいつは人間じゃないな。
まろは人間ではないということを自分の中にあるまろのプロフィールに付け加え、ないこに向き合う。
ないこは本当に実力が分からない。
前回は悔しくも1番気持ちいいと思っもてしまったわけだし、それ相応の覚悟がいる。
少しだけ身構えてしまった俺にないこはクスリと笑って寄ってくる。
「そんなに警戒しないでよ。大丈夫、怖くないよ。」
「その発言自体が俺を警戒させてるってこと、その真っピンクな頭に刷り込んどけや。」
臨戦態勢へと移行しかけた俺に、ないこは逃がすまいと大胆に手を広げて俺を包み込んだ。
「っ、」
「あー、逃げないの。なんで俺の時はそんなに抵抗しようとするの。」
「お前が怖いからやろ!」
「もぉ〜全く、減らず口は、この口かな?」
「んっ、ぅ、ふぅ」
「クチュ、ん…んむっ、んっ、」
がしりと顔を掴んでキスをしてきたないこは、意外にも静かに事を行っている。
リップ音だけが耳に届く。
と、突然口を離して、首元に顔を埋めたかと思うと、
「ッ__!」
軽く噛まれた。
何やってんだよこいつ…
キスだけとちゃうんか。キスマつけるのは聞いてへんで。
「んふふ、アニキ顔真っ赤♡」
「ぅぅうるさい!」
「あ、あと、」
首元のキスマは、愛情表現と、独占欲
そっと囁かれた言葉に、さらに顔が熱を帯びるのが分かった。
ほんまに、ずるいわあいつ。
そのまま離れていったないこはほか4人に罵倒されていたが、何処吹く風だ。
さて、残すところあと一人、我らが最年少末っ子りうらだ。
まぁ、どうせ今までの傾向からしてこいつも上手いんやろうけど。
「……?りうら?」
さあ来いとラストへの気持ちを固めてりうらの方を見ると、少し悔しそうに、俯いていた。
「りうら、お前もしかして、キス、下手…?」
「ぅ、下手、というかしたことが無い…」
「……まじ?」
「まじ。」
え、あんだけ胸揉むのは上手かったのに?
キスは初めて?
つまりこれは、
「ファーストキス、俺なんかでいいん?」
「上手に、出来ないかもだけど…」
まさかのここで俺の予想が当たってしまうとは。
しゃーない。ここはお兄さんがリードしてやろう。
「じゃ、おいで。りうら。」
「うん。」
「まず軽く唇に触れるくらいのキス。」
チュッ、と可愛らしい音が立つ。
「これはバードキス。さっきまろがやっとった。そして、吸い付くように思い切り舌を入れて絡めるキス」
今度は自分からりうらの口の中へ舌を入れ、躊躇いがちなりうらの舌へと絡ませる。
数秒したらりうらから俺の舌を絡めに来て、ぎこちなさは残るものの慣れたように吸い付き始めた。
「んっ、ぁ、っふ、ぅ」
「…ぷはっ、」
「ん、上手に出来ました。今のがディープキスな。」
「何か、変な感じ。」
「まあ最初は誰でもそんなもんやと思うで。」
「…うん。次やる時は、もっと上手になってアニキのこと腰抜けにさせてあげる。」
「いらんわ。」
雄の目をしたりうらに少し尻込みしながら離れる。
なかなか平和的に終わったりうらとのキス講座は、お互い離れ会った瞬間に怒号が飛び交った。
「おいりうら!!てめぇなんでそんな美味しいとこ持ってくんだよ!!」
「ずるいずるいずるい!!僕もアニキに教えてもらいたかった!」
「あ、アニキの方から舌入れるなんて!!」
「悠くんお、俺にも教えて!!」
「アニキはりうらが分からなかったから教えてくれたんですぅ!キス上手なみんなに教えることなんてなんもないでしょ!!」
あぁもう、うるさいうるさい。
最年少相手に大人気なく突っかかる4人と、これでもかというほど煽るりうら。
何とか5人を相手にした俺はもうヘトヘトで。
「あ、アニキ!今回は誰が勝ち!?」
なんて聞いてくるのに答えるのだって面倒だ。
脳死状態の頭を働かせて、前回の二の舞は踏むまいと全員下手ということだけは避けなければと判断した。
前回それで酷い目にあったからな。
まあ、各々言いたいことはあるが、やはりキスが上手かったのは、
「……まろ」
「「「「………え?」」」」
「ぃよっし!!!まろ優勝ありがとうございまぁぁぁす!!!!」
「え、え!なんで!僕の気持ち良さそうにしてたじゃん!」
「悠くんMなんやから!俺のやり方のが良かったやん!!」
「あ、あんなに顔真っ赤にしといて何で!!」
「りうら…次はもっと頑張るから。」
1人は大はしゃぎで周りを煽り散らかすわ、1人は反省と共に次回への熱量を更に上げるわ、他3人は煽ったまろに殴らん勢いで詰め寄るわ、カオス状態と化してしまった。
これ、誰言ってもアウトやし、何も言わんくてもアウトやん。
「やっぱまろにきしか勝たんやろ!?」
「っ〜〜〜次はみんな、打ち合わせ通りアレやるから!」
「僕予定大丈夫だった!」
「りうらも〜」
「俺も。」
「俺は言ってたとおり平日はやっぱ厳しいわ。土日にしといて。」
まろがドヤってないこが悔しがったと思ったら、徐に話が転換された。
ん?予定?
何の話?
打ち合せってなんの?
俺、何も聞いとらんけど。
「な、なあ?お前ら何の話して…」
「ん?あぁ、次は俺らとデートしようね?アニキ」
「へ」
「また予定表配るから確認しといて。なるべくその時は俺も仕事振らないようにしとくね。」
「は、」
「俺たちが最っ高のデートプラン立ててアニキのことキュンキュンさせちゃうから、またジャッジよろしくね♡」
「な、」
なんっっっっで俺の意見全無視して話進めてんの!?!?!?!?
俺の知らないところで着々と計画が建てられていることと、まだまだ終わらなさそうなこいつらの争いに俺は思わず頭を抱えた。