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マッドハッター〜 ユナティカ 高地にて 〜


<ユナティカ>で、買い出し等を済ませて、町を出た私達。巨大化したアルマロスに乗り、次の目的地へと向かう。道中、別れを告げるように海猫がずっとついてきていたが、完全に町から離れると海猫は港へと戻って行ってしまった。

窓を閉めて、クロウが淹れてくれたお茶を啜る。紅茶の程よい酸味と紅茶独特の香りが口いっぱいに広がる。クロウはクロッカーの身の周りの世話をしていたこともあってか、家事や掃除などを何でもこなしてくれる。彼が世話好きというところもあるのかもしれないが、正直助かっている。


「スパイキー・スパイク! 地図を持ってきてくれ。」


「はーい!」


二人は、地図とコンパス、定規を持ってテーブルに上がってきた。地図などを広げて現在地を確認する。


「今は、<ユナティカ>の高地にいる。ここから北東へ向かうぞ。」


私は北東の方角を指差しながら言うと、スパイキー達とクロウはその指の方向をじっと見つめる。


「「北東??」」


「そう、ここから北東へ向かう。そして、そこにあるのは砂漠の町<ロパライア>!!」


「「<ロパライア>!!!」」


砂漠の町<ロパライア>。他の地方と比べて年中暑く、砂漠とオアシスの広がる中にぽつんとある。人々は暑さに耐えて生活していることから、我慢強いことでちょっと有名だ。


「しかし、何故<ロパライア>に?」


クロウが訪ねてきた。それもそうだろう。クロウには本来の目的地である<ペレンラ山脈>という極寒の山を目指すことはすでに告げていた。なのに、極寒とは真逆の所を目指すのか。それにはちゃんとした理由があった。


「お前たち、<加護>を知らないのか?」


「<加護>?」


スパイキーとスパイクが首を傾げる一方、クロウは<加護>について知識があるような顔をしていた。


「<加護>というのは、簡単にいうと神仏が力を与えて守り助けることだ。我々のような小物にはそんな力はないが、一部の存在…種族にのみ、主に力を与えてお守りすることができる。」


「百点満点の答えだよ、クロウ。そう、今回<ロパライア>に行くのはその<加護>の力を持っている魔物がいる。今の私達にはそいつの<加護>が必要だ。」


クロウにパチパチと拍手をして、私はにやりと笑って見せる。そう、今のまま<ペレンラ山脈>に登るなんて自殺行為そのものだ。


「その、<加護>? はどうして必要なの?」


「良くぞ聞いてくれた、スパイキー・スパイク!」


私はカップを置くと、地図に載っている<ペレンラ山脈>を指さした。


「<ペレンラ山脈>。お前たちもだいたい知っているかもしれないが、あそこは極寒の山だ。そして、色んな登山家があの山に登ったらしいが、誰一人帰って来たものはいない。何故か?」


私は、<ペレンラ山脈>を指していた指をクロウとスパイキー達にゆっくり向ける。クロウは顎に手を当てて、しばらく考えた後、ある推測を述べた。


「極寒、という自然の脅威とは別に、別の脅威がある? ということでしょうか?」


「…Excellent。しかし、自然の脅威とは別の脅威の正体は何か。ここで私はある仮説を立てた訳だ。」


私は席を立つと、本棚から一冊の古い本を取り出した。この本には世界中の魔物が載っている。最高の一冊だ。

本を開き、ある魔物のページを開いてテーブルに置く。


「「<ウェンディゴ>?」」


<ウェンディゴ>。ここエスタエイフ地方にある、<ペレンラ山脈>のように寒いところに生息している精霊、という魔物だ。元はごく限定された部族のみに見られる文化依存症候群という精神疾患の一つとして扱われていたのだが、近年、このウェンディゴの姿が確認されたことがわかった。


「この、<ウェンディゴ>があの山にいるというのですか?」


「確証はない。が、日に日にあの山に降り注ぐ雪の影響が<ユナティカ>の高地付近まできている。ということはだ。<ウェンディゴ>に繁殖機能はないし、これによれば奴らは集団で狩りをする習性もない。なのにだ。数が増えて、雪の降る量が増えてるのは何か原因があるはず。」


私は、<ペレンラ山脈>に降り注ぐ雪の影響がここまで大きくなっている原因は、<ウェンディゴ>にあると思っているのだ。温帯の<ユナティカ>の方まで雪の影響が出るほどの何かがあそこにはある。


「それに、あの雪はただの雪じゃない。わずかだが、魔力も感じる。雪山は何があるかわからない。そこで、必要になってくるのが今回向かう<ロパライア>にある!」


「<ロパライア>にある、<加護>? まさか」


「そう! <サラマンダーの加護>だ!! さぁ、向かおうではないか。砂漠の町<ロパライア>へ! サラマンダーをスカウトして、我が団に加えるのだぁ!」


「わーい!新しい仲間だ! 仲間だ! スカウトだ!」


私が<ロパライア>のある方向をぴしっと指を差して不敵に笑って見せる。その横でスパイキーとスパイクが兎のようにぴょんぴょん跳ね回る。一方で、クロウは不安しかないと言った顔でため息を付いていた。


アルマロスが雄叫びをあげると、方向転換をゆっくりして<ロパライア>へと一歩、また一歩と歩み始める。

さぁ、新たな仲間探しの旅の始まりだ。


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