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情報屋ラメルさんと別れた私は、ベルを連れてターラン商会本店へ向かいます。相変わらずドピンクです。目が痛いです。
「あら、シャーリィ。久しぶりね」
「マーサさん、お久しぶりです」
幸いマーサさんが居たので、早速本題に入ります。私が欲しいのは、三年前にシスターがどこからか手に入れた連発式の銃。主流である単発式より遥かに高火力なのは火を見るより明らかです。
「連発式の銃?機関銃を探してるの?」
「いえ、そんな大型の物ではなく持ち歩けるものですね」
なにせ機関銃は大人数人分の重量があり何より大型で取り扱いに困ります。
「持ち運べる連発式?そんなの正規軍も持ってないわよ」
「なんと」
どうやらシスターの銃はかなり特殊みたいですね。帝国軍でも歩兵の携帯火器は単発式の小銃だとか。
「何でそんな物を欲しがるのか分からないけど……うちは取り扱ってないわ。その代わり、心当たりがある」
「教えてくれるんですか?」
「貴女には儲けさせて貰ってるからね、情報料はサービスしてあげる。メインストリート六番街の路地裏に鉄の穴って店があるの。土臭いドワーフが経営してる店よ。珍しい銃を取り扱ってるらしいわ。ただし、ドワーフは例外なく面倒臭いの。つまり、客を選ぶわ」
「私が選ばれる保証はないと」
「まあ、そう言うことよ。それでも行く?」
「もちろんです、情報ありがとうございます。では、次の納品日に」
「次回も期待しているわよ。最近は注文も増えているの。このままいけば皇室から注文が来るかもね」
「お金は幾らあっても困りません。販路はお任せします。私達は作ってお金を貰う」
「私は売って儲ける。シンプルなのが一番良いわ」
「これからもより良い関係を維持したいものです」
ですが、農園だけでは限界があります。何れは新しい事業に手を出さなければなりません。出来ればターラン商会とは揉めない形で、何か出来ないか。考えなければいけませんね。
考え事をしていたら、私は六番街の路地裏へと辿り着いていました。
「お嬢、ここみたいだな。鉄の穴って書いてあるが」
古びた小さなお店がそこにあります。華やかさはありませんが、この堅実な感じは好感がもてます。
「如何にも隠れた名店って感じだな。けど、こんな店の店主は頑固なもんだ。大丈夫か?お嬢」
「折角マーサさんに教えて貰ったんです。ダメ元で行くのみです。当たって砕けましょう」
店内に入ると所狭しと乱雑に置かれた機械類が目につきます。それに、油の匂いもすごい。
「ここは武器を扱ってる店だ。場所を間違ってるぞ、お嬢ちゃん」
奥には、小柄な私と同じくらいのおじさまがいらっしゃいます。ああ、確かドワーフとかマーサさんが言ってましたね。
「間違ってはいませんよ、店主さん。私は珍しい銃を探していまして、ターラン商会のマーサさんから聞いて訪ねた次第です」
「森臭いエルフの紹介だぁ?明日は嵐が来るな。何が入り用だ?間抜けなエルフが扱う奴より質は良いぞ」
あれ、お互いに何か刺があるような…。
「ドワーフとエルフは種族的に仲が悪いのさ」
考えているとベルが教えてくれました。なるほど、種族問題ですか。まあ、私には関係ありませんね。
「店主さん、単刀直入にお聞きします。連発式の銃を取り扱っていますか?もちろん機関銃ではなくて、携帯できるものです」
「それ、何処で……いや。待て。そうか、お嬢ちゃんがシスターの秘蔵っ子か」
いつの間にか秘蔵っ子扱いになってました。うん、くすぐったいですね。
「シスターのお知り合いでしたか」
「あの銃をシスターに渡したのは俺だからな。それで、何が欲しい?」
「先程も言いましたが、連発式の銃を頂きたいのです。火力の向上は急務。単発式より連発式の方が火力があるのは火を見るより明らかです」
「確かに試作品として幾つか回されてるのがある。だが……その年でそこまで分かるんだ。連発式に拘る必要は無いだろ?」
「他にあるのですか?」
「種類としては、色々あるがな。兄ちゃんが扱えそうなものもある」
「俺はこいつで良いさ」
話を振られたベルは背の大剣を指しながら答えました。
「これからは銃の時代だ。近いうちに、剣は役に立たなくなる」
「ドワーフらしからぬ言葉だな?」
「俺は古臭い伝統に縛られないだけだ」
「興味深いお話ですね。では店主さん」
「ドルマンだ」
「ではドルマンさん、お勧めはありますか?出来れば私でも扱えそうなものが良いのですが」
「お嬢ちゃんにはまだ早い。悪いが今は連発式を、サブマシンガンを渡せないな」
「むう」
まあ確かに私の身体では扱うのも大変そうです。成長に期待です。
「では、将来的には売っていただけますか?」
「ちゃんと成長して生き延びていればな。何に使うんだ?」
ドルマンさんはまるで見定めるように私を見つめます。これは、答え次第では売ってくれないパターンですかね。偽る理由もないので正直に話しますか。
「護るためです」
「護るため?」
「はい、この世界は意地悪なので私の大切なものを奪おうとするんです。なら、護るための力は必要です」
「確かにそうだが、それだと際限なく力を持たないといけなくなるぞ。奪う奴も力をつけるからな」
「持てば良いのです、簡単な話じゃないですか」
「おいおい、本気か?」
「今の私が何を言っても子供のざれ言です。ドルマンさんが疑うのも無理はありません。そこは将来に期待していただけませんか?」
「ほぅ………なら期待外れにならないで欲しいもんだな。待ってな」
ドルマンさんは奥へ引っ込み、しばらくして戻ってきました。その手には、帝国正規軍が採用している拳銃が握られていました。
「こいつは先行投資って奴だ。もう少し成長したらまた来い。そのときはもう少し突っ込んだ話をしよう」
連発式銃、いやサブマシンガンは手に入りませんでしたが、先行投資を頂けました。将来ドルマンさんの期待を裏切らなければ、よい装備が手に入るかもしれません。
私はそう確信し、店を後にするのでした。