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テラーノベル(Teller Novel)
現実という地獄に

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黒歴史を埋める為に……

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2022年09月05日

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教祖さまや信者たちは僕のことを神様だと呼ぶ


僕には治癒の力がある、どんな怪我でも不治の病でも死んでさえいなければ治すことができた


だからみんな僕を神様だといい崇めた




僕の1日の予定は教会で信者たちの願いを聞き捧げ物を受け取るだけ


そして教祖さまが言った人の怪我や病を治す


それで僕の1日が終わる


教会から出ることは許されず


出ようとすれば信者たちに捕まり教会の中に戻される


僕の知る世界は教会の中とステンドグラス越しの空だけで


神様ってなんなんだろう




みんな僕の力だけを見て僕を見てくれる人はいなかった




もう、辛くて寂しくてしかたがなかった


本当の僕を見てくれる人はいなくて、みんな僕の力しか見ていなくて、でも力がなかったら誰からも、教祖さまからも必要とされないんじゃないかって思うと怖くて、そう思いたくなくて、でも思ってしまって


みんなが神様という僕は、神様じゃなくてみんなと同じ人間で




なんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんで


なんで僕だけちがう?




はじめは良かったのに、楽しかったのに怪我をしてる人を癒せるのを治せるのが嬉しかったのに今はもう……辛い




みんな、みんなみんなみんな!!怪我をしても病にかかっても僕に治してもらえるって、だから大丈夫って


だから最近怪我人が増えた


最初は感謝していた人も段々捧げ物を上げればいいみたいな人が増えていった




「もう嫌だよ、お母さん……」




そう呟いた


すると近くにいた教祖さまが血相を変え怖いぐらい怒鳴った




私は、教祖なの!貴方のお母さんじゃないって言ったでしょ


それに貴方は神様なの!こんな穢れた血とは繋がっていちゃ駄目なの!!


貴方には人々の怪我を治し救いを与える役割があるの、神様なんだから




その時の血相を変えた顔が怖くて狂って見えて、僕はなにも言い返すことができなかった








それから数ヶ月


あの日のようなことはもう言わずいつも通りにしていたけど限界がきて




僕頑張ったんだよ、もう終わってもいいよね




頑張ったんだよ


教祖さまに言われた傷ついた人々を治して、作業みたいに感謝されて、信仰されて、治す人が増えても頑張ったんだよ


教会から出られなくても頑張ったよ




「だから、もういいよね」




誰もいない部屋で許しを請うようにそう呟く


いつの日かある人が忘れていった刃の長い折りたたみナイフで心臓を刺そうとしたとき部屋の扉が開いた




「なに……し…てるの?」




教祖さま、いやお母さんだった


焦った顔でこちらを見ていた、動く気配はなく僕に聞いてきた




「なにが嫌なの?欲しい物があれば信者たちに捧げ物として要求すればいいのよ?」と




「無理だよ、僕が欲しい物は手に入らないもん、僕はお母さんからの愛が欲しい


ご機嫌取りの愛じゃなくて心からの愛が欲しい


愛して貰えていたら外に出られなくても信者の怪我を治すだけの生活も耐えられた


お母さんだけは人間として僕として愛してくれると思えられたから」




そう言いナイフを心臓に突き刺した




血がドクドクと流れ出て血溜まりができて胸のあたりが熱くなって、段々感覚がなくなって体が冷えだした


目を閉じる前に見た光景は焦って近づいてくるお母さんの姿だった


焦る理由が愛からならどれほど良かったか


でも、これでこの地獄が終わるんだ


そう思った






でも、目を覚ますとそこは天国でも地獄でもなくて変わらない誰もいない部屋だった


お母さんの顔はホッとしていて落ち着いていて、胸に刺したナイフは地面に落ちてて、僕の体に刺し傷はなかった


でも、地面にある血溜まりが刺したことは嘘では無いと証明していて




そして気がついた


死ねないんだと




死ぬ前に僕の力が発動して治るのだと、なぜナイフが抜けたのか分からないけど力が僕が怪我をしたら無条件で発動するのだと




お母さんも気づいたから安心しているのだろう




そして僕はこの地獄から一生抜け出せないのだと思った


あぁ、こんな力なんて無ければ

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