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「誰にも言わないで」
消え入りそうな声で言う真夜をベッドに縫い留め、首筋を指先でなぞった。浮き上がった青い血管に噛みつきたい凶暴を抑え込む。
「誰にも、言えない」
涙で濡れた双眸が、真也の言葉の真意を探っている。何を考えているか探ろうとしているんだろうが、どうせ無駄だ。
「どういうこと」
「誰にも言えないだろう。弟がここで男相手に働いているなんて、言ってどうする」
「そうだけど」
「でもただで俺も口を閉ざせない」
「え」
狼狽が、さらに増している。揺れ動いていた目が涙で濡れている。
細い首筋に噛みついてやった。強張ったからだがびくりと跳ねる。
下腹部にまわした掌を下着のなかへ忍ばせた。柔らかい陰茎をしっかりと握りしめた。
何度思い描いていたか分からない、真夜の肉体が目の前にある。
しかもここは家ではない、店なのだ。
「や。あんた、俺のこと嫌いだろうがっ」
逃げようと腕を振り上げて肩を叩かれても痛くない。普段鍛え上げているため、きっと真夜の掌に浮き上がった筋肉が当たったのだろう。微かに息を飲む声がした。
「嫌いだ」
陰茎を扱いて首筋に吸い付いた。彼は首を振って拒む。
「嫌いだよ、……兄さんに抱かれている真夜は」
柔らかい尻肉の間に滑らせた指先で蕾を押し広げた。あらかじめ清めたのか、そこは熱く濡れて湿り気をおびている。
「あ、や、っ……!」
真夜の腰が戦慄く。ここで快楽を得ることを、知っているようだ。
当然だろう。引き籠っていた時代から、ずっと慎司に抱かれていたのだから。
「やめてよッ、そんなの八つ当たりだ……っ」
泣きじゃくる真夜を見ているうち、胸がかっと熱くなっていった。
侮蔑の視線を向け、薄汚い言葉を吐く彼が、泣いて拒んでいる。
それだけでたまらなく興奮した。
「おねがい、真也にいさん、……っ」
シャツをふるえる手で掴まれた。しゃっくりを上げて涙を流す真夜の頬を手の甲で撫で上げる。
優しく耳たぶに吸い付いて、舌で転がした。
「嫌だよ、やめたくない」
残酷に囁いてズボンを引き抜いた。細い膝下に手を回し、からだを割り込ませる。
顎を掴んで舌先を潜ませる。逃げる舌を捕まえようとして、噛みつかれた。鈍い痛みに反射的に顔を離す。
真夜が獣のように唸っている。どうあってもそんなに抱かれたくないのか。
苛立ちが徐々に頭をもたげはじめた。
「立場が分かっていないようだ。ここは店だ。真夜はサービスをしなくてはならない。それがルールだろう?」
真夜の腕を掴み、持っていたハンカチでベッドの柵にしばりつけた。
ズボンのベルトを引き抜いて、真夜の丸く白い臀部へ叩きつけた。
ぴしゃ、と痛々しい音が響く。
「いっ……!」
彼のなかにいれた指が、締めあげられた。口角が自然と上がる。
「なんだ……興奮したのか……?」
何度もベルトで尻を打ち据える。真っ赤になっていく臀部とは裏腹に、真夜の陰茎は反り返り、蜜を垂らしている。
「ひ、いっ、い……ッ!」
指で肉壁を擦りあげて、柔らかいしこりを探る。
「そこ、触るなぁっ……」
上ずった声で叫ぶ真夜が、本心で拒んでいない。微笑みながら、何度も指で擦りあげすり潰す。
「……ゥ……ぁ、あっ……!」
顔を真っ赤にして喘ぐ真夜の唇に吸い付いた。軽くキスを交わしながら、濡れてふやけた指を抜く。
「こんなに濡らして、はしたない子だ」
糸を引いた指を見るなり、真夜が暴れてからだを動かす。抑え込むのはたやすい。
蕾付近に猛った陰茎を押し付けてやれば、抵抗があっけなく無くなる。
「散々弄ってやったろう。入るだろう、真夜」
「むり……っ……」
「慎司とはシたのに?」
「あれは……」
その先がつむげないのだから、まだ慎司の存在は彼にとってさほど大したものではないのだ。ただ流されて堕落的に快楽を得ているだけ。
「俺では不足か?」
蕾を割って陰茎を押し込む。ねっとりと絡みつく壁に眉を寄せた。熱くて、堪らなく心地良い。
「あ、ぁ……っ……~……」
押し返そうとする壁を拒み、腰を揺らす。真夜の陰茎が腹にくっつくほど興奮している。
からだを屈めて彼の陰茎を腹筋でつぶした。ぷちゅ、といやらしい音が出て腹の間が濡れた。
「んっ……ん……は、はぁ……」
肩で息をする真夜の鎖骨を指でなぞる。震えた足を掴んで腰に回させた。
「いつも兄さんとどんなことしているんだ?叩かれてるのか?」
顔を背けられた。
罰だとばかりに乳首を指で捻りあげた。
「……うっ!」
壁が収縮して肉襞が絡みつく。
「教えてくれよ、俺にも」
腰を使い、激しく突き動かした。安っぽいスプリングがきしみ、悲鳴を上げている。顔を隠そうとする腕を阻み、尻を抓る。赤くなった尻肉はやや、熱くなっている。
「うあぁ、こんなの、してなっ……!」
夢中になって、口走り教えられた。抓っていた指を離して代わりに優しく尻肉を撫でる。
「ご褒美をあげような」
手首を縛っていたハンカチを外してやった。もう抵抗する気力もないのか、真夜は動かないでぐったりとしている。
朱色になった手首を掴んで、己の首にしがみつかせる。そのまま膝に抱きこんで赤く濡れた唇を舌でねぶる。
「は、はぁ……っ、……」
恍惚として与えられるキスに酔いしれる真夜の髪を梳く。
「今、誰が見えている?」
ずっと気になっていたことを聞いた。頬を赤らめて焦点の合わないとろりとした目をした真夜は、真也を何度も見つめる。ゆっくり開かれた口のなかの、ひくついた舌が覗く。
「し……んや……」
「いま、誰とセックスしている?」
「しんや……」
素直に答える弟の腰を抱き寄せる。繋がった場所から熱が上昇しはじめて、あふれ出す。
腰を揺さぶれば、言うとおりに揺れ動く。
真夜のからだを掻き抱いて、胸の奥で潜めていた声を口にしていた。
「俺を好きになってくれ……真夜……」
慎司はきっと、何も知らない彼を騙している。その愛は屈折して歪みきっている。傍からみたら、いっそ意地悪もいいところだ。
真夜の人生をすべて破壊しかねない。
だが自分は違う。
彼を幸せにしてやれる。壊さないよう守ることができる。真夜が欲するなら、サディスティックにも染まろう。
彼の顎を掴み、上を向かせた。顎の下に強く吸い付いてやる。一度、そして二度も吸い付き、消えない印を刻んだ。
玄関先で終わりを告げる電話が鳴る。現実が戸を叩いてやってきたのだ。