ニールはエディにそそのかされ、一人で夜の廃病院を訪れていた。
最初に入ったのは産婦人科だった。
着いた瞬間、どこからともなく呼び出し音が鳴り、ニールの名が呼ばれる。ここに他の誰かがいるはずもない。ニールが恐怖に立ちすくんでいると、いきなり現れた青白い顔の看護師たちがニールを診察室へと引きずっていく。無理矢理分娩台に座らされ、脚を固定されてしまった。『検査を始めます』と突然現れた医師のような男が、メスを取りだした。そしてその男は自分の足に何度もメスを刺してきた。
ふらつきながらたどり着いたのは遺体安置室だった。
もう使われていないことは分かっているのに、どことなく他より温度が低く感じる。背中を震わせ、部屋を出ようと振り向いたところでニールは固まった。開けておいたはずのドアがいつの間にか閉まっている。さらに背後ではカシャン、カシャンと個別のドアが開く音が続く。パニックになり、必死にドアを開けようとする手を後ろから掴まれニールは大きな悲鳴をあげた。掴む手に温度はなく、こちらを見る瞳に生気は宿っていない。
気が付くと、ニールは屋上に倒れていた。
真っ暗な闇の中、今は何も掛かっていないたくさんの物干しざおと、小さな花壇の前に少しのベンチが並ぶ。ニールは誘われるように背の高い金網のフェンスに近づくと下を覗き込んだ。出入口にエディが見えるぼんやりとそれを眺めていると、その瞬間、ガシャンと大きな音を立て、ニールが固く掴んでいた金網が外れ下へと落ちていく。
ニールが落ちてきていることに気づいたエディは何とかニールを受け止めた。
何も怪我をすることなく帰れた。