コメント
0件
👏 最初のコメントを書いて作者に喜んでもらおう!
「――――――ッ!!」
……うん?
誰かが大きな声を出している気がする。
む……? そういえば、いつもより身体が楽なような気もする……?
まぁ、そうはいっても死にそうなくらいにはしんどいんだけど。
「――――ナ様ッ!!」
なさま? なさま……なさま……。なさまって何?
「――アイナ様ッ!!」
ああ、『アイナ様』ね。あー、私の名前だー。
でも、『様付け』するほど私は偉くないよー?
そんなことを考えながら、目を開けてみる。
開けたところで、ぼんやりとしか見えないんだけど――
……んん?
私の右手を、誰かが握ってる?
そういえばこの前も、誰かに握ってもらっていたみたいだけど……そのときよりも、大きくて固い手だなぁ。
――はっ!? もしかして私には彼氏がいたのか!?
……って、そんなわけは無いでしょー。とほほ。
「――アイナ様ッ!! 私のことは分かりますか!?」
うんー?
身体が動かなくて横を向けないんだよ――
……などと思っていると、一人の青年が視界に入ってきた。
ああ、ぼんやりとしか見えない……けど、何となく見覚えはある……。
会社の人かな……。いや、こんな人いたかなぁ……?
いや、でも何か落ち着く人だなぁ? ……何でだろう。
「――私です! ルークです! お気を確かにッ!!」
そういえばこの人、あんまり日本人っぽくないし……外人さんかな?
えっと、知り合いに外人なんていないしなぁ――
……って? うん? ルーク?
ルーク……ルーク。うん、ルーク。
…………あ、ルーク?
知ってる。超、知ってる!
あー、そうそう! 私、異世界に転生したんだった!
何だか急に、色々と思い出してきた!!
ルークの名前を皮切りに、記憶が一気に湧き上がってくる。
そうそう。私は確か、ガルーナ村の沼地で疫病に侵されて――
……あ! 私のこの死にそうな状況って、つまりは疫病か!!
それに気付いた私は、すぐに自分を鑑定してみる。
──────────────────
【状態異常】
疫病610型、疫病3011型、疫病3451型、疫病3912型
──────────────────
おぉ……。4つ同時進行だったのね、そりゃしんどいよ。
でもこれ、疫病の型が分かったところで薬は作れないんじゃ――
……と思いながら、『創造才覚<錬金術>』に意識を傾けてみる。
あれ……、何だか作れちゃいそう?
早速作ってみようと思ったけど、右手は……多分ルークが、手を握ってくれているんだよね。
「……ひ、だり……て……」
全身全霊を込めて、言葉を発する。
左手を、掛け布団から出してください!!
「あ、アイナ様っ!! 左手……左手ですか!?」
ルークの耳には届いたようだ。
少し時間を空けてから、他の誰かが私の左手を掛け布団から出してくれた。
よーし、ありがとうございます。
それぞれの疫病の症状を鑑定したあと、まずは喉を潰している疫病3011型から治すことに。
えぇっと……えーい、れんきん!
バチッ!!
作った薬は視界に入らないが、左手の上には瓶の重さを感じる。
場所は分かるので、一応鑑定もしておこう。
──────────────────
【抗菌薬<3011型>(S+級)】
疫病3011型を永続的に治癒する薬
※追加効果:即効性(大)
──────────────────
……うん、ばっちり。
そして再度、全身全霊を込めて言葉を発する。
「それ……飲ませ……て……」
「わ、分かりました! ただちに!!」
「――ごほっ!
はぁ、はぁ……あー。あー。……はぁ、ありがと……」
薬を飲むと喉の痛みは引いていき、声を出すのも随分と楽になった。
「おぉ……アイナ様っ! アイナ様っ!!」
ルークが必死に声を掛けてくれる。
うーん……、ありがとね。
「ルークも……大丈夫……だったんだね……。うん、良かった……」
ひとまず、私もルークも命を落とすことはなかった。
……というか私、レアスキルの『不老不死』を持っているんだけど……疫病には負けちゃうものなの?
そういえば『不老不死』は鑑定したことが無かったし、良い機会だから鑑定しておこうかな。
──────────────────
【不老不死】
歳を取らない不老状態になる。
絶命時、瀕死になる
──────────────────
……。
えー……?
『不死』っていっても、漫画みたいに即再生、即復活するわけじゃないの……?
このレベルの不死だといろいろ思うところがあるよ?
今回みたいな疫病だと、治さない限りは永遠に苦しむことになるんだよ? 永遠に瀕死だよ?
……でもまぁ、とりあえずそれは後に置いておこう。
まだ3つの疫病にかかっているわけだし、先にこれを治してしまわないと……ごほごほ。
◇ ◇ ◇ ◇ ◇
「はぁ~……。一通り治ったよー……」
残りの3つの疫病も、薬で治してひと段落。
状態異常には『衰弱(大)』が残っているけど、これは休息を取って何とかしよう。
「さすがはアイナ様……。あれほど苦しんでいらっしゃったのに……」
ルークが感心する。
彼に感心されるのは、随分と久し振りのような気がした。
「……私、どれくらい寝込んでた?」
「えっと……10日ほどですね」
「とお……? ふ、ふーん……。
確かにすごい長い間、うなされていた気がするよ……」
「はい、とても苦しそうにされていました……。
出来るだけのことはしていたのですが、やはり薬が無くて――」
「あ、そうそう! 薬といえば、ルークも疫病にかかっていたよね?」
「はい。でもアイナ様のおかげで、私の方は大丈夫でした」
「……え? 私のおかげ?」
ルークの答えに、戸惑う私。
「覚えていらっしゃらないんですか?」
「うん?」
私、何かやったのかな?
「沼地でアイナ様が倒れたあと、村までの道中で薬を全部作って頂いたのですが……」
「は?」
「いえ、そのときはもうアイナ様は朦朧とした状態でしたが、そんな中で私のかかっている疫病の分は全部――」
……え? もしかして、無意識で作っちゃったの?
っていうか、さっきの薬もそうだったんだけど……材料は大丈夫だったのかな?
えーっと、『創造才覚<錬金術>』……っと。
──────────────────
【『抗菌薬<3011型>』の作成に必要なアイテム】
・癒し草×1
・血清×1
・溶解液×1
・空き瓶×1
・触媒:疫病のダンジョン・コア
──────────────────
……MVPは、最後のお前か……。
『あらゆる疫病を撒き散らす』力を持つ『疫病のダンジョン・コア』だけど――
……良い方向に使えば、『あらゆる疫病を治す』力にも成り得るってことかな。
そもそもの能力とは違ってくるけど、私の支配下にある限りは役に立つ方向で使わせてもらおう。
ちなみに『触媒』っていうのは、『何回でも使える素材』という感じらしい。
私も初めて見たんだけど、これは便利そうだなぁ。