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テラーノベル(Teller Novel)
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片思いなのは分かってる。

でも少しだけ期待させてください。


私の友人七瀬 彩はそう、小説で言うヒロインのような子。

可愛くて性格も良くて勉強も運動もできる。

なんというか人生の主人公。我が道を堂々と歩くような子。

それに比べて私、東堂 唯菜は勉強も運動も普通。

可愛くもないし性格が比較的いい訳でもない。

どこにでもいるような人。

あやが主人公なら私は脇役。

あやの引き立て役だと思う。

あやはいつも明るい。初めてあった時は明るくて場を盛り上げてくれて友達になりたいと思ったし、好印象で憧れだった。

だけど今は違う、私はいつもあやに嫉妬してる。

私が欲しいものをなんでも持ってる。

目立つことの無い私と仲良くして本当は引き立て役に使ってるんじゃないのか、だなんて思ったり。

あやはそんなことする子じゃないことを私が一番わかってるのに。


あやには好きな人がいる。

それは私の好きな人。

彼の名前は柊 輝という。

私は彼を柊くんと呼んでいる。

あやがヒロインなら柊くんはヒーローだ。

少女漫画をよく見る人ならわかる。

誰にでも優しくて可愛いヒロインはなぜだかヒーローにだけ冷たい。

それと同じであやは柊くんには他の人と違う話し方をする。

好きな人に話しかけるような感じで。


「あやってさほんとに身長ちっさいよなぁ」

「うるさい!ひかるが巨人なだけでーす!」

「なんだよそれ笑」

「あははっ笑」


こんな幸せそうな会話を聞いたら誰だって気づくでしょ?

柊くんはあやが好き。あやは柊くんが好き。

あやは男女問わず人気だから色んな人と仲がいい。

だから男の子のことを呼び捨てにするなんてよくあること。

私は慣れていないから苗字で呼ぶ。


「今日は委員会決めていきます」

「それじゃあ委員長誰やりますか?」

「はい!」

「お、七瀬さん。さすがだね」

「七瀬やるなら俺やろっかなぁ」

「は?俺もやりたいんだけど」

「俺だってやりてーよー」

「はい、俺がやる」

柊くん…柊くんがやるなら私がやりたい。

今ここで名乗り出れば一緒に出来るかもしれない。

あやなら絶対そうする。でも、私は違う。

あやみたいに真っ直ぐ意見を言えない。

いつも通り余りの委員会をやればいい。

それが一番だから。

「えー、柊やんのかよ」

「だったら俺らできねーじゃん」

「じゃあ柊くんと七瀬さんでいいね」

「じゃあ次ーーーー〜」

「余ったのが図書委員会だね。」

これが最後だよね、私が手あげないとな…。

脇役はこういう時に登場するものだもの。

「はい、私やります…」

「東堂さんね〜」

「男子はどうする?」

「俺やりたくねー」

「図書委員とかめんどくね?」

「はい、なら俺やります。」

「えっと、住吉くんね、よろしくね〜」

住吉…、住吉 奏樹はいつも教室で本を読んでる少年だ。

彼は頭が良くて誰も気づいてないけど運動もできる。

眼鏡をかけてるけど私の目は誤魔化せない。

住吉くんはかなりの美形だ。


「じゃあ今日から委員会だから、よろしくね」

「はい、わかりました。」

「住吉くん、よろしくね」

「あーよろしく」

声もいい。これは完璧な逸材だ。

少女漫画の目立たない男子に恋しちゃう時に出てくるヒーローだ。

最高…。


「えっと、本の整理と貸出返却だけみたいだね。」

「住吉くんどっちやりたい?」

「俺本の整理する。」

「うん、わかったよろしくね」

誰も来ない。最近は図書館に来る人なんていないよね。

あ、柊くんだ。

ここは3階。グラウンドがよく見える。

柊くんは2年生でサッカー部のエースだ。

かっこいい。あ、あや。

あやは柊くんの元へ駆け寄りタオルとドリンクを渡す。

あんなことをできるのはヒロインだけ。

あやはサッカー部のマネジャーをしている。

柊くんと仲良くできるのは羨ましい。


「じゃあこれで終わりだし帰ろっか。」

「いや俺やる事あるから先帰っていいよ。」

そう言いながら彼は本を開く。

「鍵閉めておくから置いておいて。」

本に目が行って私とは目を合わせない。

「うん、わかった。」

チャラ

「あ、まって」

「ん?どうしたの?」

「そのストラップ…」

彼はそう言いながら私のカバンに着いているストラップを指さす。

「ん、あぁこれ?」

「僕と君の花の笠井まひろでしょ?」

『僕と君の花』というのはアニメにもなっている主人公が転生しその時あった人と世界平和のためにひとつの花を探すストーリー主人公が相棒と成長していく過程がとても好きでファンになってしまった。

「え、そうだよ!なんで知ってるの?!」

「俺、漫画とかアニメとか好きなんだよね。」

彼は見たこともない笑顔で話し始めた。

「そうなんだ!」

「小説は読んだりしない?」

「小説もたまに」

本当に少ししか読んでいなさそうな表情をしている。

「うわぁ同じ趣味の人いるの嬉しいー!」

「住吉くんはなんのアニメが好きなの?」

「住吉じゃなくてそうきでいいよ。」

いきなり名前呼びを指摘してくるなんて変な人。

「住吉って苗字嫌いだから。」

「ど、どうして?」

「…」

彼は黙ってしまって気まずそうにしている。

しまった、踏み込みすぎた…。

「俺の親さ再婚して新しい父さんが来たんだ。」

彼はボソッとそう言い語り始めた。

「でもさそいつ母さんの他に女いて俺偶然それ知っちゃって。」

「でも母さんが幸せそうだから俺言えなくて…」

「そう、だったんだ、」

気まずい。今日初めてしっかり話したのにこんなこと聞いてしまうなんて。

「ごめんね、こんなこと聞いちゃって」

「そうきくん?大丈夫?」

浮かない顔をしているから心配になる。

「ん、大丈夫だよ」

「てゆーか東堂さんって柊のこと好きでしょ?」

「え、え、え、なんで知ってるの?」

「さっきサッカー部見てたじゃん、それも七瀬さんが柊に近づいた時悲しそうな顔してたから。」

観察力すごいな、こういうところから頭いいのが伝わってくる。

「うわぁバレちゃった…」

「あとさ東堂さん俺の事そうきって呼んでるのに俺は苗字呼びなの堅苦しいからゆいなって呼んでもいいかな?」

私の名前を知っていることに驚きつつ初めて異性から名前で呼ばれたのに動揺してしまう。

「も、もちろん」

「良かった。」

「でもさ柊くんはあやのこと好きだから。」

こんなことをそうきくんに話すことでもないのに。

「そうだな。」

「私の事応援しようと思ってるの?、」

「応援する気はない」

「な、なんでよ、!」

「人の恋愛なんて興味無いし」

そうきくんはつまらなそうに言う。

「勝手に告白して振られればいいと思ってるし」

「何それ!最低!」

「でもゆいなが柊と付き合える可能性低いことなんて明らかだろ?」

図星だ。そんなの自分でも分かってる。

「そう、だけど…、」

「そうきくん…」

「どうしたの?」

「そうきくんはあやのことどう思う?」

きっと可愛いと思うって答えが出てくる。当たり前。男の子は皆そう言うから。

「七瀬さん?どうも思わないけど…。」

「嘘だぁ可愛いなとか思わない?」

あやを可愛いとも思わないなんて言わせない。

「思わない。なんなら俺ゆいなの方が可愛いと思うけど?」

そう言ってそうきくんはこっちを向いてニヤついている。確信犯だ。

「な、は?え?///」

「や、やめてよ〜」

「勘違いするじゃん」

「すればいい」

そうきくんは真剣な顔で言う。

「え、あ、うわぁ」

「自分に自信があってそういうこと言ってるの?」

「俺に自信なんかないよ笑」

そうきくんは私をからかうように言う。

「うぅ、もうこの話は終わりだよ!からかってることなんか分かってる!」

「帰ろ!」

「うん、帰ろっか。」

そう言ってそうきくんは本を閉じてカバンを背負い鍵を手に取った。

そして私の元に小走りで駆け寄ってくる。

そうきくんは私の隣を歩きまたアニメの話をし始める。

柊くんのことをずっと考えていたのに何故か、その時だけはそうきくんとの会話で頭がいっぱいになった。

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