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ふたりだけ、ずっと【一次創作BL】

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四月一日、意地悪日和

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2024年04月01日

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若干キャラ崩壊/伊織兄さんがちょっとおバカ




「─すき…兄ちゃん、好き」


ぼそぼそと愛を並べながら、伊織は俺の首元や鎖骨にキスをする。

お返し、とキスをすると照れてこれをしなくなってしまうので、伊織はそのままにして「俺も」と呟いた。


…伊織は、いつも策略家だ。いつもは軽やかに響く声も、耳元で囁きながら俺のことを誘う時は甘くて色っぽい声になる。蠱惑的な香りはひとまず置いておいて、無自覚なのを演じているのは明白だ。

耳に生暖かい吐息がかかる。かぷり、と耳を甘噛みされたと思えば、きっとスイッチが入っているだろうその声でそっと呟かれた。


「…ね、兄ちゃん……」

「はあい」

「……なんで照れてくれへんの」


不服そうに口を尖らせて、伊織は言う。単純に母性が働くのでとか本当のことを言ったら怒られそうなので、表情筋の硬さをアピールしておいた。

どうやら納得してはいるのだが、まあ三大欲求(この場合性欲)には抗えないようだ。伊織は未だ折れない様子で首元をはむはむ甘噛みする。


「くすぐったいんだけど」

「んむ…ほんとにくすぐったいだけ…?」

「……強いて言うなら、伊織かわいいから抱き潰してあげたいって思ってる」


ぱちぱちと目を瞬かせた伊織。その整った顔が真っ赤になって、照れくさそうに目を逸らして口をもごもごさせた。抱かれたくて誘ってるはずのくせに、こういうこと言うと照れちゃうのかわいいなあ…


「…兄ちゃんのすけべ…」

「真っ昼間から誘う人がよく言う…こんな服着といてさ」

「だって…兄ちゃん久しぶりの休みやもん…これは普段着やし」


いや、ほんとに「こんな服着といてさ」だよ。鎖骨あたりまで丸見えの薄くてゆるゆるのスウェットに、履いてるのか履いてないのかパッと見よく分からないショートパンツ。そこからすらりと出ている脚は、びっくりするほど細くて白い。これ普段着とか日頃からよく耐えてるな俺。とか突っ込みたくなるくらいには…直球に言う。エロい。


「…抱かれたいんだ?すけべな人に」

「ん…したい」

「……へー」


なんかすごい意地悪してやりたい。こんな照れながら「したい」って言われちゃあね。カレンダーを見る。四月一日。…今日はエイプリルフールだ。絶好の意地悪日和じゃないか。

……少しだけ、嘘をついてやろう。嘘ついて、焦らしまくって、それから本番。

伊織にそっとキスをする。かわいい声を漏らしながら袖を引っ張ってくるのがどうしようもないほどかわいい。罪。


「…抱いてくれるん…?」

「……うん」


またキスをした。ぽけ、と俺を見つめる伊織の赤くなった耳を弄っていると、めちゃくちゃかわいい表情を浮かべて身体を震わせる。そのまま首筋をなぞると、また声を漏らしながら俯いてしまった。


「…ん、っ」

「かわいい…」

「……変態」


その後、何回もキスをしていると伊織も違和感に気づいたようだ。不満そうに若干こちらを睨んで、俺の頬をびよんとつまんだ。


「……おいこら」

「何?」

「いつまでキスしとんねん」

「…へ?」

「やから…いつまでも焦らしとらんではよ抱けっての」

「……ん」


またまたキスをする。そろそろ嘘に気づくだろう、とにやりと笑ってみせると、謎が解けたと言わんばかりに目を丸くした。


「……今日、四月一日…?」

「うん」

「…例年通りでいけばエイプリルフール……!?」

「うん」

「………”抱く”嘘ついとったんやな…!!?」

「そのとおり」

「いっつまでも焦らしとんな思たら……!!!」


だんだん「!」の字が増えていくような喋り方で騒ぐ伊織。きゃいきゃい犬みたいで(かわいいけど)うるさいので、背筋をなぞるようにくすぐる。


「…ひゃあッ?!」

「ま、そういうこと」

「…やからいつになく言うこと聞いてくれへんのか」

「……さてと、面白いリアクション見れたから嘘はおしまいにしようか」

「今度こそ、やからね」

「ん」



─結局俺はあの後伊織を(めちゃくちゃに)抱いた。一言感想を言うなら…あの人といるといろいろ萎える気がしない、ということだけは言える。

この人にあの声で名前を呼ばれたり喘がれたりするだけで理性が吹っ飛びそうになるのに、ハグやキスをねだってきたり時折ぎゅうっと抱き締められたりして、もう我慢が効かなくなってしまうのだ。


「…んん……満足」

「明日仕事大丈夫かな…」

「まだ時間あるし大丈夫やろ…ぁ」


急に、伊織が肩を噛んできた。噛み跡を付けたいのだろうそれは、ぎゅうぎゅう強い力で噛んでいる。痛い。


「痛……っ」

「…ん、できた。……ふふ、兄ちゃん俺のもの」


…なんでこんなにかわいいんだこいつは。嬉しそうに笑う伊織を前にして制御など効くはずもなく、俺は伊織の首に噛み付いた。


「あ”ッ…ゔ……」

「…ん、……ごめん、もう一回」

「…ゔぁ…んん……」


首元と右の肩に噛み 跡を残して、お互いに血が滲んだ唇でキスを交わした。今日はスキンシップ多めだね、とひとしきり笑いあって、伊織はこんなことを言い出す。

「なー、知っとる?」

「ん?」

「今年、うるう年やろ?」

「うん」

「やから、エイプリルフールも一日分遅れたんやって。知らんかったやろ?」


…守りたい、このドヤ顔。マジで信じてそうな顔しててかわいい。……いや、本当に信じてるな、この顔から見るに。


「…確認だけど、エイプリルフール午後は嘘つけないんだよ」

「嘘とちゃうよ。ほんとの話」

「……うるう年でも四月一日だよ、エイプリルフール」

「…嘘つけ」


携帯でエイプリルフールの日付を調べる。……四月一日。去年と変わってない。検索結果の画面を見せると、伊織はぎょっとした顔で画面を見つめ、赤くなった顔を覆ってしまった。


「……ほんまや…」

「かわいい間違いだね」

「なかったことにして…」

「やだ」



……というわけで、エイプリルフールの日にちは間違えないように。伊織みたいに、色々な意味で恥かきますよ。

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